2019年11月29日

貧困と紛争・テロとは関係があるのか?

 武力紛争やテロリズムと貧困との関係は複雑だ。今日の紛争の多くが貧困地域で起こっていることは事実である。しかし、貧しいから紛争が起こるのだ、とは言えないのではないか。アフリカには貧しい国が多く、紛争も数多く起こっているのだが、例えばタンザニアやブルキナファソなど、貧しくても大きな紛争を経験していない国はたくさんある。
 貧困がテロリズムの温床になる、という議論もしばしば耳にする。しかし、テロリズムの首謀者は必ずしも貧困層ではないのではないか。2001年の同時多発テロ事件を指導したオサマ・ビン・ラディンがサウジアラビアの裕福な家庭の出身であったことはよく知られている。
 この問題を考えるためには、今日の紛争やテロリズムがどのような性格のものなのかを理解する必要があるのではないか。今日の紛争は、ほとんどの場合国内紛争(内戦)だ。つまり、国家の統治のあり方をめぐって、突き詰めれば誰が国家権力を握るのかをめぐって、紛争が起こる。アフリカで典型的に見られることだが、植民地列強によって恣意的につくられた国家が独立したとき、国民の間には国家を運営していくための共有されたルールが欠如していることが少なくないのだ。そうしたなか、政治指導者の間で国家権力をめぐる争いが起きれば、権力闘争は容易に武力紛争へと発展してしまう。紛争は、国家統治の脆弱性に由来するのである。
 一般にテロリズムという手法が選択されるのは、正規戦では勝ち目がない相手に自分の存在を認めさせ、譲歩を引き出すためだ。今日最も深刻なテロリズムは、アルカーイダなどイスラーム急進主義によるものが多い。この種のテロリズムが伸張した理由も複雑だが、根幹にあるのは不正義の認識ではないだろうか。米国を中心とする国際社会の中東政策やヨーロッパにおける移民の処遇が、結果として多くの人々に不正義だと受け取られてしまったことが、この種のテロリズムの伸張を促したのではないか
 紛争やテロリズムに対処するため、国際社会は軍事、外交、開発という3つの方向から平和構築の政策を講じてきたのは確かだ。政策の手段として、抑止のための軍事力、政治交渉のための外交、そして人々の生活を改善するための開発がいずれも欠かせない。テロリズムをめぐる議論では、相手の暴力に引き摺られて、軍事的、懲罰的な措置に焦点が当たりがちなのだが、外交的な対応はもとより、国家統治のあり方や人々の生活向上、そして不正義と認識される政策の是正など、多面的なアプローチが必要なことを忘れてはならないのではないか。
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2019年11月28日

国民が声を上げなければ事態は変わらず、放置すればますます深刻に!

 「よく言われることですが、日本人は良くも悪くも権利意識が薄いと思います。しかし、教育や福祉の権利は主張することで獲得してきた歴史があるので、声高に主張しないと具現化していかないのではないでしょうか。また、ジェンダーの視点も足りていない。女性の活躍推進イコール眠っている労働力を掘り起こす、という文脈で語られますが、女性の社会進出によって家庭内で行われてきた“無償のケアワーク”、つまり家事や育児の有償化も考えなくてはいけません」
 たとえば、一部の女性は高賃金の管理職として活躍しているが、その背後には公的な保育園やサービスが不可欠となる。しかし、保育園の不足が問題化したように社会のサポートは現実に対応できておらず、結局は個人がお金を使ってベビーシッターなりを雇うことになる。
 さらに言えば、こうした職業はやはり女性が就いている場合が多く、彼女たちの平均的な賃金や労働環境に目を向けると、果たして適正な賃金が支払われているのか、保育士の賃金水準の低さを鑑みると疑問を感じざるを得ない。
 100年単位の長期スパンで歴史を振り返ると貧困問題は、対策を講じずに放置すればどんどん悪化し、格差は広がり続けることが分かっている。豊かな日本はいまや昔で、このまま進めば格差は拡大していく一方だ。
 ちなみに、オックスファムでは7月17日、世界各国の上記3側面の格差対策を評価する「格差縮小コミットメント指数(CRIインデックス)」を発表し、152ヵ国の取り組みランキングを公開した。「こうしたデータも国際的な格差政策の比較の参考にしてほしい」
 政府や行政の不作為を甘んじて受け入れるのではなく、貧困に陥らないための権利を得るために国民1人ひとりが自ら声を上げなければ、取り返しのつかない事態が待っている。
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2019年11月27日

貧困国から脱却するために必要な対策とは?

