2017年08月27日

今や日本人は貧しい国民?

 ストーニー・ブルック大学の経済学准教授、ノア・スミス氏は、日本の貧困率が上昇していることに注目。同氏はブルームバーグ・ビューに寄稿し、ユニセフが発表した調査で、子供の貧困を測る主要な指標の少なくとも1つにおいて日本がアメリカを抜いてしまったとし、貧困レベルの上昇は、さまざまな日本の負の経済トレンドに当てはまり、多くの日本人が経済的に苦しんでいる真実を表すと述べる。
 貧困の理由はさまざまだが、アメリカの保守派の間では、咎められるべきは個人の行いだという考えが一般的だと同氏は言う。働かない、犯罪を犯す、未婚で子供を産む、ドラッグに手を出すなどの問題が減れば、貧困は減るという意見だ。一方リベラル派は、労組を弱め、企業福祉を止めてしまったフリーマーケット(自由市場)政策を責めているという。
 ところが、日本の場合は、このような説明が当てはまらないと同氏は言う。日本の失業率は低く、勤労意欲も高い。犯罪率も低く、1人親世帯もアメリカの25%に比べ全体の3%ほどと少ない。ドラッグ使用率も最近は増えたものの、アメリカに比べればずっと低く、米保守派の論理では説明がつかない。
 では、フリーマーケット政策が影響したのかと言えば、そうでもない。小泉政権以来、低賃金、非正規の雇用が増えたとはいえ、大きな政策変化はなく、特に政府の正規従業員保護への厳しい政策に代わりはないとスミス氏は指摘する。労組についても、法的に大きな変化はなく、労働争議もまれなことから、こちらも主因にはなり得ないとしている。
 結局、スミス氏は、日本人の経済的苦境の原因は、生産性の低さと、国際競争の影響ではないかと見ている。特に、日本は保護主義的であり、国内市場を保護してきたが、アジアのライバル、またアメリカの革新的な企業との国際競争には苦戦し、得意の電子機器や自動車などでも、利益は薄くなっていると説明する。結局これが労働者の懐に跳ね返っており、他国で見られるのと同様に、貧しい者はますます貧しくなり、金持ちの利息配当金による収益が増え続けていると述べている。
posted by GHQ/HOGO at 08:46| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月25日

経済成長は格差是正の万能薬ではない

 ピケティ氏が著書「21世紀の資本」の中で示した【r>g】(資本収益率>経済成長率)という法則に沿えば、ある国の経済成長率が低下すると、その国で資本を持つ者と持たざる者の格差は広がることになる。逆にいうなら、格差を縮小するためには経済成長が必要になるわけである。日本における低所得者の増加が長期の経済停滞によってもたらされたものならば、経済成長が日本の格差是正につながると考えるのは自然な流れかもしれない。
 しかしながら経済成長と格差の関係はそれほど単純なものではない。エマニュエル・サエズ教授と森口千晶教授の研究によると、日本で過去に実現した高成長は、第2次大戦前と戦後ではその環境要因が異なる。要約すると、1890年〜1938年の急成長は資産家と財閥系大企業を中心とした「格差社会」の中で実現し、55年〜73年の高度成長は近代的な日本型企業システムによる「平等社会」の中で実現したというのだ。これは経済成長と格差の関係が一意的に決まるものではないことを示唆している。
 おそらく経済成長は格差是正の万能薬ではないし、格差が絶対悪というわけでもない。ピケティ氏も語っているように、イノベーション(革新)や人々のやる気を引き出すうえで、ある程度の格差は必要なのかもしれない。ポイントは、格差が長期にわたって固定されないよう、社会全体で気を配ることではないか。
 その意味で、日本の格差問題について議論する際には、日本人の意識やライフスタイルの変化にも注目すべきだ。いささか厳しい見方をするならば、低所得の高齢者や母子家庭の増加は、核家族化の進行や結婚観・離婚観が多少なりとも影響していると考えられる。若年層の失業や非正規雇用が増えているのも、昨今の若者意識と無関係ではないだろう。
 専門家からはこうした貧困層の固定化を防ぐために、富裕層だけでなく中間層も含めた日本社会全体の負担増が欠かせないという声が上がっている。その場合、単なる財源負担にとどまらず、教育や地域での支え合いなどソフト面から貧困に対処する施策も求められてくるはず。経済成長が重要なのはもちろんだが、本当に成長すべきは人間社会のほうなのかもしれない。
posted by GHQ/HOGO at 07:07| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月24日

日本の格差拡大は低所得者の増加によるもの?

 米国ほど極端ではないものの、日本でも格差拡大は確実に進んでいる。野村総合研究所の調査によると、日本の金融資産5億円以上の世帯数は2000年の6万6,000世帯から13年には5万4,000世帯まで減少したが、それらの世帯が保有する金融資産総額は43兆円から73兆円へと、むしろ増加している。1世帯当たりの金融資産額は6億5,000万円から13億5,000万円へと倍増したことになる。
 一方で金融資産3,000万円未満の世帯数は3,761万世帯から4,183万世帯へと約1割増加し、1世帯当たりの金融資産額は1,338万円から1,289万円まで減少している。この調査結果を見る限り、日本では一部の超富裕層へと富の集中が進み、一般的な資産階層では反対に富が分散していることが分かる。アベノミクスによる資産効果の恩恵が、もともと多くの金融資産を持っていた人ほど大きかった半面、一般庶民にはほとんど届かなかったということになる。
 トマ・ピケティ氏の共同研究者である米カリフォルニア大学バークレー校のエマニュエル・サエズ教授と、一橋大学経済研究所の森口千晶教授が行った研究からは、また違った格差の実態が浮かび上がってきた。それによると、日本で近年最も所得シェア(国民総所得に占める割合)を伸ばしているのは上位5%に属する所得階層なのだ。これは年収で750万円程度、ちょうど大企業の正社員クラスに相当する。
 同研究では、中間層を含む下位90%の所得階層において、所得水準が90年代から10年まで一貫して下落傾向にあったことも示されている。長期デフレや国際価格競争の激化による企業業績の低迷、非正規雇用の拡大などによって日本国民の大多数の平均年収が下がり、結果として上位5%の所得シェアが拡大したということが、この研究から読み取れるのだ。
 米国では上位1%の高所得層が占める所得シェアが20%近くに達しているのに対して、日本では10%弱にすぎない。日本の格差拡大は、富裕層の増加よりも低所得者の増加によるところが大きいといわれている。実際に日本では低所得の高齢者や母子家庭が増加し、若年層の失業や非正規雇用も目立つ。所得が中央値の半分に満たない人の割合を示す「相対的貧困率」は、85年の12.0%から12年には16.1%まで上昇した。ちなみに12年の貧困基準は、2人世帯で年間可処分所得173万円となっている。
posted by GHQ/HOGO at 07:38| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月23日

葬儀費を工面できない貧困層が拡大!

 全国の政令市で2015年度に亡くなった人の約30人に1人が、引き取り手のない無縁仏として自治体に税金で弔われていたことが、毎日新聞の調査で分かった。
 全政令市で計約7400柱に上り、10年でほぼ倍増。大阪市では9人に1人が無縁だった。
 死者の引き取りを拒む家族の増加や葬儀費を工面できない貧困層の拡大が背景にあり、都市部で高齢者の無縁化が進む実態が浮き彫りになった。
posted by GHQ/HOGO at 07:01| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月22日

アトラクションだけを楽しいと思う日本人は貧しい!

 遊ぶ、旅行するときに楽しいと感じることは何だろうか。
•飲みに行くこと
•カラオケをすること
•ディズニーランドにいくこと
•ナイトクラブにいくこと
•観光スポットがあること
 ほかにもまだまだあると思うのだが、これってすべてアトラクションなのである。言葉で説明するのが難しいのだが、どれもモノに執着しているのである。そのモノがあって初めて楽しいと感じているにすぎない。
 日本人が楽しいと思えるモノが一切ないバングラデシュのどこが好きなのか、何が楽しいのか、と言われることがある。
 大型連休のときも、他の日本人は隣国に旅行に行ったり、日本に帰国したりするけれど、「バングラデシュに残る」と言うと、「何するの」「遊ぶ誰かいるの」という質問を必ずされることになる。例えばタイにいくときに、「楽しいことあるの」とは絶対聞かれない。タイにはたくさんの日本料理屋があったり、綺麗なおねえちゃんがいる夜の街があったり、観光スポットがあったり、そういう楽しいモノがあることがわかってるからなのだろうか。バングラデシュに魅力を感じるのはヒトであり、バングラデシュの人々の考え方や生き方なのである。
posted by GHQ/HOGO at 07:03| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月21日

バングラデシュは最貧国だけどインシャーアッラーの精神がない日本人のほうが貧しい!

 児童労働、感染症、ヒ素問題、ストリートチルドレン、慢性渋滞、電力不足、解決しなければいけない問題は山積み。これだけ読めば、日本は恵まれていると思うかもしれない。だが少なくとも日本が必要以上に恵まれているとは感じない。なぜそう思うのか。
 インシャーアッラーとはアラビア語で神さまの望むままにという意味で、バングラデシュだけでなくイスラム教徒の人はどの国の人も使う言葉。よく何か約束事をするときに使われる。
 「明日は大事な会議だから朝8時集合ね」
 「インシャーアッラー」(神さまが望んだらね)
 つまり約束はできないということ。この言葉にいつもやられる。待ち合わせ時間にこない、予定通り物事を進めようとしない、天候のせいにする。一般的な日本社会で生まれ育ってきた人ならば、許せないことだろう。でもあるときわかることになる。インシャーアッラーとは約束を守りたくない、気分次第ということではないということを(言い訳に使う人も多いのだが…)。
「ぼくにとって一番大切なものは家族。家族に何かあったとき、友人や仕事の約束よりも家族を優先する」
一番大切なものを優先しただけで、何で約束を破ったことになるのかわからないと言われる。
 バングラデシュの人々の心の中にはいつも家族がいる。今何してるかという緊急性のない話題。日本では仕事中はプライベートを持ち込まないことが当たり前とされ、私用電話をしていたら白い目で見られるはず。でも、家族よりも会社を大切にしたら、会社は家族を守ってくれるのか。まずそんなことはない。
 バングラデシュの人々の休暇理由で一番多いのは、「家族の問題」です。日本ではどうでしょう?家族になにかあったとして、忌引き以外の理由で休む人いますか?もしくは理由を堂々と家族の問題でと言えますか。ぼくは言えないし、休めません。
 一番大切なものを大切にするためにインシャーアッラーという言葉があるんだなと教わることになる。バングラデシュ人のようにできなくても、用事があるときだけでなく、「元気・・・」の一言だけでも家族に電話をする心の豊かさをもったらどうだろうか。
 今日気づいたら昼飯たべる時間なかった、という人手挙げてください。結構いるのではないか。しかも忙しさをアピールするかのごとく言っていないか。バングラデシュ人は食事のこととなると血相を変える。例えば昼前に終わる研修に参加したとする。日本であれば昼前に終わるのであれば、昼飯は自分で用意するか、食べにいくかするはずだ(基本的に自腹で)。でもバングラデシュ人は違う。「研修に呼んでおいて、昼飯も用意しないとは何事だ」と大騒動になる。だから驚くことに、研修や会議の予定を立てるときはまず昼代おやつ代をどこから捻出するかという議論が巻き起こる。
 バングラデシュの村で、住民に税金を納めることの大切さと方法を伝える会合を開いたのだが、1時間半くらいのことだったが、お茶もお菓子もださないのかよという批判が殺到した。「外国人が主催するのだからさぞ豪勢なお菓子がもらえるんだろう」と期待してそれだけのために来た人もいたそうだ。驚きと苛立ちで何と表現したらいいかわからなかった。それだけでと思うかもしれないが、バングラデシュでは大切なことであり、これがないと人が集まらない。仕事よりも、友達との約束よりも食事を大切にする。
 「ぼくたちにとって、食べることはどんなことより楽しくて幸せなことなんだよね。だからそれを阻害されると何もやる気がおきないし、何も考えられなくなる」
 仕事を言い訳にして、食べることを後回しにしていないか。12時から昼休憩だとして、12時になったとたん食事に行くことをためらっていないか。生きるために必要なことは食べることより仕事なのか。周りとの波長を合わせることなのか。
 バングラデシュ人のように、食べることに異常なまでの執着をもちなさいとは言わないが、食べることも忘れて、もしくは忘れたふりをして、食べないのをやめにしませんか。
posted by GHQ/HOGO at 07:37| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月20日

生活保護世帯のうちもっとも多いのは?

 安定した生活はたった1つのきっかけであっという間に崩れ去る。誰でも陥る可能性のある貧困の実態―。生活保護世帯は過去最多を更新し続けているが、構成比を見ると高齢者と障害者・傷病者が多く、全世帯の7割超を占める。
 これらは事実上働くことができない世帯だ。保護費の内訳を見ると医療費にかかるものが半分を占める。生活保護というと不正受給に注目が集まりがちだが、生活保護費の総額に占める割合は 0.5%前後で推移しており、多いとはいいがたい。
 高齢者が増えるに伴って、今後も生活保護受給世帯が増え続けるのは間違いない。生活保護費だけに着目して予算を削減するのではなく、年金、医療、介護など約30兆円に上る社会保障関係費全体の中で議論すべきだろう。
 国もセーフティネットの拡充に向けた問題意識は持っている。生活保護に陥る手前で支援するために「生活困窮者自立支援法」を施行されているが、いまだにその効果が表れているとは言い難い。。
 フランスの経済学者トマ・ピケティ氏が記した『21世紀の資本』。ピケティ氏は米国などにおいて上位1%の富裕層に富が集中する格差の構造をあぶりだした。一方、現在の日本で問題視される格差とは、大衆層の貧困化なのである。
 多くの人は、貧困は他人事だと思っているだろうが、実はそうではないのだ。女性、高齢者、子供などにもその闇は広がり、日本を覆いつつある。まずはその事実にきちんと向き合うこと、そしてどのような対策を打つのか考える必要がある。
posted by GHQ/HOGO at 07:36| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月19日

手薄なセーフティネット

 経済学に「貧困の罠」という言葉がある。本来は税制や社会保障制度などの欠陥によって貧困から抜け出せない状況を意味する。ただこの男性のように普通に生活をしていても、貧困に陥る「罠」は少なくない。
 転落者を受け止めるセーフティネットも手薄だ。雇用保険や医療保険、年金などのように保険料を支払い、いざというときに給付を受ける社会保障制度はそれなりにある。が、それら防貧ネットからこぼれ落ちた人たちの受け皿となるセーフティネットは生活保護しかないのが実情だ。
 その生活保護への風当たりは強い。もともと受給者の負担のない救貧施策のため、批判を浴びやすいが、保護費負担金は3.8兆円(事業費ベース)に膨らんでいることもあって、予算削減の動きが加速している。
 生活費にあたる生活扶助は今年4月からカットされた。これで2013年から3度目の切り下げだ。7月以降は家賃に当たる住宅扶助や暖房費などの冬期加算も削減される見込みとなっている。
posted by GHQ/HOGO at 09:28| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月18日

世界および日本の経済格差の現状と原因は? 3

 第4の論点として、対応策については、累進所得税、相続税、教育、労働市場政策、金融監督、公正取引・競争政策、国際的な税務協力等が考えられる。
 第1に税制である。所得税(賃金所得税、資本所得税)と相続税が、所得及び資産の格差拡大に対処する直接的かつ最も効果的な手段と考えられる。ただし、欠点もある。賃金所得税に関しては、短期的及び中長期的に経済活動(労働時間、生産性の向上、イノベーション等)にマイナスの影響を与える可能性がある。相続税は、子孫に財産を残すことを目的とする利他的な遺産動機が妥当であれば、資本蓄積を阻害する懸念がある。そして何よりも、資本・企業・人の国際的な移動が容易となる中で、有能な人材、企業、財産がタックス・ヘイブンに逃れてしまう可能性が否定できない。経済格差に対処するための適切な税制レジームの可能性とそれに対するグローバリゼーションの制約について、現時点で十分な知識やコンセンサスは得られていない。今の時点では、ある程度の非効率を受け入れつつ、所得税や相続税の累進度を高めて、経済格差の拡大へ対処することになろう。また、給付付き税額控除は、労働のインセンティブを活かしつつ、経済格差を抑制する手段として、有益な方法とみられている。
 第2に、途上国の税制に関しては、経済エリートを優遇する社会的慣行から、所得税や相続税は僅かしか課されていない。しかしながら、途上国の経済格差の拡大は、既得権益層の支配力を高め、また、教育や健康面での機会の不平等を著しいものとし、経済成長を阻害していると考えられる。一方で、国内の金融資産の総額や流れを追跡することを可能とする技術進歩は進展している。戦後の日本の経済成長と厳しい累進税制の経験からは、中下位層の所得環境を底上げすることで持続的な経済成長がより円滑となることが示唆される。中進国の罠から脱却するために、所得の再配分を支える累進的な所得税と相続税を導入する必要性は、途上国に押しなべて高いと考えられる。
 第3に、教育の充実である。教育の公平な提供は、機会の均等を図り、不平等の少ない社会の構築に貢献する。また、有能な貧しい子供に教育の機会を与えることで、公平性とともに、効率性を向上させることにも資する。特に、途上国では所得格差と教育格差は顕著であり、所得と教育の相関はクロスカントリーでも各国の時系列でも確認されている。
 第4に、労働市場への介入として、職業訓練の充実、最低賃金の引上げといった方法は、所得の格差拡大の抑制に有効と考えられる。最低賃金の引上げに係る企業のコストを和らげるための低所得者向けの社会保険料の軽減措置も有効な手段と考えられる。
 第5に、金融監督や公正取引・競争政策を通じて、少数の企業による市場占有率の高まりを抑制し、市場の公平な競争を強化することを通じて、経営者の報酬決定能力を弱める必要があると考えられる。市場の規制緩和は常に新たな既得権益を生むことにつながりかねないことから、常に新たな視点で市場の競争状態を確認していく姿勢が問われている。
 第6に、経済格差を是正するために、Piketty(2013)らは、累進所得課税の再強化とともに、国際的な累進資本課税の実現に向けて、金融情報の透明性の向上と税務当局間の協力の強化の必要性を指摘する。最近のパナマ文書による世論の関心の高まりがこうした動きを後押しすることが期待される。
 グローバリゼーションや技術進歩等は日本社会にも影響を与えているが、日本ではジニ係数の上昇や上位層の総所得に占める割合の増加は顕著なものではない。Borjas(2016)は、アングロサクソン諸国と欧州大陸諸国の相違として、高技能労働者への需要の高まりに対して、前者は価格(賃金)の変化で対応し、後者は数量の変化(失業、非労働力化)で対応した可能性を示唆する。日本でもバブル崩壊以降、不安定雇用割合や未就業者割合が特に若年層で高水準となっている。さらに、日本では、1980年代半ば以降、子供貧困率が顕著に高まっている。
 Bourgion(2015)は、経済格差が高まっているアメリカで、国民の多くがアメリカ社会を公平で公正な国と考えている理由の一つとして、アメリカでは結果の平等より機会の平等を優先することが影響している可能性があるとしている。日本人の格差拡大の懸念の高まりの背景として、就学期間や社会の入口で教育及び就労に関する機会の平等が狭められ、また、低成長下の日本社会がやり直しの効きにくい社会になっているとすると、僅かに上昇したジニ係数等が示す結果の不平等以上に将来の日本にとって憂慮すべき事態であるのかもしれない。生涯の所得格差への研究を含めて、さらに経済格差に関する分析が深められることを期待したい。
posted by GHQ/HOGO at 06:15| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月17日

世界および日本の経済格差の現状と原因は? 2

 3番目の論点として、1980年以降、多くの国で発生している経済格差の原因について考える。米国の標準的な労働経済学の教科書であるBorjas(2016)は、所得の大層を占める賃金格差の拡大について、1970年末からジニ係数が上昇していること、賃金の上位と中位以下の間の格差が拡大していること、労働市場に占める大卒の割合が上昇したにも拘わらず、大卒の賃金が高卒の賃金より上昇していること、同一グループ(年齢、教育、人種等)内の格差も拡大していること等の事実を指摘する。その上で、Borjas(2016)は、実証研究により上記の諸点との整合性や原因と結果のタイミング等を精査すると、賃金格差を十分説明できる原因について経済学者はコンセンサスを得られていないとする。以下、格差拡大の原因とされるいくつかの要因について説明する。
 第1に、グローバリゼーションである。国際貿易の拡大や1980年代以降の共産圏(中国、ソビエトブロック、インド)の国際貿易競争への参入に伴い、ヘクシャー・オリーンの定理が示すように、途上国では未熟練工による貿易財の輸出が増加し、先進国では低技能労働者を多数使う産業が衰退し、高技能労働者を多数雇用する産業が伸びた。Borjas (2013)は、貿易の拡大は賃金格差の拡大の20%程度を説明するとする。
 ただし、先進国の格差の拡大は、(シンプルなモデルが指摘する)低技能労働者の賃金の低下や高技能労働者の賃金の上昇だけでなく、中間層の賃金をも低下させた。これを説明するのが、第2点目のコンピューターの普及等の高技能労働者に偏った技術進歩である。こうした新たな技術を使いこなす者と活用できない者の生産性の相違が賃金格差拡大の殆どを説明するとする者もいる。ただし、米国で格差が急拡大したのは1980年代であるのに対して、IT技術の急速な進歩がみられたのは1990年代であるというタイミングのずれが説明できない。
 第3に、各種の制度要因である。Bourginon(2015)によると、労働組合の組織率低下、最低賃金の実質的低下、国際機関の構造調整プログラム、各国の規制緩和や構造改革等も所得や賃金の格差拡大に一定の役割を果たしたとされる。
 なお、長期にわたり持続的な高成長を確保するには構造改革や規制改革への継続的な取組みが大切であると考えられるが、高い経済成長と所得格差の関係は必ずしも定かではない。中国、インド、南アフリカの経験からは高成長は所得格差の拡大に関係しているようにみえる一方で、高度成長期の日本では所得格差の水準は安定しており、また、最近のブラジルや韓国の経験からは高成長は所得格差の縮小を伴っていたとされる。また、労働市場の改革は、労働者単位の賃金格差を拡大させた一方で、経済の効率性を高め、雇用者数を増加させることを通じて、家計単位の所得水準の格差にはさほど影響を与えていないとの実証分析もみられる。
 第4に、累進課税制度の緩和である。所得税及び相続税の累進課税制度(戦中から戦後にかけて戦費調達・戦争債務返済の必要性から導入された制度)に関して、1970年代以降、経済効率の向上やイノベーションの推進の観点からトップ税率が軽減されたことも、上位層の総所得に占める割合の増加に一定の影響を与えたとみられる。
 第5に、上位層の総所得に占める割合の増加を説明する理論として、スーパースターの理論やトーナメントの理論が使われる。前者は、IT技術の進歩やグローバリゼーションの進展に伴い、非常に大きな市場に低価格でアクセスすることが可能な幾つかの業種(エンターテイメント産業、ファンドマネージャー等)で観察される現象である。後者はスポーツのトーナメントと同様に管理職を競争させ、勝利(昇進)を得た者に高額の給与を支払うことで、多くの管理職に最大限の努力を払わせることができるとするものであり、こうしたインセンティブメカニズムの導入は、企業のパフォーマンスを向上させたとの実証研究もみられる。
 第6に、第5の考え方に疑問を投げ返る議論として、富裕層による報酬決定能力の高まりがある。企業、特に金融部門の幹部の報酬が極めて高いのは、企業統治の失敗、累進税制の緩和、経済の金融化等の影響を受けて、経営者が自分の報酬を自分で決められる影響力が高まっていることにあるとの指摘である。グローバリゼーションの進展と相まって、少数企業による市場支配力と寡占的利潤は増加しており、それを背景に富裕層は政治献金を通じて権力への影響を強めている。一方で、労働者は企業との交渉力を低下させており、低い条件を受け入れざるを得なくなっている。
 第7に、世代間の経済格差の継承については、Borjas(2016)によると、米国で親から子に受け継がれる賃金の水準(Intergenerational Correlation)は3割から4割であり、仮に第1世代に30%の賃金格差があると、第2世代は10%程度、第3世代では5%未満が格差として受け継がれる(ある程度平均賃金への回帰がみられる)とされる。
 第8に、Piketty(2013)は、資本収益率が成長率を上回ること( )から、資産の格差(ひいては所得の格差)が拡大するメカニズムが資本主義に内包されていると考える。ただし、殆どの研究者は、アメリカの所得格差の拡大の原因を主に勤労所得の格差の拡大にあると考えており、Piketty(2013)は、高齢化やイノベーションの低迷により成長率の低下が予測される将来の課題として、資本収益率と成長率の問題を指摘したと考えるべきであろう。
posted by GHQ/HOGO at 06:01| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする