2020年04月06日

「働いたら損」の気持が不正受給の温床の1つに

 総務省の『生活保護に関する実態調査 結果報告書』のPDFファイルで「不正の内容別不正受給件数の推移」を見ると、件数での第1位と第2位は「稼働収入の無申告」「稼働収入の過少申告」で、いずれの年も全体の50〜65%を占めている。なお「パチンコで勝ったのに収入申告していない」は、「その他」に含まれているものと考えられるが、表にある6種類の区分のいずれにも当てはまらない「その他」は、全部合わせて10〜15%程度である。
 「制度に問題があるから不正受給は仕方がない」と言う気はない。しかし、就労意欲がある人もない人も、良心的な人もそうでない人も、ありとあらゆる個人の違いを「生活保護だから」に押し込めて制度を設計すること・運用することの非人間性が、不正受給も含めてさまざまな問題を生んでいる。そのように考えるべきではないだろうか。
 では、何らかの事情で生活保護を必要とするようになり、働ける範囲で働こうと決意した人々には、どのような就労が可能なのだろうか。
 まず、生活保護を必要とする状況に陥る人は、小学校中途からの不登校・経済的理由による進学の困難・障害・病気・高齢など、様々なハンディキャップを背負っていることが多い。このため、生活保護を一気に脱却できるほどの就労は、特に子供のいる世帯では困難なことが多い。単身者で「可能な場合がある」という感じだ。
 それでも本人が努力し、周囲の支援もあり、就労が可能になったとしよう。就労収入に対して「収入認定」があり、ひとことで言えば「生活保護よりマシな暮らしは許さない」「働いたら損」となっている。
 この上に、就労することそのものに対しても、様々なハンデが設けられている。もちろん、当初は「就労阻害」という意図で設けられたものではなかったのだろう。しかし現在の運用を『生活保護手帳別冊問答集 2016』で見てみると、「これで……就労促進?」という記述が並ぶ。
 たとえば、「問8-18 収入を得るための必要経費の判断」という項目には、外交員の手土産・商店の歳暮・保育児送迎のための交通費の3つが挙げられており、これらを必要経費と認めてよいかどうかに関する解説がある。
 外交員の手土産・商店の歳暮については、「成績をあげ、収入の増加をもたらす手段として」の必要性も考えられるが、限度や効果の測定が困難なため、必要経費として「一般的には認められない」となっている。
生命保険外交員の卓上カレンダーについては、「必要と認められるものであり、他の外交員との均衡を失しないものである」場合に限り、必要最低限度の実費を認めてよい、ということだ。ここでいう「均衡」とは、いったい何なのだろうか。
 保育児の送迎については、「必要」「真にやむを得ない事情」があれば、最小限度の実費を認めてよいということだ。「残業で遅くなったのでタクシーで」は認められない、ということである。
この他、単身赴任や出稼ぎの場合の帰省に対しては、「就労に伴う必要経費」とは認められるものの、「真に必要な最小限度の回数にとどめるべきである」とされている。子供に対して親であること、親に対して子であることを、生活保護が制約しているかのようだ。
なお、生活保護のもとで働いている場合、15万円の収入があっても2万8000円しか認められない「基礎控除」からのやりくりで、最低でも5000円程度の会費を捻出せざるを得ない。就労すればしたで、最低限度の「おつきあい」に苦労することになる。
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2020年04月05日