 イギリスほど貧困地域が明確でなく、社会全体に薄く広がっている日本では、前の費に書いた手法をそのまま導入することは難しいという指摘もある。全国民が平等に、最低限の教育や保障にアクセスする権利を認められるようにならなければ、格差の拡大は止められない。
 国際NGO「オックスファム」の日本事務局次長・森下麻衣子氏は、「日本人は良くも悪くも権利意識が薄い」と言う。しかし教育や福祉の権利は、国民が声を上げていかないことには、充実していかない
 「とくに子供は親の収入によって左右されることなく、教育や社会保障にアクセスできることが大事だと思っています。ただ、現状の日本では、生活保護を受けるための所得制限は厳しい基準に定められています。また、教育へ注がれる公費もOECD諸国の中ではかなり低い水準です」
 また公的資金による貧困対策に欠かせないのが財源の確保。税の再配分を正常に機能させるための対策も急がれる。オックスファムでは、貧困国からの脱却に有効な策として、大きく3つのポイントを掲げている。
 「1つ目はタックスヘイブンへの対策です。所得税を累進的にしていくことも1つの手段だと考えられますが、現状、多国籍企業や富裕層からの税を取りはぐれていることで、税の再分配が機能していないといえるでしょう。さらに法人税も引き下げ競争が進み、日本ももれなく税収が低くなってきています。まずは、ここにテコ入れをすることです」
 2つ目は賃金格差の問題だ。
 「日本では、まだまだジェンダーの格差は大きいですが、正規雇用と非正規雇用の格差などもなくしていくことです。そして、3つ目は公的資金を使って、教育や保健サービスを政府がきちんと提供していくことです」
 ただし、一見有効な対策も、結果的に的外れになるという懸念もあるという。
 「外国企業から投資を呼び込んで地域経済を活性化させるために、日本でも経済特区が設けられています。途上国でも同じような事例はありますが、実際に貧困層の削減につながるかというと必ずしもそうはなりません。誰が経済成長の恩恵を受けているかというと、一部の企業や関係者だけで、もともとその土地に住んでいた人たちは、低賃金の日雇い労働を強いられるなど、悪い雇用条件に苦しむこともあります。さまざまな途上国では実際、こうした取り組みで、逆に地域住民の生活水準が落ちてしまっている。日本も本質的な構造は変わらないのではないかと感じます」
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2019年11月26日

“貧困先進国”の取り組みには何を学べるか?

 日本よりも貧困が進んでいる国、いわゆる「貧困先進国」のさまざまな施策からは何を学べるのか。
 世界における相対的貧困率のワースト国はメキシコ。続いてイスラエル、米国、トルコ、チリ、エストニアとなっている。いわば“貧困先進国”とも言えるこれらの国々は、貧困層への対策や保障をどのように行っているのか。格差が広がり続ける日本にも応用できる取り組みはあるだろうか。
 たとえばメキシコ政府は、質の高い雇用と経済成長を政策に掲げ、教育や医療保険に力を入れる社会福祉国家の確立を目指してきた。また、貧困地域に照準を絞ってインフラ整備も進めている。
 具体的な事例として挙げられるのは、世界に先駆けて貧困層をターゲットにした条件付き現金給付(Conditional Cash Transfers、以下CCT)プログラムである『プログレサ』。厳密な資力調査を行い、本当に支援を必要としている家庭を見極めて受給資格を与えるというもので、子どもの通学や定期健康診断の受診を義務付けることが条件に組み込まれたことも画期的だったと言われる。
 こうした施策の有効性について、世界90ヵ国以上で貧困問題や格差社会の解消に取り組む国際NGO「オックスファム」の日本事務局次長・森下麻衣子氏はこう言う。
 「確かにこうしたメキシコの政策は注目に値しますが、ただし現状では開発が遅れている地域も存在しますし、CCT自体も政策として評価が分かれています。かたやアメリカでは、『機会の平等は認める』が『結果の平等は認めてない』という方向性は変わっていません。そのため、基本的にお金がないと健康・教育・安全を手に入れられないような状態です」
 いずれも抜本的な改革には至っていないようだ。そんな中、貧困対策として話題となったのが、イギリスのブレア政権が1999年から取り組んだ政策だ。「地域再生」「コミュニティのためのニューディール政策(NDC)」を掲げ、住宅整備や教育、就労支援、犯罪対策に関して特に格差の激しい地域に、およそ3400億円を集中投下している。
 なかでも効果的だったとされているのが子供の貧困対策で、貧困の児童数に応じて、学校に補助金を支出する「児童特別補助」や、子供が18歳になってから教育や職業訓練に使うことができる「児童信託基金」、低所得世帯に現金を給付する「タックスクレジット」などの政策を実行。この結果、2005年には貧困世帯の子供は、およそ80万人も減少したという。
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2019年11月25日

