2020年03月28日

「不正受給」の意味

 生活保護の不正受給件数は、全体の約2%程度であるが、相変わらずもっと多いのではないかと報道されることもある。私はこの約2%程度であるという厚生労働省の報告にも疑いを持っており、本当はさらに相当少ないはずであると考える。
 この不正受給の議論をする際に、私たちは生活保護の不正受給とは何を指すのか、明確にしておかなければならない。生活保護の不正受給とは、福祉事務所が生活保護法第78条に該当したと判断して決定したものである。
第七十八条  不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者があるときは、保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は、その費用の全部又は一部を、その者から徴収することができる。
 ここでいう「不実の申請その他不正な手段により保護を受け」という文言は、本人が故意に福祉事務所を騙すことがないと成立しない。本人に騙す意図があったのか否か、立証責任は処分庁である福祉事務所にある。
 生活保護受給者の多くは、生活保護制度のことを知らなかったり、申告を忘れてしまう場合がある。収入の未申告や報告漏れを故意で意図的に行うことよりも、過失による報告忘れや制度の理解不足が背景にある。ましてや、生活保護を受給している人々の大半は、高齢者や障害者、傷病者であり、生活保護に関する様々な事務作業が1人で十分に処理できるとも限らない。
 そのため、申告も含めた生活支援をすることがケースワーカー(福祉事務所職員)に求められるのである。だから、生活支援をするなかで、未申告の収入が見つかった場合、故意でないと主張しているのであれば、普通に返還を求めればよく、不正受給として扱うには適切ではないケースが大半である。
 この普通返還は生活保護法第63条に規定されている。
第六十三条  被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。
 要するに、生活保護の不正受給(生活保護法第78条)として処理されている多くの部分に疑いを持っている。つまり、不正受給として計上されている案件の多くが、本来普通返還で対応すべきケースであると考えている。
 例えば、受給世帯の高校生がアルバイトをしていた場合、このアルバイトの収入が未申告だと、統計上は不正受給として扱われてしまう。また、年金やその他の社会保障給付の未申告も、同様に不正受給とされる。
 NHKの報道によれば、不正受給の内容は、「働いて得た収入を申告しないまま生活保護費を受け取っていた」が46%、次いで年金を申告しなかったのが19%、働いて得た収入を少なく申告していたのが13%などとなっている。
 このような事案の大半では、担当のケースワーカーが十分にチェックしていなかったため収入を捕捉できていなかったということや、そもそもケースワーカーからの説明不足のために、申告することを知らなかったということが少なくない。当事者の中には、収入があれば当然役所が把握しているものだろうと思っていたために、制度の仕組みとして不正受給に分類される状況に至ってしまったというケースも多い。
 したがって、「不正受給」とされている問題の多くは、利用者の側に問題があるというよりも、ケースワーカーの側に問題がある。ケースワーカーは常に人手不足で、膨大な事務に忙殺されているため、利用者に対して十分な説明をしていなかったり、コミュニケーションをしっかりと取れていないことも多い。このように、「不正受給」の多くは行政の体制が生み出しているにもかかわらず、あたかも生活保護を受ける人たちが不正を働いているという誤解が広がっている。これは、行政による「不正受給」の偽装である。


posted by GHQ/HOGO at 06:48| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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