こうした子供たちに良質な教育機会を提供し、社会に送り出すことは、将来の日本の経済力を維持する上でも重要である。個人の努力だけでは挽回が難しい学力格差個人の努力だけでは挽回が難しい学力格差貧困による教育格差は個人の努力により挽回できるのか。
最にも社会経済的背景(SES)の低い環境の子供が3時間勉強したときの正答率(71%)は、最にも社会経済的背景の子供が勉強しないときの正答率(74%)を上回ることはできていない。これは、経済的に厳しい環境の子供が頑張っても、経済的に豊かな環境の子供に追いつくのは難しいというのを表している。
貧困による子供の学力格差は、個人の努力の問題ではなく社会システムの問題だ。不平等な社会の仕組みである貧困の連鎖不平等な社会の仕組みである貧困の連鎖貧困がもたらす不利益は年齢とともに蓄積されていき、大学進学や正社員としての就職の道が閉ざされるなど、子供たちのさまざまな可能性と選択肢を制約する。
その結果、不安定な労働や生活に陥り、大人になってからも継続して貧困の中におかれる可能性があるのだ。子供時代の貧困は、現状に影響を与えるだけでなく、長期にわたって固定化し、世代間を超えて次の世代へと引き継がれる「容認できない不平等な社会の仕組み」によるものなのである。