貧困の定義や指標については、いろいろな考え方があるのだが、よく使われるのは、金銭的な指標を用いた「絶対的貧困」と「相対的貧困」である。
アジアの一部や、アフリカのかなりの国々では、その日の食べ物に困る、まともな衣類や生活用品を買えない、住まいもない、といった人々が大勢いる。最低限の衣食住も満たせず、生きていくこと自体が厳しい状態、それが「絶対的貧困」である。たとえば世界銀行は、1日の生活費が1.25ドル未満(物価水準や為替レートを考慮した購買力平価換算)を指標とし、そのレベルの人口が2010年時点で12億人(20.6%)にのぼるとしている。
それに比べると、日本は全体としては経済的に豊かだと言われる。しかし、物の値段や住まいの確保にかかる金額が違うし、そもそも一般的な生活水準が違っている。
そこで、先進国や中進国では「相対的貧困」という考え方が用いられることになる。「その社会のほとんどの人々が享受している習慣や行為ができない状態」という意味だ。
現代の日本で、1日3食まともに食べられない、テレビも冷蔵庫も電話もない、という暮らしなら、誰もが「貧乏」と思うだろう。路上生活の場合、アルミ缶集めなどで月3万円ぐらい稼いでいる人はけっこういて、世界銀行の絶対的貧困のラインに比べると、はるかに多いわけだが、その程度の収入で、アパートを借りて普通に生活していくのはとても無理なのである。