2014年12月16日

生活保護利用者が休日に急病になると… 生活保護受給者が休日に急病になったら…

 休日や夜間の急病は、誰にとっても心細いもの。しばしば「医療費が無料だから無駄に使いたがる」とされる生活保護利用者の場合、医療扶助が利用できるために医療費が無料となることは、急病の際にどのような違いとなるのか。
 先日の日曜日、親しい友人から電話がかかってきた。
 「風邪を引いて、ものすごい熱があって動けない、どうすればいい」
 というのだが、体温はわからない。体温計を持っていないからだ。
 その友人は、半年ほど前から生活保護を利用して単身生活をしている。私の住まいから徒歩20分程度の場所に住んでいるので、様子を見に行ってくることにした。
 「医療費が無料」とはいえ、休日の急病で「すぐに」の受診は原則無理。生活保護の医療扶助では「医療(処方薬を含む)」の現物が支給される。この「医療の現物支給」を受けるためには、まず、福祉事務所に行って医療扶助の申請を行う必要があるのだ。認められれば「医療券」が交付されるので、この「医療券」を持って医療機関と調剤薬局に行き、診察・検査・治療・処方などの医療と医薬品の現物の支給を受ける。
 この「福祉事務所に行く」は、必ずしも必須ではない。たとえば、「脚を怪我して歩けない」、「高熱で動けない」というようなときに、「まず福祉事務所に行く」ということを要求されたら、「事実上、医療扶助を利用できない」ということになる。そこで、身動き取れないような状態であれば、福祉事務所に電話で申請の意向を伝え、口頭で許可を得ればいい。
 また、本当の緊急時には、119番電話で救急隊に救急搬送を依頼することもできる。この場合、本人確認のために生活保護受給者証を見せることになるので(保険証はない)、対応可能な病院へ搬送される。医療扶助の申請は事後となる。
 もし「意識不明である」など、本人が申請できる状況でないのであれば、福祉事務所は申請されたものとみなして、病院とのやりとりで医療扶助を給付する。
 「生活保護で、どうせタダだから、救急搬送も気軽に利用するんだろう」と考える人が実に多いのだが、そんなことはないのだ。私が知るかぎり、多くの生活保護利用者は、救急車利用を可能な限り避ける傾向にある。理由はいろいろで、自分の財布から支払うのでなくても、「多額の費用がかかるため、気が引ける」という場合もある。また、福祉事務所の担当ケースワーカーから「本当に救急車が必要だったのか」と追及されるなどの「後腐れ」を恐れて、という場合もある。
 かつて医療機関で激烈な生活保護差別に遭ったことがトラウマになっていて、「なるべく行きたくない」と苦痛に耐えている場合もある。もし、そんな医療機関に救急車で搬送されたら、単なる生活保護差別に加えて「生活保護のくせに、救急車で来た」という攻撃が追加されることになるのである。
 もちろん、激しい苦痛があるわけではなく自力での移動が若干は可能なようだったら、「救急車よりはタクシーで」が現実的な対応。事前にケースワーカーに相談しておけば、タクシーで病院に行った場合の交通費は「通院移送費」として支給される場合が多い。もちろん、無条件ではない。医師の指示による、または医師に「タクシー利用が必須だった」と一筆書いてもらう必要がある。それでも、あとで「本当にタクシーが必要だったのか」と追及されることを恐れて「病院に行くのをやめようか、どうしようか」と悩む人が多い。
 様子見で済むのだったら、それも1つの選択肢ではあるが、様子見でこじらせたら、結局は医療費がより多くかかることになる。
 そして、様子見も容易ではない事情が、生活保護利用者たちにはある。生活保護基準が「健康で文化的な最低限度の生活」を実現できるほど高かった時期は、過去に一度もない。さらに2013年8月以後、生活扶助を皮切りに引き下げが続いている。もともと節約を重ねていた生活保護利用者たちの生活は、さらなる節約を強いられることになった。 そもそも「最低限度の生活」を想定している生活保護規準から、経済的な余裕が作れるわけはない。もともとギリギリの線、ギリギリ以下の線に設定されているわけだからだ。
 さらに削減が続けられる生活保護費からは、「ちょっと調子が悪いときに市販薬を買う」、「体温計など応急処置キットはひと通り持っておく」、「休日に具合が悪くなったとき、タクシー1メーター程度の距離のかかりつけまで往復する」程度の余裕を作ることも困難になっている。「手持ちの市販薬を飲み、フリーズドライ食品やレトルト食品をとりあえずお腹に入れて様子を見る」という、生活保護より上の経済レベルの生活の「普通」の対応は困難なのである。それに加えて、休日・夜間の医療のハードル、「福祉事務所に行くことも電話することもできない」がある。
 というわけで、私は体温計・総合感冒薬・フリーズドライ食品などを携えて、友人宅に行った。38.0℃の発熱はしていたが、休日外来を受診するかどうか微妙なレベル。本人は「風邪薬を飲んで様子を見る」というので、薬を飲んでもらってしばらく雑談しているうちに、少し回復していたようだった。どうも、ただの風邪のようで、暖かくして、食べられるなら食べて寝ていれば何とかなるようだ。翌日、福祉事務所に連絡をして医療機関に行ったとのこと。前日以上にこじれることもなかったようで、すんなり回復に向かいつつある。
 一部に、問題ある医療扶助利用があることは、当然知っている。でもそれは全体ではないのは明らかである。現在の生活保護の医療扶助の利用しづらさは、すでに、普通の健康管理・普通の治療・普通の急病対応を困難にするレベルなのだ。 これ以上困難を与えようというのか。生活保護利用者の生活をより厳しくしたい人々の本音は、「生きていたら医療扶助が必要だから、生活保護を利用するなら早めに死んでほしい」ということなのか。ぞっとする話ではないか。「それが今の日本の現実」と認めるしかないのかもしれないのだが…。


posted by GHQ/HOGO at 08:34| 埼玉 ☔| Comment(1) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
生活保護を受けてるんですけど今日は休日で病院おやすみ。腰と左側溝内と激しい吐き気が食欲はない。水分は取れてるのか分からない
Posted by 長屋信美 at 2021年04月29日 08:25
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