2017年10月12日

生活保護の大問題は低すぎる捕捉率

 日本の生活保護で最も大きな問題は何だろうか。貧困状態なのに、利用していない人がたいへん多いことではないか。
 生活保護では、世帯の人数、年齢、地域に応じた最低生活費を算出し、それに医療費など個別事情によって必要な費用を加えた額が、その世帯の生活保護基準額となる。それより収入が少なく、利用できる資産を加えても足りないときは、保護を利用できる。
 生活保護基準を下回る経済状態の世帯のうち、現実に生活保護を利用している割合を「 捕捉率 」と呼ぶ。社会のセーフティーネット(安全網)である生活保護制度が、その対象になりうる世帯をどれぐらいキャッチしているか、という意味である。
 厚生労働省の推計でも研究者の推計でも、捕捉率は、所得だけで判定すると1〜2割、資産を考慮しても2〜3割にとどまる。残りの7〜8割は、とても貧しい生活水準に置かれているわけである。憲法25条の定める生存権(健康で文化的な最低限度の生活を営む権利)の保障が行き届いていないと言わざるを得ない。
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2017年10月11日

高齢者の生活保護問題を解決するためには、それ以前に、年金・医療・介護の社会保障制度の拡充が絶対条件

 高齢者の雇用促進に拍車がかかるとどうなるか。期待したいのは高齢者の消費が活発化することによる景気の回復である。だが、簡単に、高齢者に対して「お金を使って」とお願いしても、病気や介護など“万が一”のための備えが足かせとなっているのが現状。消費よりも貯蓄に回してしまう気持ちも理解できる。だからこそ、そんな不安を軽減させるための役割を果たすための、社会保障制度のさらなる拡充が求められているとも言える。
 生活保護という“最後のセーフティネット”について問題解決を図るためには、それ以前、つまり“第2のセーフティネット”とも言うべき社会保障制度の拡充が必須。高齢者の雇用促進が「世代内格差」の是正につながる一方で、年金や医療、介護、雇用など各種の社会保障制度を拡充することで、生活保護を受給する高齢者の削減につなげていかなければならないのだ。
 高齢者の生活保護問題が大きくクローズアップされたことを受けて、その前段階における社会保障制度の改革も避けては通れない道となっている。その抜本的改革の一要因として挙げられるのが景気対策と言える。
 年金や高齢者の生活保護、介護報酬改定、高齢者の医療費負担問題…と、あらゆる社会保障問題が顕在化しだしたこのタイミングでの総選挙は、もしかすると、政治を見直し、正しい道へと導いてくれる政治家を選ぶ良い機会かもしれない。
 これまでの日本では、「補助だ」「助成だ」として、国のお金をある意味“使って”きた政治家が選ばれてきた。それがまかり通ってきたのは、経済成長がとどまるところを知らなかったひと昔前の話ではないのか。
 少子高齢化が加速度的に進み、人口のピラミッドが逆転した今こそ、有権者の皆さんも投じる一票について考え方を変えてみるべきではないか。「国のお金を使う」という政治ではなく、「国民がお金を使いたくなるような社会を作る」政治にすべきだ。だが、…。
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2017年10月10日

高齢者の雇用促進を図ることで経済が活性化する

 若者にも大きな負担を背負い込ませてしまう現状がある。その対策として1つ考えられるのは、高齢者の雇用の促進ではないだろうか。高齢者自身が稼ぎを得ることができれば、生活保護から抜け出して社会的に自立した生活を送れるようになるはずだ。なおかつ、社会保障費の削減にもつながるはずだ。
 もちろん現在も、高齢者の雇用促進に対して国の施策を組んではいる。代表的なところでは、生活保護を受けなくても良くなった人に対して「就労自立給付金」が支給されることになっており、また生活保護の手前の困窮者に対しては「生活困窮者自立支援法」も施行されている。だが、…。
 また、厚生労働省による雇用関係助成金も。「特定求職者雇用開発助成金」「高齢者雇用安定助成金」「トライアル雇用奨励金」など、高齢者を雇い入れる事業者に対しての助成金を設けることで、広く社会的に高齢者の雇用を奨める施策も取られている。
 その半面、「在職老齢(ざいしょくろうれい)年金」という制度が、高齢者の雇用促進を妨げている現状があるのを知っているか。在職老齢年金とは、60歳を超えて定年を迎えた高齢者が年金を受け取れる年齢になっても、その時点で労働による定期的・安定的な収入があると年金の一部、または全額が支給停止となる制度である。
 例えば、60歳を過ぎても厚生年金に加入してフルタイムの社員として働き、平均月収が28万円(65歳以上は46万円)を超えると、年金を全額受給することができなくなる。これでは高齢者の労働意欲が低下してしまうのも無理はないし、一方で、国としては税収(所得税等)の機会を逃しているということにもなる。少子化によって労働人口が減少を続ける中、労働力を高齢者に期待しようにも、この制度が大きな壁になっているとは考えられなくはない。
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2017年10月08日

高齢者に働く場を!生活保護を抜けることができれば社会保障費の削減にもつながる!

