2017年08月04日

大阪で生活保護受給を始めた人々の目的は、結局のところ不明

 大阪市大チームの研究結果から「生活保護を求めて大阪市に来た」と結論付けるのは、早計すぎるように思われる。2010年と2015年の比較では、マグネット層・非マグネット層ともども、3分の2は生活保護から脱却しているからだ。もしも大阪市に来た目的が生活保護だったのなら、「マグネット層は生活保護から脱却しない」という結果となるはずだからだ。
 ただし2010年は、まだリーマンショック(2008年)の影響が残っていた時期である。マグネット層・非マグネット層で差が見られなかった理由の1つは、もしかすると「2010年に大阪市で生活保護を利用し始めた人々は、景気回復とともに生活保護から脱却しやすい状況にあった」ということかもしれない。
 いずれにしても、「大阪市に来た目的は生活保護を利用するため」と結論づける根拠があるとは言えなさそうだ。大阪市大チームの資料に、このように結論づける記述があるわけではない。結論めいたものは、「(大阪市は生活保護費の)全額国庫負担を求めてもよい数値的根拠になるかもしれない」という一文だけだ。これは、長年にわたって指摘されてきた「貧困問題が深刻な大都市に対して国は予算面で厳しすぎる」という積年の問題、大阪市が困惑し続けてきた問題そのものである。
 また、地方からの低所得層の流入を受け止めやすい大阪市の状況についても検討が行われているが、「マグネット層」問題の中心が単身男性であること、生活保護からの脱却理由が主に死亡(29.0%)と失踪(23.4%)であること、したがって「(マグネット層が大阪市の生活保護受給者の)増加要因を形成しているとは言い難い」という結論が述べられている。
 専門家の研究をメディアが正確に伝えることは、一般的に難しい。しかし、NHK関西の「転入して6ヵ月以内に生活保護を受給していることから生活保護を目的に大阪市に引っ越してきたとみられる人たちは平成27年度に男性受給者の19.8%、女性受給者の10.6% にのぼることもわかりました」という報道は、「大学の発表資料や論文に目を通すわけではない大多数の視聴者、読者のためにこの研究を伝えた」と言えるだろうか。
 自分自身の研究がこのような扱いを受けたら、私ならそのメディアに怒鳴り込むかもしれない。少なくとも、不正確である可能性を示すツイートくらいはするだろうと思う。
 そもそも、よりよい保育園環境、学校、親の介護を求めて自治体を選ぶこと自体は、誰にでもあり得ることだ。「福祉のマグネット」は、あらゆる福祉を対象としている。「よりよい生活保護」で自治体を選んで、何が悪いのだろうか。
posted by GHQ/HOGO at 07:33| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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