2017年08月15日

世界および日本の経済格差の現状と原因は? 1

 最初の論点として、経済格差の問題点について整理する。経済格差の拡大は、「市場の失敗(市場の不完全性)」と「社会・政治の不安定化」を通じて、経済の効率性を損なうことにつながる。「市場の失敗」の例は、貧しいものの健康が害され、経済効率が低下する場合や、貧しいものが就学できずに能力を発揮できない場合等が典型的である。経済格差の拡大は、健康、教育、金融、差別等の経路を通じて貧しい者の能力の発揮を阻み、非効率を発生させ、過度な場合には経済成長が害されうる。こうしたケースでは政策的に介入することで、効率性と公平性を同時に改善することが可能である。また、「社会・政治の不安定化」は、経済格差の拡大の結果、犯罪や闇経済が拡大することにつながる。政府のガバナンスの悪さや腐敗と相まって、一部の既得権益層が独占的利益や寡占的利益を享受する状況に対する不満が高まると、デモや占拠等の社会的な混乱や騒乱、極端な場合には暴動等にもつながりかねない。既存のエリート層への不満は人気取りのポピュリスト的な政治家の台頭を許すきっかけともなっている。
 2番目の論点として、世界及び日本の経済格差の現状について整理すると、以下の通りである。
 第1に、世界の所得格差については、19世紀からの資本主義の歴史において世界全体の所得格差は一貫して上昇していたが、1990年頃から中国、インド等人口の大きなアジア諸国の高成長により、世界全体の所得格差は低下している。ただし、世界全体の経済格差は各国内の格差よりも格段に大きな水準にある。
 第2に、最近の各国の所得格差をジニ係数で比較すると、最も格差が大きいのは、南アフリカ、中国、南米諸国であり、次に、アメリカ、イギリスである。欧州大陸諸国、日本、韓国がそれらに続き、北欧諸国が最も平等な国とされる。
 第3に、先進国の所得格差の動向を、ジニ係数や上位層の総所得に占める割合でみると、1980年代以降、アングロサクソン諸国では、所得格差の拡大がみられ、特に、アメリカで顕著である。アメリカの上位10%(1%)の総所得に占める割合は30%強(8%)から45%強(20%)にまで上昇している。一方、1980年以降の欧州大陸諸国の所得格差をみると、ジニ係数や上位層の総所得に占める割合の上昇は緩やかなものに留まっている。フランスの上位10%(1%)の総所得に占める割合は33%(8%)程度となっている。
 第4に、途上国の所得格差の動向をみると、1980年代半ば以降、中国等のアジア諸国、ガーナ、ケニア、ナイジェリア等のアフリカ諸国で格差は拡大している。例外は、ラテンアメリカ諸国であり、1990年代半ばからラテンアメリカ諸国の所得格差は、水準は高いものの、福祉政策の充実により改善傾向がみられる。ただし、ラテンアメリカ諸国でも2014年以降の一次産品価格の下落に伴う財政難により、再び経済格差の拡大が懸念されている。
 第5に、資産格差は所得格差に比べて格段に不平等度が高い。先進国の資産格差の歴史的推移をみると、世界大戦期間中及び戦後に、極端に不平等であった戦前の資産格差は低下をつづけたが、1970年代以降、資産格差の縮小は止まり、緩やかに反転しつつある。現在の先進国における上位10%(1%)の総資産に占める割合は60%から70%程度(20%から30%程度)、次の40%の中間層が主に住宅資産の形で残りの資産を保有し、下位50%の層はほとんど資産を持たないとされる。
 第6に、途上国の資産格差は、データの制約があるが、所得格差より大きいとみられる。また、中国の資産のジニ係数は急速に拡大を続けており、2010年には米国と同水準にまで不平等は拡大したとの分析もある。
 第7に、生涯所得の格差をみる。一時点における所得格差はアングロサクソン系の国々で顕著であるが、イギリスの生涯にわたる所得格差の研究をみると、所得格差の水準は大幅な低下を示す。また、生涯の中で所得上の地位に流動性が認められ、生涯にわたる上位10%の者が生涯において上位10%に属する期間の割合は35%程度(同様に、生涯にわたる下位10%の者が生涯において下位10%に属ずる期間の割合は20%強)であり、裕福なものが常に裕福である(貧しいものが常に貧しい)というわけではないことが確認される。
 第8に、日本については、所得・資産ともに、経済格差の拡大は顕著ではない。また、格差の水準もアングロサクソン系の国々と比較すると緩やかなものに留まる。上位5%の総賃金に占める割合はアメリカの24%(1970年代半ばから8%ポイント上昇)に対して日本は16%(同2%ポイント上昇)であり、また、上位10%の総資産に占める保有割合は、アメリカの70%に対して日本は40%弱とみられる。
 一方で、日本の子供貧困率は高水準で(16.3%)かつ上昇しており、また、一人親家庭の貧困率(54.6%)はOECD諸国で最悪の水準にある。さらに、25歳から34歳の若年層の雇用の不安定化が進んでいる。2015年の女性の25歳から29歳、30歳から34歳の人口に占める非正規雇用又は未就業の割合はそれぞれ52%(=27%+24%)、61%(=29%+32%)となっている。同じく男性では28%(=16%+12%)と20%(=12%+8%)である。日本では、ジニ係数や上位の総所得・総資産に占める割合にあらわれない若年層の経済格差や機会の不平等が進行しているとみられる。
posted by GHQ/HOGO at 07:06| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: