2019年12月07日

なぜ不平等は民主主義に危険なのか?

 アセモグルとロビンソンによれば、社会的動揺はしばしば不平等の結果にある。そして、エリートと市民の間の不平等が深刻な社会では、社会的変化が生じやすい。社会がより均等になるほど、大衆が民主化を要求する可能性は低くなる。
 深刻な社会の不平等は民主化を要求するため、革命の脅威へと結びつく。そのためエリートは、彼ら自身の利益のために、参政権を拡大することで民主的移行を起こそうとする。この移行は、革命の脅威を抑えて現状を効果的に維持したまま、最終的にエリートの権力基盤を維持することに繋がる。
 しかしエリートは、革命の脅威を逃れるために必要な程度にしか民主化を進めない。大衆の圧力を弱めて、彼らの能力を弱体化させることで、民衆の力を効果的に削ぐことができるためだ。
 民主化とは、公正な手続を通じて声を上げることだ。しかし民主化は、結果の平等を達成することを目的とした資源の再配分を通じて、より大きな平等を達成することを意味すると言えるだろう。
 このように再配分への圧力を抑制することから、経済的平等は民主主義を効果的に促進する。それらは大衆革命の副産物として生まれるかもしれないし、権威主義体制を生み出すこともある。
 民主主義制度における富の不平等な分配は、大衆による再配分の要求と極限まで増大する税金をもたらしていく。だが政治体制が税率についての”民主的な投票”に応答していない場合、何が起こるのだろうか。
 真に民主的な体制は、大衆の利益のために裕福なエリートを引きずり下ろすのではなく、再分配を目的として高い税率を設定するだろう。民主主義では、誰もが中位投票者定理として知られている理論に従って、税率への投票を決定していく。社会における平均所得と中央値の差が拡大することは、不平等の拡大を示している。その格差が大きいほど再分配を求める声は大きくなり、税率が効率的に決定されることとなる。
 しかしながら個人のレベルで考えたとき、富と所得の不均等な分配は、個人が民主的プロセスに参加する能力に悪影響を与える可能性がある。富と所得を持たざる人々が、それらを持つ人々と同じように政治・政策当局にアクセスすることができない結果、手続的不平等が生じていくからだ。
 富の集中が高まるにつれて、エリートは政治や何らかのイデオロギー的な目標を達成するために富を使うことができる、より有利な立場に置かれていく。所得分布の上位に位置する富裕層は、しばしば無節制な権力を有しており、再分配を制限するだけでなく、より多くのリソースを持つ人に有利な形でゲームのルールを形成していく。立法機関が裕福ではない有権者よりも裕福な有権者に対して応答的であることは、さまざまな研究によって明らかになっている。
 不平等、なかでも極端な貧困は、最終的にわれわれから、ある種の自由であるケイパビリティーを奪うことになる。所得分布の底辺にいる個人が貧しいと言えるほど、貧困は個人のケイパビリティを奪っていく。したがってケイパビリティの観点からは、「自身が価値あると判断できる人生を送っているという実質的な自由」をその人が持っているということが、個人の優位性を判断する上で大きな問題である。
 こうした自由は、個人の自律を基礎付けている。より多くのリソースを持つ人は、自らの目標や目的を追求することができるが、それがわずかな人は、自らの目標や目標を追求する能力が限られていることがあるのだ。
 個人の目的や目標を追求する能力は、異なる理由からも民主主義にとって重要である。特にその正統性と権力が人々の同意に由来するような民主主義は、個人が十分に理性的である、すなわち公共の場で討論し、責任ある方法で能力を行使できるという前提を置いている。もし、彼らが合理的な方法で討論できなければ、それが政策議論であろうが代表者の選出であろうが、彼らは実質的に参加していないことになってしまう。
 民主主義は、人々が適切な社会を目指して主体的・能動的に能力を発揮すること(agency)を求めるため、行為主体性(human agency)が守られなければならない。しかしこの行為主体性は、基本的な物質的ニーズが満たされていることを前提としており、富と所得の格差拡大はほとんど想定されていない。
 また民主主義は、人々の間に信頼関係があることを必要とする。しかし所得格差の拡大は、政治的な疎外を経験してシステムが公平でないと感じる底辺の人々を中心として、さまざまな集団の信頼関係を脅かすと言われている。ソーシャルキャピタルは社会を結びつける接着剤であるが、もし個人が経済的・政治的システムを不公平であると感じるならば、その接着剤はうまくいかずに、社会は機能していかないだろう。
 信頼関係のある国民は協調的になる傾向があり、かつ、信頼感を抱いた国民を有する政府は腐敗が少なく、紛争も減り、応答性が高まる傾向が見られる。


posted by GHQ/HOGO at 09:34| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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