なぜ、こんな受給額が設定されているかといえば、そもそも国民年金が対象としていたのは、定年のない自営業者だからだ。年金以外の収入があることを想定して作られている制度なのである。
しかし、非正規社員も勤め人である。老後も働き続けられるとは限らない。しかも、彼らは家計の補助のために働く主婦とは限らない。自分で食べていかなくてはならない、1人暮らしの未婚者がかなり含まれている。
非正規社員が老後、貧困に陥らないようにするには、まず彼らが厚生年金に加入できる仕組みを作らなければならない。厚生年金は、年金保険料を企業と労働者が半分ずつ支払うことになっており、給付水準も比較的、恵まれている。これまで政府は、厚生年金の対象者を広げることを検討してきた。でも、業界団体の反対もあって、わずかな拡大にとどまっている。もっと広げていくべきではないだろうか。
女性でも高齢者でも、きちんと働けてしっかり収入を得られる――そんな世の中が来れば、誰だって安心である。誰だっていつシングルになるかわからないはずだ。離婚や死別、別居。たとえパートナーがいても、1人で生きていかなければならないときが来るかもしれない。
単身世帯の問題は、今、1人暮らしをしている人だけの問題ではない。誰にも起こりうる、社会全体の問題なのである。