生活保護利用者の言動は、とかく世間の批判にさらされやすいものである。「生活保護なのに○○、働いて納税している自分がかわいそう」「生活保護のくせに△△だなんて、いいご身分ねえ」の「○○」や「△△」に入りうるものは、縁日の金魚すくいで獲った金魚を飼う・100円で買ってきた花を飾る・図書館に行って本を借りてきて読む・スマホを所有する・子どもを進学校に進学させるなど、人間が行ったり「したい」と考えたりする可能性のあるもの全てにわたる。
規制を受けた生活保護当事者のギャンブルだが、パチンコも競輪も合法的なものであり、法的に禁止するのは難しい。
花や図書館や子どもの進学が問題になるほどであるから、もちろん「2ヵ月に1回、低価格風俗店に行く」「1ヵ月に1回、庶民的な居酒屋で2000円程度の飲食を楽しむ」「パチンコに行く」「競輪や競輪に行く」は大いに問題にされうる。問題にする側が理由として挙げるのは、多くの場合、「一般常識」「社会通念」「庶民感情」「市民感情」「納税している自分たちとの公平感」といったものである。しかも、ギャンブルを「良いこと」と考えている人々は多くはない。「生活保護でギャンブル!」と非難することは、自分が非難される心配をせずに楽しめる、安全で手軽な娯楽でもありうる。
「ですが、パチンコ自体は合法的な行為ですし、生活保護法が明示的に禁止しているわけでもありません。『望ましい行為かどうか?』という点でいえば、確かに望ましくないかもしれません。けれども、『望ましくない』ことと『パチンコに行くことを、不利益処分を背景に禁止できるかどうか』は別の問題です」(吉永氏)
「そもそも、生活保護費でお菓子を食べようが、お酒を飲もうが、パチンコに行こうが、それら自体は咎める筋合いのものではありません。福祉事務所に市民の方から『タレこみ』の電話などがあったら、実際に、そう答えてきました」(田川市)
法的に、あるいは行政として「生活保護でギャンブル」を禁止することは、やはり不可能なのだ。