2017年05月24日

生活保護の不正受給率はごくわずか 未然に防げるものが多い

 不正はいけない―あたりまえだ。とりわけ、悪質で規模の大きい不正には厳しく臨む必要がある。生活保護の不正受給についても、それは当然である。
 とはいうものの、生活保護と言えば不正受給を連想するというような風潮が、あまりにも過剰に広がっている。まるで不正だらけのように言う国会議員もいて、実態とかけ離れている。生活保護の不正受給はごくわずかな比率だし、不正と扱われていても悪質と言えないケースは多い。
 神奈川県小田原市の生活保護担当課が「保護なめんな」などのローマ字が入ったジャンパーを作り、相当数の職員が着用していたことが問題になった。保護の申請者・利用者を不正予備軍のように見て、不正受給防止を職員の主たる仕事のように位置づけるなら、本末転倒だ。威圧的な姿勢は、助けの必要な人を阻む壁になる。他の自治体も、不正受給の実情を冷静に見つめ直し、職員のスタンスに問題はないか、この機会に点検するべきだ。
 厚生労働省は、2015年度(平成27年度)の生活保護の不正受給の状況を 全国厚生労働関係部局長会議 の資料(社会援護局詳細資料2)の中で公表した。不正受給の件数は4万3938件、不正金額は169億9408万円(過年度の支出分を含む)。1件当たりの金額は38万7千円だった。これに伴う保護の停廃止は1万0587件。悪質性が高いとして刑事告発に至ったのは159件だ。約170億円というのは、軽視できない額。
 とはいえ、15年度の保護費の総額は3兆7786億円(予算ベース)。不正受給額をそれで割ると、0.45%にすぎない。ごくわずかな比率であって、不正がはびこっているとは、とうてい言えません。逆に見ると、99.55%は、いちおう適正な支出だったわけだ。
 保護世帯数は、15年7月末時点で160万2551世帯(被保護者調査)。不正件数をこの世帯数で割ると、2.7%(1つの世帯が複数の不正にかかわることもあるので、これが単純に不正率とは言えない)。36.5世帯に1件の不正があったというレベルの数字である。
 そうは言っても、不正が見つかるのは氷山の一角ではないか、という疑問が出る。確かに、そこは重要な論点なので、いくつかの角度から検討していこう。
 まず、年次推移を見よう。厚労省の資料をもとにすると、2000年代に入って不正の件数も総額もどんどん増え、とくに11・12年度は大幅な伸びでした。しかし、13年度から件数は頭打ちになり、不正の総額は減ってきている。
 件数が増えたと言っても、2000年代は生活保護の利用者そのものが急増しているので、不正の程度がどれぐらいかは、比率を見ないといけない。不正件数を保護世帯数で割った比率は、次第に上昇を続け、11・12年度に大幅に上がり、その後は微増ないし横ばいだ。不正の見つかる率がだんだん高まったけれど、ここ数年は頭打ちということ。一方、不正総額を保護費総額で割った比率は、じわじわと上昇したものの、上がり具合はゆるく、13年度からは低下傾向になっているまた、不正1件あたりの金額は、どんどん減少が続いている。これらは、どういうことを意味しているのか。
 簡単に言うと、細かな不正をたくさん見つけるようになった、あるいは細かい案件まで不正として扱うようになった、ということである。
 もし、発覚する不正が本当に氷山の一角であって、本格的な不正がそこらじゅうにあるならば、1件当たりの金額が減り続けるという現象は起きないはず。いつまでたっても高額の不正が見つかるだろう。不正の件数が横ばいなのに不正の総額は減り、1件当たりの金額がどんどん小さくなる。これは、どんどん細かなものを見つけ、不正として扱うようになったからなのだ。


posted by GHQ/HOGO at 07:25| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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