2020年05月09日

保護と腐敗幹部:習近平はその病根を絶つことができるか?

 中国の生活保護と腐敗幹部 習近平はその病根を絶つことができるか。
 中国のインターネット上に「最低生活保護費を巡る流血事件」なる話題が虚実まじえて駆け巡った。
 「事件」は貴州省の天柱県槐寨村で起きた。同村党書記ほか3人の幹部が、困窮村民家庭に支給された「最低生活保護費」から総額約10万元(140万日本円)を横領した事実が、県検察局の捜査で明らかになった。
 「最低生活保護費」制度はまず農村に先行して都市の困窮住民に対して1997年に打ち出された。その後、高度成長路線の下で都市と農村の貧富の格差が急激に広がったため、2007年に農村での「生活保護費」制度が全面的に実施されるに至った。
 支給対象基準は全国の各地域で異なっているが、2007年時点で平均年収857元(約12,800日本円)以下の者を対象としていた。これが2011年11月の改正で支給基準が一気に全国平均で年収2,300元(約28,000日本円)以下に引き上げられた。
 その結果、農村部の最低生活保護費受給者は92%増えて6,374万人から1億2,238万人を越えるに至った。また農村部の生活保護支給額は当初、1人当たり全国平均で月約60元(約900日本円)であったものが、2011年時点では1人当たり月約250元(約3,050日本円)にまで改善されたのである。
 生活保護費横領事件が起きた貴州省天柱県槐寨村では、県の財政部門が生活保護費(以下生保費)が直接に困窮村民に渡るように、支給対象村民に本人名義の銀行口座を作らせ、そこに生保費を振り込む方式をとった。つまり村民委員会を通じて支給するとピンハネされて、全額が本人に渡らない危惧があると考えたからだ。
 槐寨村の全村所帯数は600戸余り、人口は約3000人。生保費受給該当戸数は160戸余、人口は約800人。ところが同村は村民集会で生保費の総額を全村民に平等に分配することが決められた。
 このため、県政府から生保費が同村受給対象者800人の銀行口座に振り込まれると同時に、村民委員会の幹部が銀行に赴いて、受給者本人の前で同額を受領、これを同村の各組長をつうじて全村民に分配していたのである。こうした経過から各村民が受領する配分額は四半期ごとに55元から最大70元余りの少額にとどまった。
 なぜこうした全村民分配がなされたかと言えば、「生保費」受給者の「選定」自体が全村民の「総意」で決定していたからである。もし「生保費受給者」がその費用を全村民に再配分することを拒否するなら、次期からはその村民を受給者に選定せず、また配分金を与えないという圧力がかかったからである。
 こうした平均分配の考えは中国農村には伝統的に強く、そこにまた幹部の生保費横領の余地も生じたのである。横領汚職が発覚したのち、村民たちは党書記を始め汚職に関係したと思われる幹部数人を監禁、殴打した。
 逆に幹部の側も外部から人を集めて村民に暴力を加え、流血の事態が引き起こされた。これがある事ない事ネットに流れ全国に知られるようになったのだ。
 この事件は貧困救済の社会保障に関連するだけに重大な意味を持っている。事件がネットで騒がれるようになった時期は、ちょうど全人代が開かれて、習近平が国家主席に選任され、名実ともに最高指導者になった時にあたっている。
 その習近平政権のこれからの10年にとって、命運を左右するのは、中国社会の貧富の格差をどれだけ縮小し得るかにかかっている。社会格差は、毎年20万件を越える農民暴動、労働争議、住民紛争を引き起こす根本要因となっており、今や党独裁体制を揺るがす問題である。
 この意味で習政権は弱者救済の社会福祉、社会保障政策を最重点政策としている。2013年度の国家予算では社会保障、医療衛生、住宅保障の総計で1兆400億元(約12兆7,000億日本円)で前年比約25%増、全財政支出の11%を占める。
 問題は莫大な社会福祉、社会保障費をめぐって上から下まで幹部官僚の横領、汚職が絶えないことである。習近平はその腐敗をどのように根絶できるのか?党中央政治局常務委員の劉雲山は3月のある重要会議で党中央が「清党運動」を用意していることを明らかにした。
 現在の共産党は超マンモス党で党員数8,340万人。「清党」とはそのうちの70%、5,800万人を審査にかけ、最終的に400万人余から党籍をはく奪するという驚異的なもの。
 党の腐敗はそれほどに深刻と言えるが、この規模の腐敗除去運動が激しい権力闘争を呼ぶことは容易に想像できる。習近平政権は発足当初から常に正念場にあるのだが、政権自体が腐りきっているので生活保護制度そのものが維持できるはずがない。
posted by GHQ/HOGO at 07:25| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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