この問題が厄介なのは、被保護者が死亡していることから、その意思の確認も協力を得ることもできず、本来のケースワーカー業務である被保護者への最低生活保障や自立支援ではない上に、第三者との関係により「生活保護行政」を進めざるを得ないことになるからである。
生活保護法が生きている人を対象に設計されている制度であるため、被保護者が死亡したときには葬祭などをおこなう第三者が保護の対象となる。たとえば、最もシンプルな例として夫婦で保護受給をしており夫が死亡したときに、申請主義の原則により、葬祭を行う者(妻)の申請により葬祭扶助の適用が行われる。しかし、被保護者が単身者で葬祭を行う者がおらず遺留金品がない場合には、死亡者本人は申請ができないから、死者が被保護者であっても葬祭扶助の対象とはならない。
このような場合、旧法では市町村長が葬祭を行うことが規定されていたが、現行法では市町村長による葬祭に葬祭扶助の支給はできないこととされている。このため、生活保護の実務上では身寄りのない被保護者が死亡をしたときにはケースワーカーが民生委員に「個人的に」葬祭執行を打診したりしている。この場合は葬祭扶助申請書等への記載など書類作成の手続だけの場合も多い。
遺留品が存在する場合、相続財産管理人を選定し管理するのが原則であるが、それら一連の手続には費用が発生する。その費用はおおむね30万円以上はかかるため、遺留品の金銭的価値がそれ以上でなければ管理人管理の対象とはならない。それでは、資産価値が少額の遺留品がどうなるのかというと、社会福祉事務所に保管せざるをえないというのが実情のようである。