2020年02月05日

「生活保護悪撲滅チーム」を示す「SHAT」のマークが袖に付いた夏用のポロシャツ

 不正受給対策が強調されていく中で、生活保護の現場が大きく変容していく。住民の最低限度の保障と自立の助長から、「不正受給を防止する」ことそれ自体が目的へとすり替わり、調査の徹底が指示され、生活保護制度を利用するための手続は複雑化していった。生活保護を利用している者、これから利用しようとする者から「不正受給者」を洗い出すための業務へと内容が改変され、ケースワーカーの仕事は、生活保護利用者を潜在的な不正受給者として疑い、徹底的に調査するといった、まるで「警察官」のような仕事へと変貌していった。
 当然のことながら、疑いの目を向けられる利用者との間に援助の基礎となる信頼関係を構築することはできず、互いに不信感が募るため、こうした関係はトラブルの温床となる。今回、小田原市で生活保護が「誰もやりたがらない人気のない仕事」になってしまっていたのは、政府の「適正化」政策が現場に暗い影を落としているからだ。
 本来、福祉的なケースワークは、利用者と信頼関係を結ぶことから始まるため、利用者を「疑う」ということが前提になる不正受給対策とは馴染まない。ケースワークと不正受給対策は対立するのである。したがって、業務内容が不正受給対策へと傾倒していけば、現場からケースワークが失われ、知らず知らずのうちに生活保護利用者をまるで「犯罪者予備軍」としてみなすような差別的な眼差しが形成されていくことになる。
 相談援助における専門性やそれを担保する組織体制が、こうした差別的な意識に対する防波堤として機能するべきであるが、福祉事務所には専門性をもった職員が配置されていない。ケースワーカーとして業務を行うためには社会福祉主事という任用資格を持つことが条件とされているが、資格取得率は75%程度にとどまる。また、社会福祉主事は大学の指定科目のうち三つを履修するだけで取得できる資格であることから、「三科目主事」などと揶揄され、その専門性には疑問符がつけられている。そのため、相談援助の基本や生活保護法についてほとんど知らない「素人」がケースワーカーとして配属される自治体は決して珍しくない。
 さらに、そのような状況にもかかわらず、研修体制も不十分な場合が多く、生活保護法についての知識が不十分なまま業務に当たっているケースワーカーも少なくない。今回事件が起きた小田原市も、十分な研修体制がとれていなかったという。
 専門性の不在や不十分な研修体制が「当たり前」となっており、差別意識に歯止めがかからない。小田原市が2007年に起きた利用者とのトラブルを契機にこのジャンパーを作成し、それが10年間も告発されることなく続いてきた背景には、こうした生活保護制度の運用体制が抱える構造的な問題がある。


posted by GHQ/HOGO at 08:01| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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