もちろん現在も、高齢者の雇用促進に対して国の施策を組んではいる。代表的なところでは、生活保護を受けなくても良くなった人に対して「就労自立給付金」が支給されることになっており、また生活保護の手前の困窮者に対しては「生活困窮者自立支援法」も施行されている。だが、…。
また、厚生労働省による雇用関係助成金も。「特定求職者雇用開発助成金」「高齢者雇用安定助成金」「トライアル雇用奨励金」など、高齢者を雇い入れる事業者に対しての助成金を設けることで、広く社会的に高齢者の雇用を奨める施策も取られている。
その半面、「在職老齢(ざいしょくろうれい)年金」という制度が、高齢者の雇用促進を妨げている現状があるのを知っているか。在職老齢年金とは、60歳を超えて定年を迎えた高齢者が年金を受け取れる年齢になっても、その時点で労働による定期的・安定的な収入があると年金の一部、または全額が支給停止となる制度である。
例えば、60歳を過ぎても厚生年金に加入してフルタイムの社員として働き、平均月収が28万円(65歳以上は46万円)を超えると、年金を全額受給することができなくなる。これでは高齢者の労働意欲が低下してしまうのも無理はないし、一方で、国としては税収(所得税等)の機会を逃しているということにもなる。少子化によって労働人口が減少を続ける中、労働力を高齢者に期待しようにも、この制度が大きな壁になっているとは考えられなくはない。