生活保護世帯は、2017年10月時点で約164万世帯、延べ人数で約212万人になる。生活保護基準の引き下げは、この212万人だけの小さな問題だと思われがちだが、実は、生活保護を受けていなくても、所得が少なくなった場合に利用できる制度はたくさんあり、その多くの受給要件が生活保護基準をもとに決められている。
自治体によって異なるのだが、例えば、小学校や中学校への就学援助を受けられる世帯は、所得水準が生活保護基準の1.3倍以下などと決められている。つまり、生活保護基準が引き下げられれば、就学援助が受けられる所得水準も引き下げられ、これまで受けていた就学援助を受けられなくなる世帯が出てくる。
また、住民税の非課税基準も同様に下がるため、今まで課税されなかった人が課税されることにもなる。加えて、保育料や医療費、介護保険料などの非課税世帯に対する優遇措置も対象から外れるので、さらに負担は増えることになる。
この生活保護基準の見直しで影響が出るとされる制度は国だけで30以上あり、各自治体の独自制度を含めると数はさらに増える。
このように、生活保護基準の見直しは、生活保護世帯に対する影響はもちろんだが、関連制度利用者への影響の大きさに注意すべきだ。これによって生活に影響が出る人は、生活保護受給者を含めて、約3000万人にも及ぶと言われている。生活保護基準を下げることは、支援の対象者を減らすことであり、生活が苦しくても法的には困窮者とは認められなくなることを意味するのだ。
この改正によって、額面で160億円ほどの財源が浮くと試算されているが、関連する制度の引き下げ分も加えると、さらにその10〜20倍になるのではないかと言われる。まさに、政府の狙いは、対象者の少ない生活保護基準を引き下げることで関連制度の基準も引き下げ、社会保障費全体を削ることなのである。