「就労モチベーション下がりまくり」 働きたい若者がボヤく矛盾

 生活保護の収入認定の現状、「働いても生活保護以上の生活は許さない」という仕組み、結果として「働いたら損」となっている状況は、実際に就労の意味を疑わせ、あるいは必要なのに生活保護から無理に脱却する状況をつくっている。
 シングルマザーである病気の母親のケアをしながら定時制高校に通い、アルバイトで1ヵ月あたり8万円の収入を得ている10代女性は、「就労意欲下がりまくりですよ」とボヤく。彼女が8万円稼いでも、一家が使える現金は2万1600円しか増えない。
 また、ある一家は、夫妻と高校生〜就学前の5児を合わせた一家7名が生活保護で暮らしていたが、高校生となった長女がアルバイト収入を得るようになり、収入認定され、ほとんどが我がものにならないことに激しい不満を抱いたため、一家で生活保護を辞退することとなった。
 生活保護制度は、生活保護基準という「最低限度」を保障する仕組みである。保護が必要かどうか、どれだけ必要であるかは、収入と生活保護基準の比較によって判断される(資産はないことが前提)。しかし、生活保護基準は、生活保護のもとでの生活の「最高限度」ともなってしまう。どうしてもこのような制度設計でなくてはならないのか、このことが弊害を生み出していないかどうかは、「自分がもしも生活保護で暮らすことになったら」という前提で、「我がこと」として考えるべきではないだろうか。
 一方で解消しなくてはならないのは、生活保護基準が現在あまりにも低すぎることだ。そもそも生活保護基準が低すぎるため、就労によるメリットに若干の手当をしたところで「働いたら損」となる状況は変わらない。また、連動して定められる最低賃金も低く抑えられ、「生活保護の方がマシ」という低賃金・不安定雇用労働者の悲鳴を生み出している。
 生活保護のもとでは、就労による本人のメリットがあまりにも少ない。このことは、不正受給の背景にもなっている。
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2020年04月04日

働いても最低生活しか送れない 生活保護基準は「ガラスの天井」

 生活保護が就労意欲を阻害するかのような仕組みとなっている理由の1つは、生活保護が保障するのは、あくまでも「健康で文化的な最低限度の生活」、すなわち最低生活であるからだ。生活保護のもとで就労して収入を得ることで、最低生活以上の生活が可能になることは、原則的に「まずい」とされているのである。このため、生活保護基準を超える収入は収入認定され、1万5000円を超えると、ほとんどが自分のものにならない。
 収入認定の場面で手元に残るいくばくかの金額も、働いたことに対するインセンティブというわけではない。この金額(基礎控除)は、勤労に伴う必要経費として認められているだけなのだ。
 むろん、生活保護で「1億円のタワーマンションが買えた」「新品の高級外車が買えた」となると、「何のための生活保護」ということにもなるだろう。しかし、「働いたら損」という状況を放置したまま「就労促進を」と言っている現状は、あまりにも問題がありすぎるのではないだろうか。しかも、現状の生活保護基準は、もはや「健康で文化的な最低限度の生活」を保障できているわけではない。
 とにもかくにも、現状の生活保護制度が、収入面で就労促進的になっていないことは間違いない。この状況を変えるためには、何が必要だろうか。
 まずは、「生活保護なんだから、働いても『最低限度の生活』でいてくれないと許せない」、言いかえれば「生活保護を受ける以上は、生活保護なりの生活しか許さない」、もっと端的に言えば「差別させてくれなきゃ困る」という思いを、世間が捨てること。
 さらに、「生活保護で普通の基本的な生活ができる、働いたらもっと可能性が増える」という制度が良いと考え、そのことを制度の形に表わしていくこと。これらが、難しいけれども最も確実な解決方法に見える。
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2020年04月03日

生活保護制度が抱える「働いたら損」の仕組み

 生活保護の原則は、働ける状態ならば働くこと。では、生活保護の仕組みは本当に受給者に就労を促しているだろうか。そこには大きな制度的欠落が見える。
生活保護法の第4条には「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる」とある。「生活保護は怠け者にまでお金をあげる制度」「生活保護があるから甘えて働かなくなる」という意見は根強いし、そう見られても仕方のない実態は一部・少数といえども存在する。しかし最初から、「働ける人は働く」が前提とされている上、就労に向けての助言・指導も行われる。「税金で安心して怠けていられる制度」というわけではない。
 では、生活保護で暮らしている人々が就労し始めたら、暮らし向きはどうなるのだろうか。生活保護で暮らしている人が就労収入を得た場合、そのとき手元に残る収入を比べてみよう。なお就労収入からは、予め社会保険料・所得税・労働組合費・通勤費の実費交通費が差し引かれる。
 単身者の場合、1万5999円までは「就労収入−必要経費=手元に残る収入」となるのだが、それ以上の収入を得ると「収入認定」が行われ、4000円多く稼ぐごとに400円だけ手取りが増える計算となっている。稼げば稼ぐほど、就労によって得た収入のうち自分のものにならない分(収入認定される分)は大きくなってゆき、たとえば10万円の就労収入を得た場合には7万6400円、15万円の就労収入を得た場合には12万1600円にも達する。
 一見、「それだけ稼げるなら生活保護から脱却すればいいじゃないか。簡単に脱却できそうじゃないか」ということになりそうだが、高額の医療費を必要とする家族がいるケースなど、これだけの就労収入があっても生活保護から脱却できない場合はある。
 では、家族が同居し、力を合わせて働けば、働ける人数が増えた分だけ、暮らし向きは楽になるのだろうか。「2人で働いても1人分しか収入が増えない」ということはないものの、働ける世帯員が増えて稼げば稼ぐほど、その世帯は「稼いだら損」になっていく。
 これで「就労促進」と言っても……というのが私の正直な感慨だが、読者の皆さんはどうだろうか。なお、この「手元に残る収入」は、生活保護用語では「基礎控除」と呼ばれ、就労したことに対するインセンティブではない。「就労に伴って増える費用の分くらいは穴埋めします」という趣旨だ。
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ペット販売、少し待って 犬猫は生後8週まで禁止へ

ペットショップなどでの犬や猫の販売を生後56日(8週間)まで原則禁止する改正動物愛護法が成立している。幼いほど衝動買いを誘い、飼主による遺棄につながりやすいためで、改正前から1週間延ばした。
 東京都の女性会社員(38)は2年前、子犬を飼おうとペットショップを見て回った。愛くるしさに心が癒やされ、欲しい気持にかられたが、ショーケースに1匹で過ごす姿に不安が募った。
 「本来なら犬同士で過ごし、力加減を覚える大事な時期。ちゃんと社会性は身についているのか」
 結局、インターネットで知った岡山県のブリーダーから雌の柴犬を購入した。自身はマンションで1人暮らし。不在時は友人やペットシッターに世話を頼む可能性もある。親犬と長く一緒にいたほうが成長後の問題行動が少なくなると聞き、生後12週になってから引き取りに行った。
 欧米では生後8週まで親元で育てるよう法令で制度化している国が多い。一方、犬舎の狭い日本の飼育環境では、成長に伴い子犬が母犬を傷つけるトラブルが起こりやすく、生後30日前後で母犬から離すのが一般的だ。幼いほうがかわいさから売れやすい上、飼育コストを抑えられるという販売者側の都合もある。
 だが、早い時期に親から離された犬は「かみ癖がつく」「すれ違う犬にほえ続ける」といった問題を起こす恐れが指摘されている。飼主が飼育を放棄し、最悪の場合は殺処分に至ることもあるため、規制強化を求める声が動物愛護団体を中心に強まっていた。
 ペットショップも変わりつつある。首都圏で店舗展開するペット販売大手コジマ(東京)は、子犬や子猫の販売について、8週を超えてからの引き渡しを推奨するとの見解を公表、7週ルールに一石を投じた。
 コジマによると、7週では、社会に順応できなかったり、発育が遅れていたりする犬や猫が一定数いるという。母乳由来の抗体が減り始めて免疫的に不安定な時期でもあり、8週までは店舗で世話をし、その後に様子を見ながら引き渡すのが妥当と判断したという。
川畑剛社長は「飼主の意識も年々高まっており、見た目のかわいさで衝動買いする時代ではない。できる範囲で社会化し、問題のない状態で渡すことが販売者責任と考えている」と話す。
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2020年04月02日

生活保護を利用するには収入が最低生活費以下であることが必要

生活保護とは、生活に困っている人がお金をもらえる国のセーフティーネット。生活に困ったときは、誰でも、どこに住んでいても申請が可能である。
 生活保護の利用条件は、あなたの収入が、生活保護基準で定める「最低生活費」以下であることである。住む場所によって「最低生活費」は異なり、例えば、東京23区で単身(年齢:60歳)の方の最低生活基準は約13万円(家賃込み)で、これが地方になると約9.9万円になる。まずは、あなたが住むエリアの「最低生活費」をみておこう。
 あくまでも目安の計算になるが、山吹書店様が無償提供している「生活保護費自動計算ソフト」が役に立つため、山吹書店様のホームページにいくことだ。
 山吹書店様のホームページ yamabuki−syoten.net/page-23
 「生活保護費自動計算ソフト」をダウンロードして、最低生活費を算出してみよう。
 計算の結果、保護の要否判定で「要」となった方は、生活保護を受給できる可能性が高いため、生活保護の申請を始めてみよう。
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2020年04月01日

日本は格差が激しい!

 アメリカの場合、すべての勤労者が納めた年金保険料はすべて一元的に社会保障信託基金にプールされ、保険料の支払総額・期間・年齢が同じなら、基本的に受給額も同じレベルである。むしろ納入保険料の低い低所得者の受給額は、高所得者より納入保険料比率にすれば有利となっている。
 それに対し日本は年金組合が公務員・正社員・それ以外に分かれ、しかもそれが業界や地域によって分かれているので、相互の格差が激しい。もともと日本の年金は、軍人や公務員の恩給から始まっており、国に貢献した者への褒美ではあっても、貧困対策ではなかった。戦争中に軍需産業を中心に正社員に厚生年金が広まり、1961年にそれ以外の層、たとえば農民や自営業者に国民年金が適用されたのである。国民年金では生活できないが、農民や自営業者は老齢になっても働けるし、持ち家で後継ぎ息子が面倒を見てくれる、ということだったようだ。
 また最低賃金は、70年代以降に主婦パートが増えると相対的に低下した。家計補助だから低くても問題ないというわけである。さらに85年の制度改正で、専業主婦でも年収が130万円以下であれば、夫が保険料を納入していれば妻にも厚生年金が適用されることになった。年間130万円以上稼ぐと、配偶者控除がなくなり、保険料を納めなければならない。こうして、最低賃金が低いほうがむしろ好都合な専業主婦層が、政策的に生み出されることになった。
 それに対し、生活保護は占領軍の支持で設けられたものだ。受給額は年金や最低賃金とは関係なく、憲法25条で保障された「健康で文化的な生活」を営める程度に設定された。こうして、全体の制度設計を考えずに制度をつぎはぎした結果、年金<最低賃金<生活保護という図式が成立したわけだ。
 さらに厚生年金組合でも、タクシーや繊維など不振業界では、業界縮小で組合の存続が危ぶまれ、税金の投入でようやく持たせている。こうした不振組合の資金運営が、AIJなどの破綻事件を起こした。
 こうなれば、最低賃金と国民年金を生活保護以上に上げ、専業主婦優遇制度をやめ、各種の年金を一元化するしかない。厚生年金は下がるが、一部の優良組合以外の不振組合はむしろ安定化する。それは識者みなが指摘することなのだが、その方向への「一体改革」は進んでいない。これが解決しない限り、「生活保護問題」は今後も深刻化するだろう。
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2020年03月31日

「生活保護」の受給は悪いか?──政治を考える

近年の「生活保護叩き」の先入観とは異なり、生活保護の支給率が低く、不正受給も少ないことは、多少とも知識のある人は誰でも知っている。日本の生活保護は、1980年代から窓口レベルで受給規制を厳しくしていたため、貧困者に対する受給者の比率(捕捉率)は約2割である。スウェーデンは82%、フランスは91%、ドイツは65%だ。不正受給率は金額ベースで0.38%。受給世帯は高齢者世帯が43%で最多、さらに障害・疾病者世帯が33%、母子世帯が8%である(いずれも2010年の数字)。
 とはいえ受給者は95年の約88万人から、2012年には210万人を超えた。受給世帯も「その他」、つまり稼働年齢で障害者でも母子家庭でもない世帯が急増し、2010年には前年比32%増の16%に至った。「働かない受給者が増えている」という見方も、傾向としては間違ってはいない。
 これに対し貧困対策の運動関係者は、それは景気の悪化のため失業者や貧困者が増加しているためであり、生活保護受給が悪いのではないと主張する。それも正しくはあるのだが、ここで踏まえておくべきなのは、前提としての制度設計である。
 そもそも日本では、最低賃金>年金>生活保護という、社会保障の基本が成立していない。より正確には、公務員や大企業正社員は賃金>年金>生活保護なのだが、その枠外の人間は生活保護>最低賃金>年金なのだ。公務員や正社員が加入する共済年金や厚生年金はたいてい月額20万円ほどになるが、国民年金は満額でも6万円あまりである。前者は自分で納入する以外に、勤務先が保険料を納めてくれるからだ。これで高齢になったら、生活保護に流れ込まないほうがおかしい。雑誌『G2』11号で、アメリカの社会保障専門家は、こうコメントしている。
 「日本で生活保護受給者が増えているのは怠け者が多いからではなく、社会保障制度設計が悪いからです。日本の年金制度は上(高所得者)にやさしく、下(低所得者)に厳しい仕組みになっています。これではどんどん生活保護に行ってしまう」
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2020年03月30日

生活保護はそんなに悪いのか?

 不正受給がクローズアップされがちな「生活保護」。神奈川県小田原市では担当職員が「保護なめんな」とプリントされたジャンパーを着用し問題となった。第三者委員会で検証が始まったが、支援する職員の差別意識が見え隠れする。生活保護はそんなに「悪」なのか。
 ケースワーカーをはじめとする対人援助職は、人の人生や命に関わる重要な職種であり、きわめて高い専門性が必要とされている。
 この専門性に関する国家資格の代表的なものに社会福祉士資格があるが、制度上はケースワーカーになるために必要とされていない。一応、福祉事務所の職員のうち、ケースワーカーとその指導監査を行う査察指導員については、社会福祉主事という資格を取得していることが社会福祉法に規定された条件となっている。
 しかし、社会福祉主事は、指定された30以上の科目のうち3科目の単位を修得して大学を卒業するだけで誰でも取ることのできる資格だ。異動が決まってから研修を受けて取得することもできる。ケースワーカーになるために、一般事務の広範な知識は求めても、対人援助に必要となる高い専門性は求めない仕組みが続いているのが現状だ。
 さらに、社会福祉主事が条件になっているにもかかわらず、この資格の保有率は75%程度であり、25%が無資格で社会福祉法に違反しながら支援をしている。社会福祉主事は社会福祉士と比較しても決して専門的ではない資格なのに、それすら持っていない職員がかなりの数にのぼっている。また、通常1〜3年で異動があるため、専門性は高まらず、十分に知識や技術が継承される機会もない。
 このような状態では、ケースワーカーに人権感覚や多様な福祉の知識・技術を持つことを期待することが不可能であると考えざるを得ない。
 生活保護ケースワーカーも人間であるから、差別意識や偏見を持つことがある。だからこそ、それが悪い作用として表面化しないように自己覚知し続けることが重要なのだ。そのためには、対人援助の訓練を受けた専門性の高い職員を配置し、日々の研修体制を整備するなど組織的な対応を充実させていく必要がある。
 そして、不正受給対策ばかりに取り組むのではなく、生活保護制度が必要であるにもかかわらず生活保護から排除されている人たちの問題に取り組む必要がある。生活保護制度の捕捉率は20%以下であるから、80%以上の人たちが生活保護から排除されたまま劣悪な状況での生活を強いられている。どちらがより重要な問題かは明白だろう。生活保護制度への誤解と偏見を解き、本当に必要な改革を進めていかなければならない。
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2020年03月29日

ケースワーカーによる不正と水際作戦

 不正受給と関連した生活保護に関する誤解で、生活保護は「簡単に受けられる」、だから「不正がはびこっているのだ」というものもある。もちろん生活保護は、誰でも受ける権利がある制度だ。
 しかし現実には、日本は世界的に見ても生活保護を受けることが非常に難しい国になっている。まず、世界でも類を見ないほど厳しく徹底した資産調査を日本では行っている。さらに、窓口のケースワーカーが不当に保護を受けさせないようにする「水際作戦」が横行している。
 たとえば、若い人が福祉事務所の窓口に相談しに行くと、「まずハローワークに行って、仕事がないということを証明してからでなくては生活保護を受けることができません」と追い返されるケースがある。ケースワーカーは生活保護の申請を受けた場合、法律上、拒否することはできない。だから申請させないよう、このような手段をとる。本来は、若くて働けたとしても生活保護を申請することは可能であり、資産や収入が条件を満たしていれば生活保護を受給することができる。
posted by GHQ/HOGO at 09:39| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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