生活苦から脱出するためにできることは? 2

 (3) 借金を減らすためにできること(債務整理)
 生活苦から抜け出す目途が立たないくらいの借金を抱えている場合は、債務整理することを勧めたい。債務整理は合法的に借金を整理する制度で、手続が認められれば借金を減額、または全額免除してもらうことができる。債務整理=破産と思いがちだが、自己破産以外にも任意整理、個人再生があり、状況に合わせて適切な制度を選択する。それぞれの制度の特徴は以下の通り。
 @ 任意整理
 任意整理は、債権者と裁判外で個別に交渉し、将来の利息を免除・長期の分割払いを認めてもらう制度。 原則元金のカットはないが、サラ金に毎月利息だけ払っているような返済状況であれば、任意整理をするだけでも随分楽になる。裁判所を介さずに手続できるので費用が安く済み、家族にも内緒で手続することも可能。
 A 個人再生
 個人再生は借金をおよそ1/5程度まで減額可能(債権総額や保有している資産額により変わってくる)で、額の大きい借金を抱えている人に適した制度。手続自体は複雑だが、自己破産のようにマイホームなどの財産を処分する必要が原則としてないので、住宅を守りたい人には特におすすめである。
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2019年11月24日

生活苦から脱出するためにできることは? 1

 生活苦から脱出できることは、支出を減らすこと、収入を増やすこと、借金を減らすことのいずれかだろう。
 (1) 支出を減らすためにできること
 生活苦だと思ったら、現在の生活費の収支の見直しに取り掛かかろう。よくよく見直しをすると、意外に無駄な出費があることに気が付く。交際費や外食代など、削れる支出は極力減らし、お金があれば少しでも貯蓄に回すように心がけよう。
 また、生活が苦しいと言っている人の中には、身の丈に合わない生活をしているケースも少なくありません。 十分な収入がないのにも関わらず、流行りのレストランや高級エステに行き、借金してでも友達と海外旅行に行ってしまうこともあるという。思い当たる節がある場合は、できるだけ生活をシンプルにしよょう。
 とはいえ、節約をするにも限度はあるので、生活の工夫をすることで支出を減らすことを考えるといいかもしれない。 毎月支払をしている携帯代は適正価格か、使えるクーポンや割引券はフル活用しているかなど、生活に関する様々なことを見直してみることすすめたい。
 (2) 収入を増やすためにできること
 収入を増やすためにできることは、第一には正社員を目指すこと。正社員は福利厚生も充実し、病気や失業の際も手当てがでるので安心感が違ってくる。また、年2回支給されるボーナスの存在も大きい。定期的にまとまったお金が入れば生活苦から脱出することも可能である。
 正社員になれない、正社員で働ける状態にない、という場合は、副業をすることを考えよう。 現在はインターネットも発達し、誰でも簡単に副業ができる時代。空いた時間にできる仕事は、介護などの事情がある人にはすすめたい。副業のポイントは、とにかく無理をしないこと。お金がないからと体を壊すような働き方をしたり、夜の仕事に手を出したりすると長続きしない。その後、自分が心身ともに病んでしまう可能性が高く、より深刻な生活苦に陥るリスクがある。
 もし、できる範囲で働いても生活苦であるなら、思い切って親族や行政機関に相談をしてみよう。 病気や失業などで働けない状況にある場合は、生活保護を受給することも可能だ。
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2019年11月23日

日本における生活苦の実情とその原因は?

