2019年05月10日

デジタル革命が格差の収束を反転させる恐れも

 実は資本主義はもう1つ、見方によっては非常に恐ろしい問題を抱えている。
 いわゆるデジタル革命の急速な進展によって、「デジタルの富をどう配分するか」という新たな課題が生まれてきた。米国アップルの株式時価総額は1兆ドルを突破しているが、そのアップルをはじめとする米国の大手IT企業は、稼いだお金を株主還元や内部留保に回す傾向が強く、一人勝ちによる利益独占が批判の的になっている。
 そして、デジタルの問題が本当に深刻化するのは、むしろこれからではないか。一部の専門家は、いま世界中で開発が急がれているAI(人工知能)やビッグデータの分析・応用技術などを通じて、ゆくゆくは「デジタル資本主義」とでも呼ぶべき経済の新段階が到来すると予測している。
 例えばAIの普及については失業者の増加やさらなる格差拡大を懸念する声もあるが、どちらかといえば生産性の飛躍的な向上が人口減少問題の解決につながるといった楽観的な見方のほうが多い。一般市民の間でも、経済や産業のデジタル化がもたらす利便性を好意的にとらえている人が多いのではないだろうか。
 政治リスク関連のコンサルティングを手掛けるユーラシア・グループのイアン・ブレマー社長は、将来的にデジタル革命がさらに進むと、これまで長い時間をかけて実現してきた豊かな国と貧しい国との間の「富の収束」が反転することになりかねないと警鐘を鳴らしている。特に危惧されるのが、社会のセーフティーネットが先進国ほど整っていない新興国や途上国の雇用についてだという。
@外資の導入なども含めて都市部の開発が進む A若者を中心に雇用の受け皿が多い都市部へと人口が移動する、B安価で豊富な労働力を求めて海外企業が進出してくる、C労働者が賃上げと労働条件の改善を要求するようになる、D技術革新により製品やサービスの付加価値が高まり、賃金はさらに上昇して中間層が生まれる。
 経済発展の初期段階における低賃金は、貧しい国や人々が豊かになっていくのを助ける効力があるわけだが、AIなどによる社会の徹底した自動化や効率化は、低賃金の優位性を大幅に低下させることになるだろう。AIなどが浸透する時代には、人々の雇用には高度な教育や訓練が必要となるが、そのための新たな教育制度や労働者の再訓練を実現できるのは豊かな国だけに限られそうだ。
 貧困から脱出して豊かになる道がふさがれたとき、多くの新興国や途上国で若い世代が労働力から政治的な脅威へと変わる可能性がある。場合によっては社会・経済システムそのものに反旗を翻す恐れもあり、資本主義は生産性や効率性を追求する代償として、大きなリスクを抱えることになるかもしれない。
posted by GHQ/HOGO at 06:04| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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