第1条 この法律は、日本国憲法第25条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。
ここで明示しているのは、まず「国家責任」。生活保護制度を実際に運用するのは、地方自治体の福祉事務所だが、責任は国にあるということ。保護にかかった費用の4分の3は、国が負担する。残り4分の1も、自治体が受け取る地方交付税の額の計算に入る。
次に「最低限度の生活保障」。すべての国民に最低限度の生活を保障するという考え方は「ナショナル・ミニマム」と呼ばれる。19世紀末にイギリスのウェッブ夫妻が提唱したもので、やがてイギリスの福祉国家の基本政策になった。
日本の憲法、生活保護法も、その考え方を採用したわけだ。そして、保障すべきレベルは、ただ生きていればよいというものではなく、「健康で文化的な生活水準」とされている。現代日本に暮らす社会人にふさわしい生活ができる金額(保護基準)でないといけないわけである。
生活保護法による保護基準は、ナショナル・ミニマムを示す意味を持っており、実際、最低賃金制度の設定をはじめ、ほかの社会制度の線引きにも、いろいろ使われている。
さらに「自立の助長」も法律の目的になっている。これは、なるべく早く保護から抜け出すように受給者の尻をたたくという意味ではない。
就労による経済的自立だけでなく、健康の回復・維持や生活管理などを自分の意思で行うこと(日常生活自立)や、社会とのつながりを回復・維持すること(社会生活自立)も含まれると解釈されている(2004年12月、生活保護制度の在り方に関する専門委員会報告)。
そのための対人的な援助(ケースワーク)や、自立に役立つ給付(たとえば高校就学費用の生業扶助など)も行うことができる。