2019年11月06日

「現代の貧困]が強まる固定化傾向!貧困の連鎖を断ち切れるのか?

 赤ちゃんの取り違えで、病院に対し裕福な家庭で育つはずだった60歳代の男性が訴訟を起こした。取り違え後に育てられた家庭では、男性が2歳の時に育ての父が亡くなり、母子世帯となった。男性は働きながら定時制高校を卒業するなど苦労を重ねたという。一方、実の両親は、経済的に恵まれ、教育にも熱心だった。判決では「高等教育を受ける機会を失わせて精神的な苦痛を与えた」として、病院に慰謝料などの支払を命じる判決が出された。
 家庭の成育環境が、子供の人生にいかに大きな影響を与えるものかもしれない。取り違えは許されないが、人生のスタートラインに大きな格差があることは、社会の課題として認識すべきだ。
 もちろん、家庭の成育環境がすべてを決めるわけではない。戦後、町工場を起こし、世界的企業に育てあげたある経営者は、「親が遺してくれた最大の財産は貧乏だった」と語った。この言葉の通り、自らの境遇を努力によって克服した人は少なくないのもまた事実である。また、程度の差こそあれ、誰もが何ら家の問題を抱えながら生きているのである。だから、人生のスタートラインが完全に平等ということもありえないことかもしれない。
 しかし「現代の貧困」は、昔に比べて個人の努力で克服できる余地が狭くなってきているのではないか。実際、スタートラインの格差は以前よりも大きく、貧困が固定化する傾向も出てきていることも確かだ。例えば、関西地方のある自治体では、生活保護受給世帯主の25%は、育った家庭も生活保護を受けていた。つまり、親から子へと貧困が連鎖していることになる。一方で、親子間の階層移動の研究によれば、親が上層のホワイトカラーであれば子供も同じ階層となる傾向が、1990年代後半以降、強まっているのだ。
 では、貧困世帯に属する子供はどの程度いるのだろか。厚生労働省の調査によれば、18歳未満人口のうち貧困世帯に属する人の割合(子供の貧困率)は16%を超えている。実に、子供の6人に1人以上が貧困世帯に属しているのである。
 また、世帯類型別に貧困率をみると、1人親世帯の貧困率が5割を超える高い水準で、先進国といわれる国の中でも断トツの1位なのである。シングルマザーの81%は働いているのに貧困率が高いのは、就労中のシングルマザーの5割強は非正規労働に従事しているからなのだ。
 では、この「貧困の連鎖」を断ち切るには、どうすべきなのか。少なくても親と子供それぞれへの支援が不可欠なのである。子供への支援としては、まずは公教育の充実が重要だ。公教育には、家庭の経済状況に関係なく、子供が潜在的能力を発揮できるように、いわばスタートラインをそろえる機能がある。この点、教育への公的支出割合を対GDP(国内総生産)比で国際比較すると、日本は比較可能なOECD(経済協力開発機構)30ヵ国中最下位なのだ。このため、日本では教育費に占める家計負担の割合が大きく、貧困層にとって酷な状況になっている。
 親への支援としては、経済的支援のみならず、総合相談や職業訓練、さらに保育所整備なども求められる。特に相談支援体制の整備は、シングルマザーの孤立を防ぐためにも重要である。だが、今の政府・官僚組織では、かなり難しいことかもしれない。
 さて、あまり知られていないことだが、すでに「子どもの貧困対策推進法」なるものが成立している。だが、形は整ったかに見えるものの、肝心の魂が抜け落ちている。これにより貧困の連鎖を断ち切って「未来への投資」にできるかははなはだ疑問である。


posted by GHQ/HOGO at 06:44| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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