ちなみに、 世界銀行は2015年10月に国際貧困ラインを1日1.25ドルから1.90ドルに改定している。この背景には、2015年の世界の貧困率が初めて10%を下回る見通しになったからだ。
2015年現在の統計によれば、貧困層の多くはサハラ砂漠より以南の「サブサハラ・アフリカ地域」に集中しており、ここにインドなどの南アジア地域を加えると、85%以上がこの2つの地域に集まっていると言われている。とりわけサブサハラ・アフリカの貧困率は、41%が貧困ライン以下となっており、世界の中での格差が大きいことがわかる。いまだに世界には数多くの絶対的貧困層がいることを示していると言っていいだろう。
世界銀行の調査によると、世界の貧困層は1990年には18億9500万人だったのだが、2015年には7億3600万人に大きく減少している。この四半世紀の間に、貧困層の数をざっと11億人以上減らすことに成功したことになる。
この25年間で、世界は確実に貧困層を減らしてきたと言っていいが、世界銀行は絶対的貧困の比率を、世界全体で3%まで減らすことを目標にしている。
一方、相対的貧困については「OECD(経済協力開発機構)」のデータがベースになっている。最近のデータがないためにはっきりしたことは言えないが、2011年の時点の中国の相対的貧困率は28.8%に達している。13億人の約3割、5億人弱が貧困層となっていたわけだが、いまやこの数字は大きく改善していると考えるのが自然だろう。ケ小平が進めた開放政策以降、中国では6億人程度が貧困から救われたと言われている。
中国に次いで貧困層の多い国は、やはり人口の多いインドということになるのかもしれないが、貧困率のデータではインドは世界第5位になっている。ちなみに、貧困率の高い国はデータでは次のような結果になっている(2016年現在、OECD調べ、調査年は各国によって異なり2011年〜2015年、出所:グローバルノート)。
1. 中国……28.80%
2. 南アフリカ……26.60%
3. コスタリカ……20.90%
4. ブラジル……20.00%
5. インド……19.70%
6. アメリカ……17.80%
7. イスラエル……17.70%
8. トルコ……17.20%
ちなみに、こうした貧困のデータは164カ国を対象とした世帯調査に基づいており、各国の政府によって3〜5年ごとに実施されているが、データの収集や分析は国によって大きく異なるため、なかなか最新の数値が出てこない。
いずれにしても、この四半世紀で貧困層を救済するという点では、人類は大きな前進を遂げたと言っていいだろう。