 生活保護をめぐる問題について取り上げると、その数字だけがひとり歩きして、さも衝撃的なものであるかのように受け取られがち(その責任の一端はメディアにもあるのだが)。しかし、問題なのはそこではない。
 生活保護というのは、“最後のセーフティネット”とも言われている通り、社会保障システムが抱える問題点が溜まって表れやすい、つまり欠陥が集中的に表面化しやすいところでもある。
 厚生労働省が言うように、高齢化が進み、低い年金、またはまったく年金を受け取れない高齢者を支える受け皿が、現状では生活保護しかないということを如実に表している。
 このままの状態で高齢化が進めば、段階の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年、また団塊ジュニアが高齢者の仲間入りをする頃には、どうなってしまうのだろうか。高齢者たちが貧困にあえぐだけでなく、それを支える若者にも大きな負担を背負い込ませてしまうのは火を見るより明らかなのだ。
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2017年10月07日

65歳以上の高齢者で広がる富裕層と貧困層との格差

 現代の60歳以上の方々は、納めた年金よりも多い額のリターンを得ている“年金の納め得世代”と言われている。そう考えると、「たくさんの年金をもらっているはずなのに、それでも生活保護を受けないと生活できないの」という疑問の声が挙がっても不思議ではない。
 こうした矛盾が表面化してくるのも、年金受給額に関して平均値が取られているからと考えられる。年金受給額に関しては、年収や就労形態によっても異なるため、平均値で考えること自体がナンセンスであり、生活保護受給問題と並行して考えると本質を見誤ってしまいがちだ。
 つまり、このようにも考えることができる。
「多額の年金を受給している高齢者の層が平均値を底上げしてしまっているために、少ない年金しかもらっていない高齢者までもが“納め得世代”と捉えられている」
 年金受給額に関して “納め得”と“納め損”という世代間格差に関しての議論も確かに問題ではあるが、実は65歳以上の世代内格差も、高齢の生活保護受給者数を増加させている要因の1つと言える。
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2017年10月06日

高齢者の生活保護受給者が増加を続ける理由について

 高齢者の生活保護受給者数が年々、増加傾向。今年8月時点では約76万世帯が生活保護を受けていると厚生労働省から発表があった。これは、すべての生活保護受給者数の50パーセント近くなっているのだが、この数字を見ると、ある疑問も生じてくる。
 それは、「今の高齢者は、払った年金保険料よりも多いリターンを得ている、いわゆる“年金の納め得世代“なのに、なぜ生活保護に頼らざるを得なくなっているのか」ということだ。
 「老後破産」という嬉しくないキーワードも世間を騒がせている昨今だが、高齢者の生活保護をめぐる難題の根本をたどっていくとやはり、社会保障制度の拡充、そして景気の回復という、今の日本が抱える2大問題が浮かび上がってくる。
 生活保護受給者数も過去最多記録を更新中。厚生労働省の発表によれば、その最たる理由が「高齢者世帯の増加によるもの」だそうだ。つまり、高齢化に伴って生活保護受給者数も伸びているということになるす。
 実際に、生活保護受給者数は右上がり。65歳以上人口に占める生活保護受給者の割合は2.63パーセントで、これは全人口に占める生活保護受給者の割合の1.58パーセントよりも高くなっている。
 「相対的貧困率」は、簡単に言えば、「平均的な収入を得ている人の、半分以下の収入で生活している人」の割合である。65歳以上の高齢者では5〜6人に1人、75歳以上の後期高齢者では4人に1人の割合で貧困と定義づけられるす。
 さらには、すべての生活保護受給者に占める65歳以上の割合は約4割、60歳以上で見ると5割以上となっていることからも、確かに高齢化によって、高齢の生活保護受給者が増え続けているということも分かる。政府発表の資料を見ていくと、確かに高齢者の貧困問題が顕在化していることが分かるし、高齢化が進むのに伴って生活保護の問題が深刻化していることがよく分かる。
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最後は国のセーフティネットに!

 このままでは中年フリーターと、彼らが行き着く将来の「老後破産」は、増える一方にならざるをえないのか。
 「何というか、本当に不安は、意外なほどないんです。ただ、それ以前に、希望が、ない」
 いまの若者は、たとえ低収入でも幸福感をおぼえている人が多い。一方、バブルの時代に、それを享受していなくても、少なくとも空気に触れた経験がある人たち、つまり、主として就職氷河期世代の中年フリーターは、いまの日本を見て絶望してしまう。
 激増する中年フリーターたちは、こうして絶望しながら「最後は国のセーフティネットに頼る」という流れに逆らえずにいる。このままの状態がつづけば、彼らはそう遠くない将来、具体的にはあと20年もすれば、一斉に「老後破産」状態に陥ることになるだろう。
 だが、そうなったときには、「希望」は中年フリーターのみならず、この国に暮らすあらゆる人たちの前から失われてしまいかねない。だからこそ、いま国家が、政治家が急いで取り組むべきは、中年フリーター対策なのである。
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2017年10月05日

最後は国のセーフティネットに!

