しかし厚労省の改正案では、クラブ活動費・教科外活動費に対して「実費を支給」するというものだ。しかも上限額がある。その上限額は「所得上位70%の世帯の平均的な支出費用」から定められるという。一見、生活保護世帯の子供たちの状況が「高きに合わせられる」ように見える。年当たりの上限額は、1.5万円程度(小学生)・5.9万円程度(中学生)・8.3万円程度(高校生)。月当たりで計算すると、1250円程度(小学生)・4900円程度(中学生)・6900円程度(高校生)。小学生に対して低く抑えられているのが特徴的だ。
将来の進学や活躍が見込める子供たちに対する傾斜配分は、当然のこととして行われるだろう。この他、部活・進路選択への誘導に使用される可能性も懸念される。子供に対する生活保護制度の制度が、人間としての権利保障からメリットを評価した上での「投資」へと、なし崩しに変容されようとしていると見ることもできる。
「学習支援費は、制度が複雑なので報道が少ないですが、非常にまずい流れだと思います。金銭給付が廃止され、クラブ活動・教科外活動のみの実費請求方式となるわけですから」
あえてメリットを見出すとすれば、「子供の費用を親がパチンコに」といった悲劇が避けられること程度だろう。そのような問題を抱えた家庭や親に対しては、第一の選択肢は手厚いケースワークではないか。
「生活保護の学習支援費は現在、参考書や一般教養図書も対象としています。クラブ活動には入っていないけれど読書が好きな子に、親は書籍を買ってあげることができます。勉強嫌いな子に『図鑑を買ってあげようかな』というときにも使えます。でも厚労省案では、そういう場面での支援は、今後はまったくなくなるわけだ。厚労省は家庭内学習は、児童養育加算が対応する』と言っているのですが、小学生・中学生の加算額はまったく増えていません」