2016年10月01日

日本の新たな「格差」問題とは? 衰退する「中間層」の不安?

 トマ・ピケティ著『21世紀の資本』(みすず書房)が大きな関心を集めた。長期にわたる経済データを駆使し、資本主義の進展と経済格差の関係を実証した700ページを超える大著だ。アメリカでベストセラーになり、日本でも書店で平積みされるほどの人気ぶりだった。
では、日本でこの本が注目される理由はいったい何だったのだろう。
 幸福度に関する研究で「幸福のパラドクス」という説がある。『国民の幸福度は経済成長とともに高まるが、一定の水準を超えると相関関係がなくなる』というものだ。これは人間の主観的幸福度が、先進国では絶対的な生活水準だけでなく、相対的な社会生活環境に影響されるからだ。
 日本では80年代以降、1人当たり実質GDPが伸びているにも関わらず、国民の生活満足度は低下もしくは横ばい状態だ。60〜70年代の高度経済成長期の日本は、現在に比べて生活水準は低かったが、「一億総中流社会」と言われた格差の小さな社会だった。しかし、その後に生活格差が拡がったことが、国民の生活満足度の低下をもたらした1つの要因になっているのではないか。
 社会が成熟すれば、当然さまざまな「格差」が生じる。それが正当な事由に基づき、大きな社会的不平等を惹起しなければ問題ないだろう。しかし、アメリカでのウォール街を占拠した反格差運動のスローガン“We are the 99%”に象徴されるように、多くの人が資本主義による極端な富の偏在*がもたらすさまざまな格差問題を実感している。
 日本の「格差」がもたらす社会的課題の1つは、「貧困層」の拡大に加え、「中間層」の衰退ではないか。『21世紀の資本』には、「中間層」(富の階層の上位10〜50%)の出現が世界大戦後の格差縮小に大きな影響を与えたことである。日本の場合も戦後の目覚ましい経済成長は、「一億総中流社会」の中核の「中間層」の存在に因るところが大きく、成長の果実を多くの「中間層」が共有して、比較的格差の少ない社会を形成してきた。しかし、今後、「中間層」の貧困化が日本の屋台骨を揺るがすことになりかねない。
 日本においては、「中間層」が貧困に転落するさまざまなシナリオが想定される。人生後半の中高年期に、リストラによる失業や離婚、介護や疾病による離職・転職、若年雇用の不安定化による想定外の子供の扶養期間の長期化など、これまで安定した生活を営んできた「中間層」が「貧困層」に転落するリスクが高まったのだ。『21世紀の資本』人気には、格差や貧困の現状のみならず、日本の新たな「格差」問題として、衰退する「中間層」の不安が映し出されているからであるといえる。
posted by GHQ/HOGO at 08:25| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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