 かつての日本社会には「一億総中流」という言葉があり、少なくとも高度経済成長期からバブル崩壊までは、「自分が頑張れば中流の生活はできる」と信じられていた。ここで言う中流とは、家や車を持ち、人並みに家族を養い子供の進学もさせられる程度の余裕がある生活である。しかし、その後のバブル崩壊、リーマンショックなどを経て、中流家庭は大幅に減少し、今の日本社会では高所得 or 低所得の二極化が進んでいる。
 厚生労働省の平成28年の「国民生活基礎調査」によると、相対的貧困の状態にある人は全体の15.7%にのぼることが判明。実に日本人の約6人に1人が低所得=下流という実態が浮かび上がった。所得の二極化は低所得者の増加という面が強く、現在「中流」でも、今の社会ではちょっとしたアクシデントをきっかけに、誰もが下流に転落するリスクがある。
 生活苦に陥る原因はさまざまである。いくら計画的に生活していても、生きている以上突発的なトラブルや出費はつきもの。今の日本社会では、以下のきっかけがあれば、いとも簡単に下流に転落してしまう。
 ・リストラ
 特に40~50代になってリストラされると、仕事を選んでいる場合ではなく、待遇は落ちても雇ってくれるところで働くのみとなり、収入大幅ダウンも受け入れざるを得ない。
 ・非正規雇用
 20〜40代で生活苦を感じている人は、非正規雇用が圧倒的多数。正社員と同じだけ働いても賃金は低く、ボーナスや社会保障もない。
 ・病気
  近年特に多いのはうつ病による休職。仕事のストレスでうつ病になり、そのまま退職、資産を使い果たしてしまうパターンだ。
 ・離婚
  特に専業主婦やパートで働いていた女性にとっては、離婚が生活苦への入り口となってしまうケースは少なくない。低賃金のパートやアルバイトしか見つからないことも多々あるだろう。
 ・介護
  介護は先が見えない分、費用の目途が立たないのが特徴。十分な蓄えがある人でも、介護をきっかけに貧困層になってしまうことはよくある話だ。
 ・浪費・ギャンブル
 自己破産するほど困っている人でも、浪費やギャンブルがきっかけというのは全体の10%で意外と割合は低い。しかし、依存症も含まれているので、一概に自己責任とまでは言えない。
 このように、生活苦の原因はさまざまだが、現在の状況から抜け出すにはどうしたらいいのか。
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2019年11月20日

日本は格差が激しい!

 アメリカの場合、すべての勤労者が納めた年金保険料はすべて一元的に社会保障信託基金にプールされ、保険料の支払総額・期間・年齢が同じなら、基本的に受給額も同じレベルである。むしろ納入保険料の低い低所得者の受給額は、高所得者より納入保険料比率にすれば有利となっている。
 それに対し日本は年金組合が公務員・正社員・それ以外に分かれ、しかもそれが業界や地域によって分かれているので、相互の格差が激しい。もともと日本の年金は、軍人や公務員の恩給から始まっており、国に貢献した者への褒美ではあっても、貧困対策ではなかった。戦争中に軍需産業を中心に正社員に厚生年金が広まり、1961年にそれ以外の層、たとえば農民や自営業者に国民年金が適用されたのである。国民年金では生活できないが、農民や自営業者は老齢になっても働けるし、持ち家で後継ぎ息子が面倒を見てくれる、ということだったようだ。
 また最低賃金は、70年代以降に主婦パートが増えると相対的に低下した。家計補助だから低くても問題ないというわけである。さらに85年の制度改正で、専業主婦でも年収が130万円以下であれば、夫が保険料を納入していれば妻にも厚生年金が適用されることになった。年間130万円以上稼ぐと、配偶者控除がなくなり、保険料を納めなければならない。こうして、最低賃金が低いほうがむしろ好都合な専業主婦層が、政策的に生み出されることになった。
 それに対し、生活保護は占領軍の支持で設けられたものだ。受給額は年金や最低賃金とは関係なく、憲法25条で保障された「健康で文化的な生活」を営める程度に設定された。こうして、全体の制度設計を考えずに制度をつぎはぎした結果、年金<最低賃金<生活保護という図式が成立したわけだ。
 さらに厚生年金組合でも、タクシーや繊維など不振業界では、業界縮小で組合の存続が危ぶまれ、税金の投入でようやく持たせている。こうした不振組合の資金運営が、AIJなどの破綻事件を起こした。
 こうなれば、最低賃金と国民年金を生活保護以上に上げ、専業主婦優遇制度をやめ、各種の年金を一元化するしかない。厚生年金は下がるが、一部の優良組合以外の不振組合はむしろ安定化する。それは識者みなが指摘することなのだが、その方向への「一体改革」は進んでいない。これが解決しない限り、「生活保護問題」は今後も深刻化するだろう。
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2019年11月19日

