2020年02月04日

深刻なのは「不正受給」ではなく「漏給」

 生活保護と聞くと、ほとんど反射的に「不正受給が多い」というイメージを抱く人が多いと思われる。しかし、実際の統計データを見ると、不正受給の割合は金額ベースで0.5%程度であり、「不正受給が多い」というイメージとはかけ離れている。
 他方で、メディアなどではあまり取り上げられないが、生活保護制度は不正受給よりもはるかに深刻な問題を抱えている。それは、生活保護制度を利用すべき人が利用できていないという漏給問題である。生活保護制度を利用できる人のうち実際に利用している人の割合(捕捉率)は15〜20%程度であり、ヨーロッパ各国の公的扶助制度の捕捉率が6〜9割であるのと比べて、日本の制度捕捉率は深刻なほど低い。生活保護制度は、日本社会で生きる最低限度の水準を保障する制度であるから、膨大な数の人々が最低限度を割った生活を強いられていることになる。
 このように、生活保護制度の「問題」を考えた時、より深刻なのは「不正受給」ではなく、「漏給」なのである。この基本的な事実があまりにも共有されていない。本来、住民の生活を守る立場の行政は、最低限度以下の生活を強いられている住民が生活保護制度を利用していけるよう、漏給対策を積極的に行うべきである。しかしながら、現実には、行政は極めて数の少ない不正受給対策に傾倒し、漏給対策にはほとんど関心を払わない。むしろ、保護率をあげること自体を忌避する傾向がある。なぜこのような状況になってしまっているのだろうか。
 実は、現行の生活保護制度がスタートした当初、政府は漏給を解決していこうという問題意識を持っていた。そのため、1953年から1965年まで政府は毎年、生活保護制度の捕捉率についての統計データを集め公表し続けてきた。ところが1965年を最後に、政府は捕捉率の統計データを公表するのをやめてしまった。そして、この頃から、漏給問題など存在しないかのように生活保護行政が行われていくようになった。
 不正受給対策が生活保護行政のなかで大きな位置を占めるようになったのは、1980年代以降である。社会保障の削減を通じて「財政健全化」を目指す臨調行革のもと、国庫負担の重い生活保護の分野では、生活保護利用者を抑制する「適正化」政策の推進が掲げられた。これと連動するように、暴力団による「不正受給」をきっかけにして、生活保護制度の不正受給に関する報道が増加していった(なお、この当時の不正受給の割合は金額ベースで0.2%だった)。つまり、不正受給対策は、社会保障削減と不可分の政策として行われてきたのである。
posted by GHQ/HOGO at 05:49| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする