『「年金月4万円」生活保護費「受給者増加」高齢大国ニッポンの「暗い将来」』は、読者から大変大きな反響があった。この中で、現行の年金受給額では、特に国民年金受給者の場合「生活が維持できない高齢者」が多数存在し、高齢者世帯の生活保護受給が増加の一途を辿っていること、政府が検討している年金制度改正は高齢者の労働意欲を高め、生活改善に資するものではないことなどを指摘した。
現在、政府は「全世代型社会保障」に向けた年金制度改正の検討を行っているが、残念ながらこの改正は、決して高齢者の生活改善につながるようなものではない。
年金制度改正の柱は3つ。
柱の第1は、公的年金の受給開始年齢を75歳まで選択できるようにすることだ。
現在の公的年金制度は、受給開始年齢が原則65歳で、60〜70歳の範囲で選択できる。受給開始を1ヵ月早めるごとに65歳から受給を開始した場合の年金額(基準額)から0.5%減額され、遅らせるごとに0.7%増加する仕組みとなっている。もし60歳から受給を開始すると、基準額から30%の減額、70歳から開始すると42%の増額となり、この金額は生涯続く。
60歳から受給を開始すると、年金の受給総額は65歳から受給を開始する場合に比べ、75歳までは多いが、75歳を超えると65歳から開始したほうが多くなる。また、70歳から受給を開始すると、65歳から開始した場合の年金総額に追いつくのは82歳前後となる。どんどんと不利な状況に追い込まれることになるのだ。