2017年06月25日

貧困者・弱者をたたく「精神の貧困」

 経済的に困っている人々や、生活保護を利用している人々を攻撃する風潮が強くなっている。ネットの世界ではとくに顕著だ。
 2012年には、人気お笑いタレントの母親が生活保護を受けていたとして、一部の国会議員と週刊誌、テレビ番組が中心になって非難した(親族の扶養は保護の要件ではなく、不正受給にはあたらない)。生活保護利用者の大半が怠け者や不正受給であるかのような報道も行われた。
 昨年8月には、NHKのニュース番組に女子高校生が実名で登場して母子家庭の生活の苦しさや進学をあきらめざるを得ない実情を訴えたことに対し、ネット利用者がよってたかって個人的な情報を探り出し、「その程度は貧困ではない」などとバッシングした。
 なぜ貧困や生活保護をたたくのか。他人の心の中は正確につかめないし、本人も自覚しない様々な要素が絡んでいるのだろうが、現在の日本社会のギスギスした状況や、相模原市の障害者施設殺傷事件のような社会的弱者への攻撃とも深く関係するのではないか。
 弱い相手、反撃しにくい相手をたたくことによって、優越感を得ようとする心理がある。端的に言うと「いじめ」である。主観的には正義感あるいは被害意識を抱いているが、自分のほうが強い立場にいること、自分のほうが優れていることを確かめ、気分をよくしたいのだ。
 もちろん倫理的にも能力的にも、たたく側の人間が優れているわけではない。単に主観的な「優越感の確認」である。対象者をおとしめることによって、自分の位置が相対的に高まった気になるだけ。政治的な意図で扇動する人間は別として、わざわざ優越感を得たがるのは、ふだん自分に自信がなく、何らかの劣等感や不遇感を抱いているからではないだろうか。
 外国人への差別や憎悪をまきちらすヘイトスピーチや、不祥事を起こした著名人に対するバッシングも、共通性がある。たいていは匿名だが、放置していると実名で行動する人間も現れる。公務員バッシングの場合も、正当な批判だけでなく、いじめ心理やジェラシーが加わって過剰に行われることがある。反撃されにくいからか。一方、国会議員の政治資金の使い方(税金による政党助成金も入っている)には、なぜもっと怒らないのか。権力を持つ強い相手だからではないのか。
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2017年06月22日

国の社会保障費の中で生活保護費の大きさは?

 国の財政から見ると、どうだろうか。16年度の当初予算で、生活保護費の総額は3兆8281億円、そのうち国(厚労省)の負担分は2兆8711億円。社会保障関係の一般歳出31兆9738億円に対する比率は9.0%となる。1998年度当初予算の生活保護費の厚生省負担額が1兆1106億円、社会保障関係費に対する比率が7.5%だったのに比べ、大幅に増えてきたのは確かだ。しかし、これは、巨大な額だろうか。
 当初予算の社会保障関係費(国支出分)の内訳を、表に示します(財務省の資料をもとに、生活保護費を独立させる形で区分を変えた)。生活保護費は国が4分の3を負担するのに対し、年金・医療・介護・雇用・労災は社会保険制度が中心なので、ここに出ている国支出額は、その分野の費用全体の中では、一部である。
<2016年度当初予算の社会保障関係費(国支出分)>
年金給付費 11兆3130億円 35.4%
医療給付費(医療扶助を除く) 9兆9068億円 31.0%
生活保護費等 2兆9117億円 9.1%
介護給付費(介護扶助を除く) 2兆8623億円 9.0%
社会福祉費(障害者福祉など) 2兆5335億円 7.9%
少子化対策費 2兆0241億円 6.3%
保健衛生対策費 2865億円 0.9%
雇用労災対策費 1360億円 0.4%
計(社会保障関係費) 31兆9738億円 100.0%
*生活保護費等には中国残留邦人支援費、施設事務費、指導監査費を含む
 生活保護費の半分近くは医療扶助なので、住宅扶助、教育扶助、高校就学費を含めて保護利用者の暮らしにあてられるのは、残り半分の1兆5000億円ほど。
 貧困層が拡大する中、公的年金や社会手当の給付を削ったり、医療や介護の自己負担を増やしたりすると、最低生活ラインを割り込む世帯が多くなり、生活保護が増える。そういう社会保障制度の中の相互影響も考えないといけない。諸外国とも比べてみる必要があるかもしれない。
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2017年06月21日

消費支出は地域経済を支え、税収にもはね返る

 自前の財源を含めて、自治体が保護費の一定部分を実質負担したら、それは損なのか。
 その際、考える必要があるのは地域経済である。生活保護費は基本的にためこまれず、ほとんどが医療費、家賃を含めた消費支出に回る。一般世帯に比べ、食費の比率が高めで、大半が地元で使われる。したがって、地域経済への直接的なプラス効果が高い。地域によっては、生活保護利用者がいるおかげで成り立っている商店、飲食店、賃貸家主、医療機関もある。たとえば大阪市西成区は人口比の保護率が24%(16年6月)と極めて高く、もし生活保護の人がいなくなったら、バタバタと店がつぶれて、西成区の経済は危機的になるだろう。
 大阪市の14年度の決算ベースの保護費2916億円のうち、市が実質負担する591億円を引いた2325億円は、国のお金。市が591億円を出すことによって、国から2325億円を引っ張ってきて、計2916億円を地域に落としたという解釈もできる。これは、国から補助金が出る公共事業が地域にもたらす経済効果を強調するときに、しばしば使われる論理と同じ。
 地域経済にプラスになれば、税収にもはね返える。生活保護利用者が使ったお金は、商品やサービスを売った側の収入になるからだ。仮に保護費総額2916億円に個人市民税の所得割の税率6%を掛けると、175億円になる。実際には、法人を含めて多段階のお金のやりとりが生じる。また消費税8%のうち1.7%は地方消費税(都道府県税)で、その半分は市町村に配分される。
 経済効果や税収はねかえりの具体的な見積もりは難しいが、市が591億円を出しても、市税などの収入として戻ってくる分が、けっこうあるわけだ。以上のことは大阪市以外の自治体や、地方交付税の不交付団体にも言えること。もちろん、保護を受けていた人が就労などで経済的に自立して買い物をできるようになるなら、それにこしたことはない。
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2017年06月20日

保護を受ける人数を減らしても、財政効果はない

 地方交付税を受け取っている自治体の場合、生活保護を受ける人の数を減らしても、財政効果はほとんどないという点である。
 たとえば、何らかの方法で締めつけて生活保護の利用者を減らし、保護費を100億円削ったらどうなるか。4分の3は国の負担なので、75億円が国から来なくなる。そのうえ、4分の1負担分に見合う基準財政需要額も減るので、自前の税収など(基準財政収入額)が変わらなければ、地方交付税がまるまる減ることになる。変化があるのは、基準財政需要額の算入の過不足にかかわる部分だけなのだ。
 反対に、保護の利用者が増えたらどうか。保護費の4分の3は国が出し、4分の1に見合う基準財政需要額が増える。保護の人数の増減が基準財政需要額に反映されるのは、実際より後の年度になるという時間差の問題はあるが、基本的には、算入の過不足部分を除いて財政負担は増えないのだ。
 福祉事務所には、自治体の財政負担に影響すると思って、保護の利用を抑え込もうと躍起になっている職員もいるが、保護利用者が減ろうが増えようが、地方交付税を受け取る自治体の財政はほとんど左右されない。一方、地方交付税の不交付団体の場合は、4分の1分の影響を受ける(財政にゆとりのある自治体)。
 自治体の税収が伸びないこと、生活保護以外を含めた地方交付税全体の額がしだいに抑えられる傾向にあることなどにより、自由に使える財源が増えず、財政運営が厳しい自治体が多いのは確かだ。そういう中で保護費の金額が大きいため、矛先を向けるのかもしれない。しかし、地方交付税を受け取っている自治体に関する限り、生活保護費が財政を圧迫していると声高に叫ぶのは、財政のしくみをよく理解していないからなのだ。
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2017年06月19日

大阪市の場合の生活保護の収支

 一般的な説明だけではわかりにくいので、保護費の支出が全国で最も多い実施自治体である大阪市の場合を取りあげる。2014年度の決算で、生活保護関係の収支は、以下のようになっている。
A:歳出額 3062億円=扶助費2916億円+人件費115億円+その他事務費31億円
 B:歳入額 2221億円=国庫支出金2170億円+その他諸収入等51億円
 AからBを引くと、C:地方負担額(一般財源支出額)=841億円
 D:基準財政需要算入額 791億円=扶助費663億円+人件費124億円+その他事務費等4億円
 CからDを引くと、E:算入不足額=50億円
 実際の市の負担額に比べ、総務省の計算式による標準的な費用は50億円ほど少なく、その分が余分な持ち出しになりました。算入不足額は年度によって差があり、かつては100億〜200億円前後にのぼっていた。近年は12年度57億円、13年度67億円。市財政局は、入院を含めた医療扶助費が大阪市ではやや多めであることが、算入不足の主な原因だと分析している。
 大阪市の算入不足額は、他の自治体に比べて大きいとみられる。算入の過不足は自治体によって異なり、プラスになっている自治体もある。
 一方、他の事業分野を含めた大阪市全体の地方交付税の計算は、次の通り。
 F:基準財政需要額 6056億円
 G:基準財政収入額 4939億円
 FからGを引くと、財源不足額(地方交付税額)=1117億円(うち臨時財政特別債759億円)
 基準財政需要額に対する基準財政収入額の比率(G/F)=H:財政力指数=81.6%
 裏返すと、基準財政需要額の18.4%が地方交付税として総務省から入るわけだ。財政力指数は自治体によって大きな差がある。財源が乏しくて地方交付税をたくさんもらう自治体もあれば、基準財政需要額より基準財政収入額のほうが多くて不交付団体になる自治体もある。
 次に、大阪市が自前の収入から生活保護費(扶助費)にあてた額を試算すると、以下のようになる(本来は、基準財政需要額の実情が事業分野ごとに違うので、単純にこういう計算はできない)。
 D(基準財政需要算入額)のうち扶助費663億円×H(財政力指数81.6%)+E(算入不足額50億円)=591億円
 14年度の大阪市の予算(当初予算+5月補正予算)では、一般会計の歳出1兆6814億円のうち生活保護費が2944億円(17.5%)を占めており、ものすごく大きな印象を与えるが、国から出るお金があるので、自前の財源からの実質的な出費は591億円ほどだったわけだ。
 かつて、保護費の額と市税収入の額をそのまま比べて、大変な財政圧迫だと強調する記事が何度かあったが、財源のことを無視して比較するのはナンセンスなのである。
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2017年06月18日