「絶対的な最低生活費」から「一般国民との比較」へ

 生活扶助は、食事、衣類、光熱水道費をはじめ、通信費、交通費、教養費、交際費、耐久財の買い替えなどにあてるもの(住宅、教育、医療、介護などは別の扶助)。
 では、その基準をどうやって決めるのか。時代とともに国民の生活水準は変わり、最低限度の生活の水準も変化する。歴史的には、改定方式は以下のように変わってきた。絶対的な最低生活費を算出する方式から、一般国民と比較する相対的な決め方に移ってきたことがうかがえる。
 <生活扶助基準の改定方式の変遷>
【標準生計費方式】(1946〜47年)=当時の経済安定本部が定めた世帯人員別の標準生計費をもとに算出する
【マーケットバスケット方式】(48〜60年)=最低生活に必要な食費、衣類、家具、入浴料といった個々の品目を一つずつ積み上げて算出する
【エンゲル方式】(61〜64年)=必要な栄養量を満たす食品の価格を積み上げる。別に低所得世帯の実態調査からエンゲル係数(食費の割合)を求め、それから逆算して必要な総生活費を算出する
【格差縮小方式】(65〜83年)=一般国民の消費水準の伸び率以上に生活扶助基準を引き上げ、一般世帯と保護世帯の消費水準の格差を縮小させていく
【水準均衡方式】(84年〜)=従来の生活扶助基準が一般国民の消費実態とのバランス上、ほぼ妥当な水準に達していたと見たうえで、一般国民の消費実態や消費の動向を踏まえて調整を図る
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2019年11月18日

働かない受給者が増えている!?

 近年の「生活保護叩き」の先入観とは異なり、生活保護の支給率が低く、不正受給も少ないことは、多少とも知識のある人は誰でも知っている。日本の生活保護は、1980年代から窓口レベルで受給規制を厳しくしていたため、貧困者に対する受給者の比率(捕捉率)は約2割である。スウェーデンは82%、フランスは91%、ドイツは65%だ。不正受給率は金額ベースで0.38%。受給世帯は高齢者世帯が43%で最多、さらに障害・疾病者世帯が33%、母子世帯が8%である(いずれも2010年の数字)。
 とはいえ受給者は95年の約88万人から、2012年には210万人を超えた。受給世帯も「その他」、つまり稼働年齢で障害者でも母子家庭でもない世帯が急増し、2010年には前年比32%増の16%に至った。「働かない受給者が増えている」という見方も、傾向としては間違ってはいない。
 これに対し貧困対策の運動関係者は、それは景気の悪化のため失業者や貧困者が増加しているためであり、生活保護受給が悪いのではないと主張する。それも正しくはあるのだが、ここで踏まえておくべきなのは、前提としての制度設計である。
 そもそも日本では、最低賃金>年金>生活保護という、社会保障の基本が成立していない。より正確には、公務員や大企業正社員は賃金>年金>生活保護なのだが、その枠外の人間は生活保護>最低賃金>年金なのだ。公務員や正社員が加入する共済年金や厚生年金はたいてい月額20万円ほどになるが、国民年金は満額でも6万円あまりである。前者は自分で納入する以外に、勤務先が保険料を納めてくれるからだ。これで高齢になったら、生活保護に流れ込まないほうがおかしい。雑誌『G2』11号で、アメリカの社会保障専門家は、こうコメントしている。
 「日本で生活保護受給者が増えているのは怠け者が多いからではなく、社会保障制度設計が悪いからです。日本の年金制度は上(高所得者)にやさしく、下(低所得者)に厳しい仕組みになっています。これではどんどん生活保護に行ってしまう」
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3分の2は給付ダウン