 このままでは中年フリーターと、彼らが行き着く将来の「老後破産」は、増える一方にならざるをえないのか。
 「何というか、本当に不安は、意外なほどないんです。ただ、それ以前に、希望が、ない」
 いまの若者は、たとえ低収入でも幸福感をおぼえている人が多い。一方、バブルの時代に、それを享受していなくても、少なくとも空気に触れた経験がある人たち、つまり、主として就職氷河期世代の中年フリーターは、いまの日本を見て絶望してしまう。
 激増する中年フリーターたちは、こうして絶望しながら「最後は国のセーフティネットに頼る」という流れに逆らえずにいる。このままの状態がつづけば、彼らはそう遠くない将来、具体的にはあと20年もすれば、一斉に「老後破産」状態に陥ることになるだろう。
 だが、そうなったときには、「希望」は中年フリーターのみならず、この国に暮らすあらゆる人たちの前から失われてしまいかねない。だからこそ、いま国家が、政治家が急いで取り組むべきは、中年フリーター対策なのである。
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2017年10月04日

非正規雇用者を正社員にできないのか?

 「1ヵ月で十数万円稼げる中年フリーターは、実はまだ勝ち組なんです」
 そう言うのは、一般社団法人officeドーナツトーク代表、田中俊英氏である。不登校、ニート、引きこもりから貧困問題まで、長年、子供や若者の支援活動に従事してきた田中氏は、中年フリーターに接して、こう実感するという。
 「ようやく仕事に就けても、時給800円程度のアルバイト。グローバリゼーションのなかで、一度この流れにはまってしまったら、もう正社員にはなれないし、月収が手取り15万円を超えたらラッキー、という人々が、非正規雇用者のなかにはかなりいます」
 このような流れを変えるべく、行政も取り組みはじめてはいる。たとえば東京都は、「東京しごと塾〜正社員就職プログラム〜」を始めている。30歳から44歳という、まさに中年フリーター世代を対象に、3ヵ月の職務実習を経験させ、正社員として働けるようにうながす、という支援活動である。
 企業にとって、非正規雇用の労働力はメリットが大きく、大幅に控えることはできないが、その一方で、雇用の分かれ目が人生の分かれ目になっているのが現状だから、行政が乗り出して正社員化をうながすことは必要だろう。
こうした支援に積極的に参加できるのは、おそらく何らかの方法で、自ら現状を打開できるような人が多い。なので、むしろこうした取り組みに挑めない人を支援する方法がないかぎり、中年フリーターが減るようなことにはならないはずだ。
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2017年10月02日

中年フリーターの増加で生活保護費が5倍に!

 「老後破産」へと向かってひた走っている感のある中年フリーター。これまで時代に翻弄されてきた彼らだが、将来、「老後破産」を迎えるようになったとき、日本の社会保障費はいったいどれほど嵩むことになるのだろうか。
 「2008年に政策研究機関であるNIRA(総合研究開発機構)が発表したレポートでは、今後、就職氷河期世代が老人になった際には、生活保護に必要な予算が、約17兆から19兆円にのぼると試算されていました。非正規雇用の人々が現状のまま放置されつづければ、実際にそのくらい、あるいは、それ以上のコストがかかることになってしまうでしょう」
 ここ数年、生活保護の給付総額は年間3兆円台だから、その増加ぶりは、すさまじいばかりだ。17兆円といえば、先ごろ新規上場した郵政3社株の時価総額と、ほぼ同額であるが、それ以上に、日本の一般会計予算の5分の1に近い金額だと言ったほうが、より衝撃的かもしれない。
 それほどの巨費が、単年度の生活保護費として必要になるというのだ。しかも、それらはまさに、中年フリーターたちの“老後破産対策費”と呼ぶべきものなのである。
posted by GHQ/HOGO at 08:02| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

中年フリーターの増加で生活保護費が5倍に!

 まさに「老後破産」へと向かってひた走っている感のある中年フリーター。これまで時代に翻弄されてきた彼らだが、将来、「老後破産」を迎えるようになったとき、日本の社会保障費はいったいどれほど嵩むことになるのだろうか。こういう予測がある。
 「2008年に政策研究機関であるNIRA(総合研究開発機構)が発表したレポートでは、今後、就職氷河期世代が老人になった際には、生活保護に必要な予算が、約17兆から19兆円にのぼると試算されていました。非正規雇用の人々が現状のまま放置されつづければ、実際にそのくらい、あるいは、それ以上のコストがかかることになってしまうでしょう」
 ここ数年、生活保護の給付総額は年間3兆円台だから、その増加ぶりは、すさまじいばかりだ。17兆円といえば、郵政3社株の時価総額と、ほぼ同額であるが、それ以上に、日本の一般会計予算の5分の1に近い金額だと言ったほうが、より衝撃的かもしれない。
 それほどの巨費が、単年度の生活保護費として必要になるというのだ。しかも、それらはまさに、中年フリーターたちの“老後破産対策費”と呼ぶべきものなのである。
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2017年10月01日

中年フリーターの増加で生活保護費が5倍に!

