企業業績は持ち直したが雇用は回復せず、アメリカの失業率は9%を超えた。この原因は一過性の景気循環ではなく、構造的な自然失業率が上がったからだ。アメリカの自然失業率は7.5%と推定されており、景気対策でこれ以下に下げることはできない。
構造的な失業が常に生みだされる1つの原因は、新興国との競争が激化したことだ。特に製造業は新興国に生産拠点を移し、米国内の雇用は減っている。1990年以降、アメリカで創造された2700万人の雇用のうち、実に98%が非貿易財(国内のサービス業)によるものと推定されている。
製造業で職を失った労働者は、流通や外食のような海外と競合しないサービス業に移る。サービス業は労働集約的で労働生産性が低いので、賃金も低い。GM(ゼネラル・モーターズ)で働いていた労働者が失業し、ウォルマートに再就職して賃金が半分になる、といった形で平均賃金が下がったのだ。