4分の1相当額は、地方交付税の算定基礎になる

 保護費の4分の1は、まるまる実施自治体の持ち出しになるのか。多くの場合、そうではない。
 地方交付税という制度がある。自治体の基本的な事務・事業にあてる自前の財源が不足する場合に、総務省から交付される。いったん国が集めた税金のうち一定割合を、自治体の財政力の弱さに応じて配分し、アンバランスを調整するしくみである。自治体が受け取った地方交付税は、使い道の制限がなく、自前の税収と同じように一般財源として使える。
 地方交付税の算定にはまず、その自治体のいろいろな指標を用いて、分野ごとの標準的な費用を積み上げ、「基準財政需要額」を算出する。市町村の場合、消防費、土木費、教育費、厚生費、産業経済費、総務費などの標準的な額を、人口、世帯数、面積、児童生徒の人数、道路延長、港湾係留施設の延長、都市公園面積、農家数といった指標から計算する。
 一方で「基準財政収入額」を算出する。これは、標準的な税率で課税した地方税収入の75%に、地方譲与税(国が集めた税金のうち地方に配る分)、各種の交付金などを加えた額。
 そして、基準財政需要額(標準的に計算した必要費用)より基準財政収入額(標準的に計算した収入)が少なければ、その差額が地方交付税として交付される。16年度は総務省から15兆6983億円の普通交付税が配分された。別に3兆7880億円の臨時財政対策債の発行が認められた(自治体が地方債を発行して借金するが、その償還費用は基準財政需要額に算定されるので、後払いの地方交付税のようなもの)。
 生活保護費も、基準財政需要額の算定基礎に入っている。大まかな考え方としては、保護費の地方負担分(4分の1)を、自前の収入プラス地方交付税でまかなえるようにしているわけだ。ただし標準的な保護費の計算方法は、人口を基本にしつつ、前年度と前々年度の扶助別の被保護者数、生活扶助の延べ人数、級地、寒冷区分など各種の補正をして単位費用を掛けるので、おそろしく複雑である。その自治体の状況をある程度は反映するものの、あくまでも標準化した金額なので、実際の4分の1負担額とはズレ(算入の過不足)がある。保護世帯の人数構成や、個別の扶助の金額を加味する計算式になっていないのも、ズレの要因のようだ。
 それとは別に、ケースワーカーの人件費など福祉事務所の運営費用も、基準財政需要額の算定基礎に入っている。
 少数だが、財源が豊かで地方交付税をもらえない自治体(不交付団体)もあり、それらの自治体では、保護費の4分の1負担分は自前の収入だけでまかなう。
 16年度の場合、都道府県では東京都だけが、都と23特別区を合算する形で不交付団体だ。都は、都が集めた固定資産税、法人住民税、特別土地保有税の一定割合を、各区の財政状況に応じて調整配分している。市町村では、交付団体が1642にのぼり、不交付団体は76(総務省資料を参照)。政令市は川崎市だけで、ほかは首都圏、愛知県と、自動車工場や原子力施設の立地市町村が目立つ。
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2017年06月17日

保護費の4分の3は国が負担する

 福祉事務所を設置して生活保護の実施にあたるのは、すべての市、東京の23特別区、一部の町村(町村の福祉事務所は任意設置)である。それ以外の郡部は、都道府県が福祉事務所を置いて実施する。今後の説明の都合上、これらを実施自治体と呼ぶことにする。
 実施自治体が支出した保護費のうち、4分の3は国が後から負担する。したがって実施自治体の負担は4分の1である。生活保護施設(救護施設、更生施設など)の入所者のための事務費も同じ分担割合だ。ただし、居宅のない状態で入院中・施設入所中の人の保護費は、政令市・中核市を除いて、市町村の負担にならず、代わりに都道府県が4分の1を負担する(国の4分の3負担は同じ)。
 生活保護は、国家責任で生存権を保障する制度で、自治体の本来の仕事(自治事務)ではなく、国からの法定受託事務である。もともと国の負担割合は80%だったのが、1985〜88年度は70%に下げられ、89年度から75%(4分の3)になった経緯があり、全国市長会など地方関係団体は、全額を国庫負担にすべきだと主張している。
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2017年06月16日

生活保護費は自治体財政を圧迫しているか?

 2000年代に入って生活保護の利用者が大幅に増えたことで、財政負担が大変だ、という見方がある。財政が圧迫されていると強調している自治体もあるが、どこまで本当か。
 多くの地方自治体にとって、生活保護の実質的な財政負担は、それほど大きくない。保護費の4分の3は国が負担する。残り4分の1が自治体負担だが、自前の財源で足りない場合は総務省から出る地方交付税でおおむねカバーされる。
 そして地方交付税を受け取っている自治体の場合、生活保護の利用者が減っても増えても、財政負担には、ほとんど影響しない。生活保護費はむしろ、国からお金が来て消費に回ることによって、地域経済にプラスになっているという見方もできる。
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2017年06月15日

子供の貧困、誰が悪いのか?

 日本の子供の貧困率は先進国の中でも最悪のレベルにあると言われている。全国の平均所得の半分を下回る世帯で暮らす18歳未満の子供の割合は過去最悪で、今では6人に1人が貧困に直面している。
実際、子供の貧困はかなり深刻で、学校給食が唯一の食事という子供や保険証がないため病気や怪我で病院に行けない子供、家庭崩壊からホームレス同様の生活を送っている子供など、心が痛くなる話が現実にこの日本で起こっている。また、これが原因で高等教育どころか義務教育における教育機会さえ失っている子供たちも少なくない。子供の貧困は教育格差の原因の1つ、日本にとって大きな社会的損失ということができる。
子供の貧困にはさまざまな理由があるが、中でも問題になっているのが母子家庭や父子家庭の貧困である。日本はこの分野で、世界1位の貧困率を記録している。
特に一人親の場合は、なかなか貧困から抜け出せないのが現状だ。中には親の離婚で子供に苦労をさせてと感じる人もいるだろう。だが離婚の原因にはさまざまなものがあり、シングルマザーの7割が配偶者からDVを受けていたという調査結果もあることから、一概に親のわがままが母子家庭や父子家庭を作り出しているとは言えない。
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2017年06月14日

受給者の共通点、パチンコ、スマホゲーム

 これはかなり物議を醸しかねない論だが、生活保護受給者(ほとんどは非行少年少女の親や祖父母)の中には、確かに働「ける」状態なのに働かない人たちがいた。安っぽいステレオタイプを補強するようで慎重に発言したいが、そうした働かない受給者の多くの共通点が、パチンコ屋通いか、若い親であればスマホのゲームアプリに1日のうちの長時間を割いていることだ。
 組織売春の現場で働いていた少女の取材の中で、売春業者があまりの酷さを見かねて、親のところに「いい加減にしろ」と怒鳴り込んだという信じがたいケースがあったが、そのうちの1例の親(母親)もまた、生活保護受給者のパチンコ狂だった。この母親の言葉が、最近になってようやくわかってきた気がする。その言葉とは、「パチンコ屋に行くと、勝っても負けても安心するんだよね」。
 中学を卒業したばかりの娘が売春をしつつホストの売掛問題で大トラブルを起こし、その連絡を受けても「今パチンコ中だから後でかけなおして」と、よりによって娘に売春客を斡旋している業者相手にガチャ切りをかます母親だ。その母親の「安心する」は、働かずに昼からパチンコをしに行って、「同じ状況にある他人がいることに安心する」なのだと思い、殺意しか湧かなかったが、最近になってその安心にはもう1つの意味があるのだとようやくわかった。
 その意味を理解するのに必要なキーワードは、「脳の報酬系」だ。人間(動物)は何かの作業をして、それによって報酬を得ることで脳の報酬系と呼ばれる神経系が「快」の感覚を得るようにできている。実は生活保護受給者も「働いて評価や報酬を得たい」という欲求は持っているし、生活保護費をもらって家で寝ているだけという生活を長期間続けると、その何もしない=報酬系が刺激されない生活に、不満や苦痛を感じるようになる。この「働かないことがつらくなってくる」というのも、何度も聞き取った。彼ら彼女らは働きたがっていたのだ。
 だがここでパチンコやスマホのゲームといった、短期間に報酬系が刺激される行為をすることで、本来なら働いて得るはずの報酬が代替されてしまい、結果として働かない状態に「耐えることができてしまう」。これが、彼らの言う「安心する」の正体だが、そこに至るまでの喪失の大きさや就業の難易度を考えれば、ここに代替を求めてしまうことも自己責任では絶対に片付けられない。
 パチンコは巨大な産業だし、そもそもスマホのゲームアプリなどはほとんどが無料であるし、これほど普及しているものを規制するのもまた難しいことかもしれない。だが、少なくとも生活保護受給中の貧困者には、こうした「社会復帰以外で安易に報酬系を刺激できてしまうもの」を規制するのも致し方ないのではないか。規制しても罰則があってもやめられないのであれば、それは立派な依存症=病気であるから、あらためて医療の対象としてケアすべきだ。
 こればかりは当事者のその場のQOLには反していることだが、少なくとも生活保護受給者とパチンコ狂という「ずるい怠け者」のステレオタイプは、ここで打破できるのではないか。
posted by GHQ/HOGO at 07:01| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする