国民健康保険には保険料の応益割部分があり、その負担は逆進的である。これは、旧国民健康保険法に国民健康保険が「相扶共済の精神」により運営されると明記されていたこととも関係している。要するに、国民健康保険はもともと、地域の助け合いの観点から制度化されており、地域住民が等しく負担し、サービスに応じて保険料を支払うことが望ましいとされていたのである。
しかし、その結果、さきほど示した「国民健康保険実態調査」によれば、1000万円以上の所得層にとっては保険料負担の割合がわずか3%程度にすぎない一方で、30万円未満の所得層では19.4%にも及んでいる。加入者層として最も多い100万円以上150万円未満層でも、負担割合は12.1%と極めて高い。こうした応益割の負担が厳しいとのことから負担軽減措置が一応あるが、これが適用されている者はわずかに全体の6.1%しかいない。いくら所得が低くても、ほとんどの者は保険料の支払義務を免れることができない状況なのである。GDP世界第3位のこの豊かな国で、保険を満足に使えず、いわゆる「無保険」状態で死亡していく者が後を絶たないのもこのためである。