生活保護では、世帯の人数、年齢、地域に応じた最低生活費を算出し、それに医療費など個別事情によって必要な費用を加えた額が、その世帯の生活保護基準額となる。それより収入が少なく、利用できる資産を加えても足りないときは、保護を利用できるのだ。
生活保護基準を下回る経済状態の世帯のうち、現実に生活保護を利用している割合を「 捕捉率」と呼ぶ。社会のセーフティーネット(安全網)である生活保護制度が、その対象になりうる世帯をどれぐらいキャッチしているか、という意味なのだ。
厚生労働省の推計でも研究者の推計でも、捕捉率は、所得だけで判定すると1〜2割、資産を考慮しても2〜3割にとどまる。残りの7〜8割は、とても貧しい生活水準に置かれているわけだ。憲法25条の定める生存権(健康で文化的な最低限度の生活を営む権利)の保障が行き届いていないと言わざるを得ない。
厚労省は、民主党政権だった2010年4月、生活保護の捕捉率の推計を初めて公表しました(同省ナショナルミニマム研究会第8回資料「生活保護基準未満の低所得世帯数の推計について」)。
この推計は2種類の統計データをもとに計算された。そのうち総務省の「全国消費実態調査」(2004年)は、回答するのに家計簿をつける労力がかかり、低所得世帯の割合が低く出る傾向があると指摘されている。そこで、より信頼度が高いと考えられる厚労省の「国民生活基礎調査」(2007年)をもとにした数字を示す。
この時点の世帯総数(A)は4802万世帯だった。そのうち、所得が生活保護基準に満たない低所得世帯(B)は、597万世帯(12.4%)だった。それに「貯蓄が保護基準の1か月未満で住宅ローンなし」という条件を加え、資産も考慮した保護基準未満の低所得世帯(C)は、229万世帯(同4.8%)となった。
当時の生活保護世帯数(D)は108万世帯。保護を利用している場合、保護基準ちょうどの収入額、あるいは勤労収入があれば保護基準を若干上回る収入額になるので、生活保護世帯は、保護基準「未満」の低所得世帯(BやC)には含まれない。
したがって、保護基準「以下」の世帯数を出すには、保護世帯数を加える必要がある。所得のみで判定した保護基準以下の世帯数(B+D)は、705万世帯(全世帯の14.7%)、資産も考慮した保護基準以下の世帯数(C+D)は、337万世帯(全世帯の7.0%)になった。