 まさに「老後破産」へと向かってひた走っている感のある中年フリーター。これまで時代に翻弄されてきた彼らだが、将来、「老後破産」を迎えるようになったとき、日本の社会保障費はいったいどれほど嵩むことになるのだろうか。こういう予測がある。
 「2008年に政策研究機関であるNIRA(総合研究開発機構)が発表したレポートでは、今後、就職氷河期世代が老人になった際には、生活保護に必要な予算が、約17兆から19兆円にのぼると試算されていました。非正規雇用の人々が現状のまま放置されつづければ、実際にそのくらい、あるいは、それ以上のコストがかかることになってしまうでしょう」
 ここ数年、生活保護の給付総額は年間3兆円台だから、その増加ぶりは、すさまじいばかりだ。17兆円といえば、郵政3社株の時価総額と、ほぼ同額であるが、それ以上に、日本の一般会計予算の5分の1に近い金額だと言ったほうが、より衝撃的かもしれない。
 それほどの巨費が、単年度の生活保護費として必要になるというのだ。しかも、それらはまさに、中年フリーターたちの“老後破産対策費”と呼ぶべきものなのである。
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2017年09月30日

ブラック企業の正社員にはなるな!

 会社から一定の評価を得ているのだろう。そうであれば、正社員にならないかと打診されたりしないのだろうか。
 「そういう声をかけられることもあります。でも正直なところ、ぼくのような立場の、会社が責任を負わずにすむ人間を大勢雇っている会社は、本質的にブラック企業なんですよ。一部のポストに就ける人は潤っていますが、そうでない人は、精神を病むほど異常な量の雑務をやらされ、追い込まれているのを見ていますから。安易に正社員になったりすれば、それこそ病気やケガをするのと同じ結果が待っていると思います」
 そう冷静に分析する高田さんだが、その口調は重くはなく、意外なほど飄々としている。ただし、達観しているのではない。諦観しているのである。
 「この時代にいまから正規雇用されることなんて、まずないと思っていますから。独身ですし、最後は国のセーフティネットに頼るしかないですよね」
 高田さんのような非正規雇用の、いわゆるフリーターが目立ちはじめたのは1990年代半ばごろのことだった。以来、その数は増えつづけている。
 厚生労働省によると、雇用者に占める非正規雇用者の割合、すなわち非正規雇用率は、80年代半ばには十数%だったものが、今年は40%近くにまで達している。いまや、この国の労働力の5人に2人、実に2000万人以上が非正規雇用者というのが実情なのだ。
 労働経済ジャーナリストの小林美希氏によると、80年代後半、自由な働き方を示すものとして“フリーター”という言葉が誕生する一方、労働者派遣法などが改正され、企業が責任を負わずに簡単に労働力を確保できるようになった。その後、折からのバブル崩壊で、93年大学卒業組からはじまる、いわゆる“就職氷河期組”がどっと社会に出た。
 高田さんのような非正規雇用の、いわゆるフリーターが目立ちはじめたのは1990年代半ばごろのことだった。以来、その数は増えつづけている。
 厚生労働省によると、雇用者に占める非正規雇用者の割合、すなわち非正規雇用率は、80年代半ばには十数%だったものが、今年は40%近くにまで達している。いまや、この国の労働力の5人に2人、実に2000万人以上が非正規雇用者というのが実情なのだ。
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2017年09月29日

中年フリーターの現状はどうなっているのか?

 少し前まで夢ある子育て世代だったはずの中年の間に、フリーターが激増している。滅入る話は、そこに止まらない。彼らが老後を迎えたとき、一斉に「老後破産」状態に陥って、生活保護費が今の何倍にも膨らみかねないという。日本を覆すような話なのだ。
 フリー・アルバイターを縮めた造語であるフリーターとは本来、少年や青年、いずれにせよ若者を対象とした言葉だったはずだが、最近、“中年”と呼ばれる世代のフリーターが激増している。
 彼らの収入は月15万から20万円程度と、生活保護受給者とあまり変わらず、家賃と光熱費を支払ってしまえば、やっと食べていける程度しか残らない。もちろん、年金を納める余裕などないし、それどころか、健康保険料すら支払えない。
 そんな人たちが増えているのはなぜなのか。そのことは近い将来、想像を上回る「老後破産」社会が到来することを暗示しているのではないだろうか。中年フリーター高田さんの場合はこうだ。
 「不安は、ないんです。ただ……」
 と言葉を濁したのは、45歳になる高田淳史さん(仮名)だ。ある離島出身の高田さんは、高校卒業と同時に神戸にある石油関連企業に就職した。まだ、バブル真っ盛りの時代である。だが、それから数年して、
 「阪神大震災があって、会社の先行きがあやしくなったんです。何もかもが壊れてしまったあの地震のあとは、ぼくの価値観も大きく変わってしまって」
 勤め先の将来に不安をおぼえて退職し、東京に出てきたという高田さん。いったんは、ある会社に正社員として入社したものの、すぐに退職してしまった。それ以来、ずっとフリーターである。いろんな仕事をしてきたが、ここ5年ほどは、百貨店などの催事で使う冷蔵庫などの什器をリースする会社で働いている。といっても、日雇いである。おもな仕事内容は、冷蔵庫などの設営と撤去だという。
 「早くて2週間前に、急なときは当日なんてこともありますが、会社から〈○月○日に○○百貨店○○店へ行けますか〉といった内容のメールが届くんです。自分の体力と相談して、1日にどれだけの仕事を掛け持ちできるか考えてから返信します。賃金は1現場につき4500円です」
 平均すれば、1ヵ月に30ヵ所ほどの現場を回る。4500円の“基本給”は1現場につき5時間までの金額で、労働時間がそれを超過すれば1時間1000円の残業代が支払われる。こうした合計で、手取りの月収は多いときで15万円ほどになるという。
 「まず家賃を払います。次に光熱費。残りのお金でなんとか生活するという感じですかね」
 高田さんの自宅は東京都内にある。1人暮らしだから、なんとかギリギリの生活はできると語るが、
 「蓄えはありませんし、年金も払っていません。病気になったりケガをしたりすれば、立ち行かなくなるのはわかっています」
 仕事は軽くない。生活にもまったく余裕がない。しかし、意外にも会社からは、それなりに“いい扱い”も受けているという。
 「設営場所の周囲には高価なモノも置かれたりで、それなりに緊張感がある現場なので、何も考えないで労働できる、というわけではないんです。それに、慣れる前に辞めてしまう人も多いだけに、長続きすると、会社も優先的に仕事を回してくれたり、仕事内容が比較的ラクなところを斡旋してくれたりするんです」
 中年フリーター馬場さんの場合はこうだ。
 馬場弘明さん(仮名)は、現在46歳。すでに同じ仕事を10年以上つづけている“熟練”の中年フリーターである。九州出身で、大学を卒業すると、いったんはコンピューター関連企業にSEとして就職したそうだが、
 「企業体質が合わなくて、研修期間中にやめてしまいました。以来、フリーター暮らしで、もう15年間、空調設備のメンテナンスをやっています」
 メンテナンスと一口に言っても、その内容は細分化されており、およそ100項目にものぼるという。仕事に赴くのは都内が中心だが、ときに地方への出張もあるそうだ。
 「空調設備が置かれているのは、狭い場所がほとんどなので、無理な姿勢がつづくのがつらいですね。時間帯も、相手先の都合などによって早朝から深夜まで不規則なので、体力的には最近、かなりきつくなってきました。そのうえ老眼がすすんできたので、細かい作業の時は、目がつらくて本当に困ります。近視なのでコンタクトレンズを使っているのですが、老眼になると、近くを見るのが本当に難しくなるんです」
 そう言って笑う馬場さんの表情からは、苦悩が透けて見える。それでも、15年間、この仕事一筋に磨いてきた腕をもってすれば、それなりの見返りは得られるのではないだろうか。
 「毎月、1ヵ月ほど前に提示される予定表に、働ける日を書き込みます。1現場あたり1万円の日雇いです。夜勤の時は1万2000円になりますが、体力的にきついので、あまりたくさんの仕事を詰めこむことはできません。毎月、だいたい12から13カ所の現場に出ていて、それでなんとか生活できる感じですかね」
 むろん、生活できると言っても、ギリギリである。
 「年金も払ってないし、生活に余裕はありません。好きな音楽活動をつづけるためには、自由な働き方はいいんですが、ときどき、1人きりになると、いろいろ考えますね。友人からはよく“孤独死するよ”と言われるんです」
 それでも馬場さんに、いまの生活を変えようという気ちはない。
 「実家の両親は、僕に結婚してほしいと思っているみたいなんですが、いまは交際している女性もいないし、結婚なんてまったく考えていません。この仕事をやめて、ほかになにかがあるという気もしませんね」
 そこまで語って、馬場さんはぽろっと漏らした。
 「“日本は厳しいな”とは思います」
 たしかに、日本の状況は日に日に厳しくなっているが、そのことは、中年フリーターの増加と軌を一にしていると言っていい。
 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査によると、35歳から54歳までの非正規雇用者(女性は既婚者を除く)の数は今年、273万人を超えた。これは大阪市の人口を若干上回る数字である。前出の小林氏はこう指摘する。
 「デフレがつづいているかぎりは、彼ら中年フリーターも、たとえギリギリであっても、衣食住をまかなって生活を維持することができます。しかし、一度物価が上昇すれば、たちまち立ち行かなくなります。それに、いまは働いているからなんとか生活できていても、老後になればすぐに限界が訪れます。たとえば、健康保険料を払っていないから、体調を崩してもなかなか病院に行かない。病状が悪化してようやく医者にかかったときには、自己負担の医療費が大きくのしかかってくる。年金も払っていないから受給できません」
 その結果、どうなるのかと言えば、
 「将来、生活保護などの社会保障費が、爆発的に増えることになってしまうと思います」
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2017年09月28日

貧困の自己責任説蔓延というウソ?

 日本社会では貧困の自己責任説が蔓延っているというが、ネットでの反応を見る限り、自己責任説をとる者はほとんどいない。つまり、日本社会に貧困の自己責任説が蔓延している、という仮説は事実ではない。したがって、自己責任説の蔓延がホームレス支援の妨げになっているという主張はデタラメにちかい。
 日本社会で、ホームレスが自己責任であると思っている人間はいないのではないかと思うほどである。つまり、多くの国民は、ホームレスは自己責任だと思っていないのである。
 皮肉なことに、多くのネット論客は「日本社会に貧困の自己責任説が蔓延し、それがホームレス支援の妨げになっている」という虚構を信じることで、自己の価値基準からそれはいかんと思い、躍起になって貧困の社会責任説を支持する仕組みになっているのである。これが、自己責任論を道徳的に叩くネット論客の心理構造である。このことによって、日本国民がほとんどホームレスの自己責任説を支持していないという事実が隠蔽されることになる。
 反貧困運動は、虚構物語としての貧困の自己責任説蔓延説を仮想的敵として、運動の動機付けを調達しているのである。この社会運動上の巧妙なトリックに気づいている者は少なく、多くの浅学のネット論客は、貧困の自己責任説蔓延説を事実と勘違いし、自己責任説を叩くのである。
 日本社会に貧困の自己責任説が蔓延し、それがホームレス支援の妨げになっている、という確かな事実はない。少なくとも、もし自己責任説を否定する多くのブコメの論客たちが日本国民の意見を代表しているというのなら、なおさらそうであろう。
 もし自己責任説が蔓延しているというのなら、自己責任説に賛同するブコメのコメントが欲しいものであるが、まったくない。やはり貧困の自己責任説を唱える者はおらず、仮に唱えても叩かれるわけであり、貧困の自己責任説を持つことは世間の集合的制裁にあうのである。自己責任説を唱えている人をネットで探すのは困難だ
 むしろホームレス支援団体のケースワーカーや福祉事務所職員たちのほうが、本音においては自己責任説が実感として正しいと思っていると思う。日頃からホームレスと関わる福祉事務所職員や施設職員たちは、自己責任説が正しいと心の中で思っていても、世間や反貧困思想をもつ人たちに叩かれるので、口に出せないのが実情ではないか。
 ちよっとした職場でのトラブル、飲酒やギャンブルなど、自分勝手な理由で仕事をやめ、自分勝手な理由から家族を頼らず、福祉事務所に金を出せと脅迫にくるホームレスに深く傷つけられた福祉職員たちが、蔓延している反貧困思想のせいで、大きな声で自分たちの本音を表明できない状況をつくっている。
 よかったら、自己責任説を支持しているブログを探してみはと思う。ほとんどないだろう。それは、自己責任説を唱えると叩かれるからである。これではネットは、大衆全体主義社会と同じである。ここでも、ニセ科学批判運動と構図は同じである。
 ただし、自己責任一本でもすべてをクリアできないのも確かなことで、木を見て森を見ないということになりかねない。誰もが自分の思い通りに生きていくことはできないし、自分の希望を押し通すことができないのが現実だからである。どのような妥協があり得るのか。どうすれば希望が持てるのか。1億年もすれば人類が滅びるというのに…。
posted by GHQ/HOGO at 07:56| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月27日

なぜ女性の貧困は見えないのか?

 なぜ女性の貧困は見えないのか。理由は、貧困女性が声を上げることは、男性以上に難しいからだ。不安定な非正社員女性が家庭を持つと、生活できるお金を稼ぐために長時間働かねばならず、仕事の合間には性別役割分業による家事・育児もこなさなければならない。
 あるシングルマザーの場合、3人の子供を抱えて離婚したが、子持ちでしかも40代の女性というだけで求人はパート労働に限られる。パートの時給は700〜800円台と最低賃金すれすれのことが多い。子供たちを育てるため、女性は、昼と夜、2つのパートを掛け持ちしてやっと年収300万円になったが、労働時間は通常の男性正社員の約1.5倍の3000時間に達していた。
 こんな状態では、窮状を訴える活動を起こす時間が確保できない。加えて「女性は男性が食べさせてくれるはず」という社会的な偏見がある。こうした偏見が「女性は賃金が安くても困らない」「失業しても困らない」という思い込みを招き、女性の貧困を「改善すべき重要課題」ととらえる声を抑え込む。
 もう1つが、女性に対する暴力の問題だ。貧困から路上に出る男性は目立つが、女性はほとんど見えない。路上に出たときの危険度が女性の場合、男性以上に高いため、外食チェーン店で夜を明かすなど、隠れているから、といわれる。ホームレスの現金収入の道として考案された雑誌「ビッグ・イッシュー」編集部も、女性には販売をすすめられないと言う。売っているだけでホームレスとわかる商品なので、女性の場合弱みにつけこまれて思わぬ被害にあいかねないからだ。
 貧困解決のカギは、それを直視して適切な対策を打つことだといわれる。女性の貧困は、男性に経済力を集中させ女性を扶養させる仕組みや、女性への暴力といった「私たちの社会があまり見たくないもの」に支えられている。だからこそ解決が難しい。だが、女性の貧困が、他の働き手の非正規化、貧困化の出発点になったことを考えれば、その転換なしでは、他の貧困は克服できない。性別や属性にかかわらず、1人ひとりが自立できる働き方を目指した貧困解決策、雇用政策が必要になっているのだ。
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2017年09月25日

85 年は女性の貧困元年?

 均等法はなぜ、歯止めにならなかったのだろうか。それは、「平等を求めるなら男性並みに働くべきだ」との経済界の求めに応じ、均等法が、女性保護の撤廃と引き替えに導入されたからだ。日本では、労働基準法36条の規定で、労使協定があれば事実上「青天井」の残業が可能だ。そのため、均等法前まで、女性は休日労働や10時以降の就労を禁止されていた。これは、男女分業を前提にし、育児や家事の時間を女性にだけ確保することで社会生活を持続可能なものにしようとする策だった。
 そもそも、日本の男性が、青天井で長時間労働できるのは、家庭に主婦という女性がいて、仕事以外の労働を担ってくれるからにすぎない。また、女性の低賃金を補って「妻子を扶養」するために、男性は青天井で働くことを拒めない。保護抜きの均等法は、「妻つき男性モデル」ともいえるこうした働き方を正社員の標準として改めて定式化した。おかげで、「妻」を持てない多数の女性は、出産後は正社員にはとどまれず、非正規労働者への道を歩むことになった。
 欧州では、雇用平等を進める過程で、男女双方の労働時間規制を強化し、両立モデルを働き方の標準とすることで女性の経済力を高めた。日本は、男女両方の労働時間規制緩和という形で「均等」を進めたことが、女性の急速な非正社員化を招いたということになる。85年は同時に、「主婦年金」といわれる第3号被保険者制度と、労働者派遣法も導入された年でもあった。第3号被保険者制度は、配偶者の扶養下にある人の保険料を免除するものだが、扶養からやっと抜け出る程度の低賃金では、保険料負担で世帯収入がむしろ減ってしまう場合がある。
 そのため、自主的に収入制限をするパート女性も多く、これもパートの低賃金が続く原因になった。こうした働き方は、夫の年金に頼れない女性たちを極端な低年金、または無年金に置くことになり、高齢社会の無年金女性問題というもう1つの貧困を生む結果となった。労働者派遣法も、「均等法後は正社員の長時間労働に耐えられない女性の増加が見込まれるため、その受け皿として、パートより専門的で時給の高い仕事が必要だった」(高梨昌・信州大名誉教授)として、導入された。
 こちらはその後、「年越し派遣村」などに象徴される貧困のもとになった。藤原千沙・岩手大准教授は、均等法・第3号被保険者制度・労働者派遣法を、その後の女性の貧困を深刻化した3点セットとし、「85年は女性の貧困元年」と呼んでいる。
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2017年09月24日

女性の貧困の深刻化

貧困はこれまで、男性の問題として受け止められがちだった。だが統計からは、女性の低収入ぶりが、はっきりと見えてくる。財務省の給与所得統計では、年収200万円以下の働き手は女性の4割以上にのぼる。「年収300万円時代を生き抜く経済学」といった本があったが、その水準を大きく下回る自活できない働き手だ。
 男性の貧困も増えてはいるものの、年収200万円以下は1割に満たない。確かに、4割の中には、世帯主男性の扶養下にあって、日々の生活には困らない女性も少なくないだろう。だが、パートナーからの暴力や離婚の激増、男性の貧困化、非婚男女の増加で、こうした従来型の「結婚による安全ネット」では、事態は解決しなくなっている。にもかかわらず、自立できる経済力を持てる女性が、ごくわずかにとどまっていることが、女性の貧困の深刻化を招いている。
 背景にあるのは、女性労働の非正規化の急速な進展だ。85年に男女雇用機会均等法が制定されて以降、女性の社会進出は進んだようにみえる。高位の女性や高賃金の女性も出てきた。だが、均等法以後に増えた働く女性の3 分の2 は、パートや派遣などの非正規労働に流れ込み、非正規労働者はいまや女性の5 割を越えている。「非正規」は例外という意味を含んでいるが、それがむしろ多数派という異様さだ。
 これら非正規労働者の賃金を時給換算すると、女性パートは男性正社員の40% 台で推移し続けている。これでは、週40 時間の法定労働時間働いても、年収200万円程度しか稼げないのは当然といえる。正社員主体の企業内労組が主流の日本では、パートや派遣労働者は労組の支えがなく、賃金は横ばいを続けがちだ。最低賃金すれすれの時給でボーナスも手当も昇給もないという安さに加え、短期雇用なので、次の契約を更新しなければ削減も簡単という「便利さ」が企業に受けて、90年代後半からの不況では人件費削減のため、非正規労働は、女性から、新卒者や男性、公務労働にまで及んだ。働き手の3人に1人が非正規という社会では、親や夫がいない生計維持者も非正規労働となり、生存を脅かされ続けている。酷い話だ。
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2017年09月23日

格差が拡大しないような方策を検討すべきだ!

 日本以外の先進諸国でも経済活動のグローバル化によって拡大した海外からの所得の分配が労働分配率の低下に関わっている可能性があり、高齢化が進んで日本の経常収支が赤字化しても労働分配率の低下が続く恐れもあるだろう。
 第二次世界大戦後の各種の改革で資産の再分配が行われたこと、さらに遡れば明治維新のような大きな社会変化があったことは、日本の資産格差を比較的小さなものにしてきた原因の1つかも知れない。
 格差が小さかったということは、必ずしも日本社会の固有の特徴ではないとすれば、日本でも資産の格差が所得の格差を生み、それがまた資産格差を拡大させるという、格差の拡大再生産が起こる可能性は否定できない。
 まったく格差のない社会が理想的でないことは明らかだが、余りに格差が大きく固定的な社会も望ましくない。これまでは格差が小さい国だったということに安心していないで、日本でも許容範囲を超えて格差が拡大しないような方策を十分検討する必要があるのではないだろうか。
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2017年09月22日

海外からの所得が増えている?

 対外資産の蓄積が進んだことも、労働分配率の低下を引き起こしている原因の1つと考えられている。日本では1980年頃から経常収支の黒字基調が定着した。これが毎年の金融収支の黒字となって海外に保有する資産の増加につながるので、長年、対外純資産残高の増加傾向が続いてきた。
 日本の対外純資産は名目GDP比でみても1967年末には0.7%の債務超過だったが、2014年末には純資産が77.3%にも達する規模に拡大している。こうした対外資産から得られる所得も増加しており、2014年度には海外との間の利子や配当の受払などの海外からの所得は名目GDP比で4.3%の黒字に拡大している。
 かつては経済活動を見る指標としては、GDP(国内総生産)ではなくGNP(国民総生産)が用いられていたが、三面等価の原理からGNPとGNI(国民総所得)は等しい。GDPは国内の経済活動水準を示す指標としては適切だが、消費や投資に使える所得を考える場合には海外からの利子・配当などの所得を含めたGNI(GNP)を見る方が良い。これは、資産家の世帯を考えれば働いて得る所得がほとんどなくても、財産所得が大きければ豊かだということと同じことだ。
 日本社会が豊かになったのかどうかという指標としてはGNIを見るべきなのだから、名目GDP比で8割近くにも達する対外純資産の収益性を高めることには大きな意味がある。
 経済政策の方向としてもGDPの動向だけではくGNIの拡大にもっと注意を払うべきだというのは確かで、安倍内閣が2013年に策定した「日本再興戦略」では1人当たりGNIを10年後には150万円以上増やすという目標を示している。
 海外への投資取引を考慮していないことも、資本と労働の間の分配率が一定となるという結果が得られる理由である。だから、近年の世界経済のように海外への投資が活発になっている状況では、労働分配率が一定になるとは期待できない。なぜなら、所得が賃金と資本に分配されると考えるのは、所得を得るためには労働と資本の両方が必要だからだ。
 しかし、海外から得られる財産所得は国内の労働を必要としない。例えば海外子会社から得られる配当が、日本にある本社で海外戦略を担っているような部門で働く人達の賃金に反映されることはあるだろうが、国内の工場などで働く人達の賃金にも分配されるとは考え難い。
 今後対外投資を拡大することで海外からの所得が増え、日本全体としては所得の増え方が速くなるはずだ。しかし、対外資産から得た所得が普通の労働者に賃金として分配されるとは考えにくく、国民所得の伸びを賃金の伸びが下回って、国民所得の中で賃金に分配される比率である労働分配率は低下していく可能性が高いだろう。
 大幅な経常収支黒字を続けているドイツなどを除けば、先進国の多くはそれほど大きな経常収支黒字を出しているわけではない。とくに米国は経常収支の赤字が続いていて、対外債務が対外資産を上回る純債務国になっているにもかかわらず、第一次所得収支は黒字が続いている。
posted by GHQ/HOGO at 07:17| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする