だが、社会保障支出の規模が大きいということは、必ずしも福祉国家として貧困問題や人口減少への対応に成功していることを意味しない。日本では近年、現役世代の女性の貧困率が上昇し、12.6%に達している。オランダでは、女性の貧困率は4.6%である。母子世帯において貧困が拡がったために、子供の貧困率も上昇し、ユニセフの統計では14.9%となっている。オランダの子供の貧困率は5.9%である。
さらに、今日の福祉国家の重要な課題である人口問題への対応においても、人口の減少を食い止めることができずにいる。2014年春には民間の政策提言機関が、2040年までに半数の自治体が人口減で持続困難になる可能性があるというレポートを発表して衝撃を呼んだ。社会保障支出が拡大するなかで、現役世代に貧困や格差が拡がっているのである。これはなぜなのであろうか。