2017年06月30日

複雑に影響しあう「貧困・不登校・ひきこもり」

 社会的コストとは税金のような金銭的な負担だけではない。教育が十分に行われなかったために子供が十分な就労スキルを身につけられず社会全体の生産性が落ちたり、警察的機能が働かないために犯罪が増え、市民の安全が脅かされるような状態になることも、社会的コストの増大なのである。
 逆に、一時的な支援コストを支払い、進学や就労支援などを通じて高いスキルを身につけた子供を育てれば、将来、高い収入を得て納税などの社会貢献を行うことが期待できる。社会的コストという視点から、将来の日本社会像と併せ、どのように描くか、そんな長期的な視野でも考えてみる必要がある。
 将来的に社会的コストを増大させるリスク要因として、家庭の貧困、不登校、ひきこもりの三者を取り上げた。これらは単独の問題ではなく、お互いに重複し影響しあって問題を難しくしている。
 社会的コストとして今、生活保護費の増大がクローズアップされている。しかし、そこから見えてくるものは何か、その実情を考えてみよう。
 大阪府のある定時制高校で、母親と二人暮らしの由梨(仮名)が学んでいる。母親は障害者で生活保護費の支給を受けている。由梨は短大への進学を希望しているが、奨学金がなければとても無理だ。担任の教員と地域のコミュニティソーシャルワーカー(CSWr)が話し合って、入学時には、社会福祉協議会の教育支援資金(年間最大122万円<月6万+50万>)を無利子の貸付を受ける方向で話が進んでいた。
 ところが、生保の担当ケースワーカーに相談すると、(1)生活保護費が減額になるか、(2)世帯分離のいずれかを選ばなければならない、と言われたと言う。生保の担当者とすると、「進学できるなら働けるはず」「短大に通いながらアルバイトをせよ」となるだろうが、由梨自身も障害(手帳を申請中)を抱えている状況で、通学とアルバイトの両立はとても負担が大きくできそうもない。
 担任の教員は、「夢を求めて進学することが2〜4年先の自立へ向けた確かな道だと思うのですが、生保家庭の子が大学や短大、専門学校に進学することは贅沢なのでしょうか」 と疑問を投げかける。
 ある市の生活保護担当者はこう説明する。「奨学金を収入としてみなすために保護費が削減されるのではなく、18歳を過ぎると、現行の保護制度上、 その子も働いて生活費を稼ぐ対象として見られているため、被保護世帯の対象者から外れることにより、母親の保護費が減る」。
 しかし、このケースは、一時的な社会的コストの抑制によって、貧困の再生産を促し社会の生産性を低下させるという意味で、長期的な社会的コストを増大させ、社会的ベネフィットを損ねる典型的な例である。結果として社会を弱体化させていると言えないだろうか。しかも経済的な困難、障害などを持つ若者たちが 自立しようという意欲を失わせる制度的な欠陥とも言えよう。
 事実、国の社会保障審議会でも、大学進学と生活保護制度について、現状の生活保護行政が批判をうけている。
 では、生活保護受給世帯とはどのような家族なのか。子供たちに焦点を当てて考えたい。
 板橋区の調査によると、生活保護受給世帯の子供は11.58%だったのに対して、生活保護・就学援助のいずれも受給していない生徒の発生率は2.4%である。被保護世帯の不登校発生率は安定した家庭の4.8倍であり、飛び抜けて高い。文部科学省の調査ばかりでなく他の多くの調査でも、不登校の背後に貧困があるというエビデンスは少なくない。
 貧困の中で疲弊する親や、ネグレクトなどで子供に必要な食生活をはじめとする日常生活を送らせることができないということが、不登校そして高校中退の背景の1つにある。
 生活保護費を受給していなくても、経済的な困難を抱える低所得層(とりわけ一人親世帯)の家庭生活には様々なリスク要因が内在している。そのような世帯の子供たちの不登校リスクが高いのは否めない。しかし、未だに「不登校は子どもの心の問題」という受け止め方が大勢である。
 文部科学省の調査、「不登校状態が継続している又は継続していた理由」を見ると、「不安などの情緒的混乱」が33.3%で最も多く、2番目は「無気力」(29.2%)である。
 しかし、「あそび・非行」(11.9%)は、子供を養育する家庭環境が脆弱なところで発生していることは想像することは可能だが、教員の目からは、「無気力」と見える不登校の内実が、実はネグレクトに近い親からの無関心、家庭と学校での排除の積み重ねによる子供の意欲の喪失など、貧困、虐待、 障害の放置など生育期における長く、厳しい家庭環境の結果であることが想定される。不登校問題は決して「心の問題」にとどまるものではないのである。
 子供が抱えるリスクの実状は多様であって、その対応にはまさにさまざまな専門家が必要だが、現在は心理相談に偏りすぎている。したがって心理相談を担当するスクールカウンセラー(SCr)だけでなく、スクールソーシャルワーカー(SSWr)のような包括的な支援につなぐことができる専門家が学校に存在する必要もあろう。 スクールソーシャルワーカー(SSWr)は、行政の福祉担当者や障害者支援センター、医療関係者、児童相談所などと連絡を取り合い、子供と子供を育てる家庭が必要な支援を受けられるように、さまざまな専門機関の間にネットワークをつくり上げる。そのような支援が求められているといえるだろう。
 内閣府の調査(「若者の意識に関する調査<ひきこもりに関する調査>」)によると、「ひきこもり」の若者は1.79%とされる。15〜39歳人口は3,880万人なので、広義のひきこもりの推計数は(3,880万人×1.79%=)69.6万人とされる。ひきこもり親和群は 155万人(推計数は3,880万人×3.99%=155万人)で合計すれば約220万人に上る。
 ・内閣府の定義では、狭義の「ひきこもり」は、「自室からは出るが自宅からは出ない。近所のコンビニには出かける」「趣味の用事の時にも出かける」「そんな状態が6ヵ月以上続いている」若者をいう。
 ・同定義では、「ひきこもり親和群」を「家や自室に閉じこもっていて外に出ない人たちの気持がわかる」「自分も、家や自室に閉じこもりたいと思うことがある」「嫌な出来事があると外に出たくなくなる」「理由があるなら家や自室に閉じこもるのも仕方がないと思う」と答えた若者をいう。
 社会的コストとは税金のような金銭的な負担だけではない。教育が十分に行われなかったために子供が十分な就労スキルを身につけられず社会全体の生産性が落ちたり、警察的機能が働かないために犯罪が増え、市民の安全が脅かされるような状態になることも、社会的コストの増大なのである。
 逆に、一時的な支援コストを支払い、進学や就労支援などを通じて高いスキルを身につけた子供を育てれば、将来、高い収入を得て納税などの社会貢献を行うことが期待できる。社会的コストという視点から、将来の日本社会像と併せ、どのように描くか、そんな長期的な視野でも考えてみる必要がある。
 将来的に社会的コストを増大させるリスク要因として、家庭の貧困、不登校、ひきこもりの三者を取り上げた。これらは単独の問題ではなく、お互いに重複し影響しあって問題を難しくしている。
 社会的コストとして今、生活保護費の増大がクローズアップされている。しかし、そこから見えてくるものは何か、その実情を考えてみよう。
 大阪府のある定時制高校で、母親と二人暮らしの由梨(仮名)が学んでいる。母親は障害者で生活保護費の支給を受けている。由梨は短大への進学を希望しているが、奨学金がなければとても無理だ。担任の教員と地域のコミュニティソーシャルワーカー(CSWr)が話し合って、入学時には、社会福祉協議会の教育支援資金(年間最大122万円<月6万+50万>)を無利子の貸付を受ける方向で話が進んでいた。
 ところが、生保の担当ケースワーカーに相談すると、(1)生活保護費が減額になるか、(2)世帯分離のいずれかを選ばなければならない、と言われたと言う。生保の担当者とすると、「進学できるなら働けるはず」「短大に通いながらアルバイトをせよ」となるだろうが、由梨自身も障害(手帳を申請中)を抱えている状況で、通学とアルバイトの両立はとても負担が大きくできそうもない。
 担任の教員は、「夢を求めて進学することが2〜4年先の自立へ向けた確かな道だと思うのですが、生保家庭の子が大学や短大、専門学校に進学することは贅沢なのでしょうか」 と疑問を投げかける。
 ある市の生活保護担当者はこう説明する。「奨学金を収入としてみなすために保護費が削減されるのではなく、18歳を過ぎると、現行の保護制度上、 その子も働いて生活費を稼ぐ対象として見られているため、被保護世帯の対象者から外れることにより、母親の保護費が減る」。
 しかし、このケースは、一時的な社会的コストの抑制によって、貧困の再生産を促し社会の生産性を低下させるという意味で、長期的な社会的コストを増大させ、社会的ベネフィットを損ねる典型的な例である。結果として社会を弱体化させていると言えないだろうか。しかも経済的な困難、障害などを持つ若者たちが 自立しようという意欲を失わせる制度的な欠陥とも言えよう。
 事実、国の社会保障審議会でも、大学進学と生活保護制度について、現状の生活保護行政が批判をうけている。
 では、生活保護受給世帯とはどのような家族なのか。子供たちに焦点を当てて考えたい。
 板橋区の調査によると、生活保護受給世帯の子供は11.58%だったのに対して、生活保護・就学援助のいずれも受給していない生徒の発生率は2.4%である。被保護世帯の不登校発生率は安定した家庭の4.8倍であり、飛び抜けて高い。文部科学省の調査ばかりでなく他の多くの調査でも、不登校の背後に貧困があるというエビデンスは少なくない。
 貧困の中で疲弊する親や、ネグレクトなどで子供に必要な食生活をはじめとする日常生活を送らせることができないということが、不登校そして高校中退の背景の1つにある。
 生活保護費を受給していなくても、経済的な困難を抱える低所得層(とりわけ一人親世帯)の家庭生活にはさまざまなリスク要因が内在している。そのような世帯の子供たちの不登校リスクが高いのは否めない。しかし、未だに「不登校は子どもの心の問題」という受け止め方が大勢である。
 文部科学省の調査、「不登校状態が継続している又は継続していた理由」を見ると、「不安などの情緒的混乱」が33.3%で最も多く、2番目は「無気力」(29.2%)である。
 しかし、「あそび・非行」(11.9%)は、子供を養育する家庭環境が脆弱なところで発生していることは想像することは可能だが、教員の目からは、「無気力」と見える不登校の内実が、実はネグレクトに近い親からの無関心、家庭と学校での排除の積み重ねによる子供の意欲の喪失など、貧困、虐待、 障害の放置など生育期における長く、厳しい家庭環境の結果であることが想定される。不登校問題は決して「心の問題」にとどまるものではないのである。
 子供が抱えるリスクの実状は多様であって、その対応にはまさにさまざまな専門家が必要だが、現在は心理相談に偏りすぎている。したがって心理相談を担当するスクールカウンセラー(SCr)だけでなく、スクールソーシャルワーカー(SSWr)のような包括的な支援につなぐことができる専門家が学校に存在する必要もあろう。 スクールソーシャルワーカー(SSWr)は、行政の福祉担当者や障害者支援センター、医療関係者、児童相談所などと連絡を取り合い、子供と子供を育てる家庭が必要な支援を受けられるように、さまざまな専門機関の間にネットワークをつくり上げる。そのような支援が求められているといえるだろう。
 内閣府の調査(「若者の意識に関する調査<ひきこもりに関する調査>」)によると、「ひきこもり」の若者は1.79%とされる。15〜39歳人口は3,880万人なので、広義のひきこもりの推計数は(3,880万人×1.79%=)69.6万人とされる。ひきこもり親和群は 155万人(推計数は3,880万人×3.99%=155万人)で合計すれば約220万人に上る。
 ・内閣府の定義では、狭義の「ひきこもり」は、「自室からは出るが自宅からは出ない。近所のコンビニには出かける」「趣味の用事の時にも出かける」「そんな状態が6ヵ月以上続いている」若者をいう。
 ・同定義では、「ひきこもり親和群」を「家や自室に閉じこもっていて外に出ない人たちの気持がわかる」「自分も、家や自室に閉じこもりたいと思うことがある」「嫌な出来事があると外に出たくなくなる」「理由があるなら家や自室に閉じこもるのも仕方がないと思う」と答えた若者をいう。
posted by GHQ/HOGO at 07:41| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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