 制度の見直しによって、生活扶助の基準額が具体的にどう変わるのか。生活保護制度では、物価水準の違いを考慮して市町村ごとに6種類の級地に分けているが、厚労省は、代表として3種類の級地の試算を示している。
 大まかに見ると、大都市部、高齢単身者、子供の多い世帯はもっぱらマイナスになり、地方の郡部、夫婦だけの世帯、子供1人の世帯ではプラスの傾向。それで全体としてダウンするのは、生活保護世帯は大都市圏に多く、しかも高齢単身者が多いからなのだ。厚労省の推計によると、生活扶助額が上がる世帯は26%、変わらない世帯が8%、下がる世帯が67%となっている。
 全体の金額で影響を見ると、3段階の見直しが完了した段階で、生活扶助の本体部分の国負担額は年間でマイナス180億円、子供のいる世帯への加算額の見直しがプラス20億円。差し引きマイナス160億円となっている。18年度予算の概算要求で生活扶助の国負担見込み額は9056億円なので、それと比べると1.8%のダウン。生活保護費の国の負担割合は4分の3だから、実際の生活扶助費の総額は年間213億円のマイナスになる。それだけでなく、基準が下がると保護対象となる世帯が減るので、削減額はさらに大きくなる。
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2019年11月17日

低所得化に合わせて基準を下げてよいのか?

 生活保護の8種類の扶助のうち、主たる生活費である生活扶助の基準の見直しを厚生労働省が昨年12月に決めた。2018年10月から20年10月にかけ、3段階に分けて実施される。
 見直しの影響は、世帯の人数、年齢構成、居住地域によって異なり、今より基準額が増える世帯もあるが、減る世帯のほうがはるかに多く、最大では5%下がる。生活扶助の総額で見ると、1.8%のマイナスである。13年8月から15年4月にかけて平均7.3%(最大10%)の大幅引き下げが行われたのに続くダウンになる。
 なぜ、そうしたのか。簡単に言うと、低所得層(消費支出が最下位10%の世帯)の消費水準に合わせて基準を見直した結果なのだ。国民の生活水準が全般に低下してきた中で、貧しい層の動向に合わせるというやり方で、「健康で文化的な最低限度の生活」は守られるのだろうか。
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2019年11月16日

生活保護 「水際作戦」許されない 参院決算委 共産党議員が調査要求

 日本共産党の議員が参院決算委員会で、「水際作戦」など行政の不適切な対応により、生活保護の申請を認めない「申請権の侵害」が横行している問題について質問した。生活保護費全体に占める不正受給の割合がわずか0.5%程度であることを確認し、「保護を必要とする人が利用できなくなるような運用は正していかなければならない」と迫った。
 議員は、大阪府枚方市で2011年に明らかになった不正受給184件のうち収入の無申告・過少申告が103件あり、そのうち高校生のアルバイトの無申告が4分の1にあたる27件だったことを紹介。「高校生自身がアルバイトをしていることを親に黙っており、世帯主が知らなかったということや、そもそも高校生のアルバイト収入を申告しなければならないことを知らなかったという人も少なくない」と指摘し、ケースワーカーの人員を増やし、個々の実態に即して柔軟に対応するよう求めた。
 議員は、京都府舞鶴市に住む50代の男性が、生活保護の申請のため3度も市役所に出向き、申請の意思を明確にしたにもかかわらず、市側が申請させなかった事例を提示。同市が面接相談記録に申請意思確認欄を設けていなかったことを指摘し、「水際作戦」を許さないためにも各地の実態を調査し、確認欄の設置を徹底させるよう求めた。
 田村憲久厚労相は「相談に来られた方が保護の適用にならない場合もある」として、本人の意思を確認する前に、保護の要件などの説明を徹底させる考えを示した。では具体的に保護の適応にならない場合とはどんな場合なのか。この辺りがいつも曖昧である。
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2019年11月15日

増する貧困高齢者と生活保護費の簡易推計

 財政が担う機能の1つに「所得再分配」機能があるが、財政が破綻すれば、この最も重要な「所得再分配」機能が著しく低下してしまうことになる。憲法25条では、「(1)すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。 (2)国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」とし、最低限のセーフティーネットとして生活保護を張っているが、そのときの急激な歳出削減などで最も被害を受けるのは、このような生活保護を受けている「弱い立場」の国民(その両親をもつ子供も含む)であろう。そのような事態にけっして陥らないよう、最悪の状況も想定しつつ、いまから社会保障・税一体改革をしっかり進めて、財政を再建しておく必要がある。
 一般的に「生活保護」というと、他人事のように思われがちだが、データを精査すると、貧困高齢者等が急増している。例えば厚労省「被保護者調査」によると、2015年において、65歳以上の高齢者は約3380万人いたが、そのうち2.9%の約97万人が生活保護の受給者である。すなわち、100人の高齢者のうち3人が生活保護を受ける貧困高齢者である。1996年では、約1900万人の高齢者のうち、1.5%の約29万人しか生活保護を受給していなかったので、貧困高齢者は毎年3.5万人の勢いで増え、20年間で約70万人も増加したことを意味する。
 高齢者の貧困化が進んでいる背景には、低年金・無年金が関係していることは明らかだが、50歳代の約5割が年金未納であり、今後も増加する可能性が高い。
 では、今後、貧困高齢者はどう推移するのか。正確な予測は難しいため、一定の前提を置き、簡易推計を行ってみよう。まず一つは「高リスクケース」である。65歳以上高齢者の「保護率」(65歳以上人口のうち生活保護の受給者が占める割合)は、1996年の1.5%から2015年で2.9%に上昇しており、その上昇トレンドが今後も継続するというケースである。
 もう1つのケースは「低リスクケース」で、65歳以上高齢者の「保護率」が2015年の値と変わらずに一定で推移するというケースである。
 以上の前提の下で、国立社会保障・人口問題研究所の「将来人口推計」(平成29年推計、出生中位・死亡中位)を利用し、65歳以上の被保護人員(生活保護を受給する高齢者)の予測したものが、上記の図1「貧困高齢者数の予測と生活保護費の簡易推計」である。
 低リスクケースでは、65歳以上の被保護人員は、2015年の約97万人から2050年に約110万人に微増するだけだが、高リスクケースでは2048年に200万人を突破し、2065年には215万人にも急増する。2065年の65歳以上人口は約3380万人であるから、215万人は6.4%で、100人の高齢者のうち6人が生活保護を受けている状況を意味する。
 しかも、現実はもっと厳しい可能性もある。現在、現役世代の3人に1人は非正規労働者であり、65歳未満の「保護率」(65歳未満人口のうち生活保護の受給者が占める割合)についても、1996年の0.5%から2015年で1.2%に上昇している。このため、65歳以上の高齢者と同様、65歳未満についても2つのケースが考えられる。
 まず1つは「高リスクケース」で、65歳未満の保護率の上昇トレンドが今後も継続するケースである。もう1つは「低リスクケース」で、65歳未満の「保護率」が2015年の値と変わらずに一定で推移するケースである。このうち、高リスクケースでは、2015年の約115万人であった「64歳未満の被保護人員」は、2030年に150万人を突破し、2065年には176万人にも急増する。2065年の64歳未満人口は約5400万人であるから、176万人は3%で、100人の64歳未満人口のうち3人が生活保護を受けている状況を意味する。
 では、生活保護費はどう推移するか。2017年度における生活保護費の総額は約3.8兆円で、約214万人が生活保護を受給している。1人当たり平均の生活保護受給額(名目)が一定で変わらないという前提の下、既述の「高リスクケース」と「低リスクケース」で生活保護費の総額を簡易推計したものでは、低リスクケースでは2025年頃までは概ね4兆円弱であるものの、それ以降では緩やかに減少し、2065年には2.9兆円になる。だが、高リスクケースでは、2029年に5兆円を突破し、2067年には6.7兆円にまで増加する。
 なお、この簡易推計は、年金のマクロ経済スライドの影響は一切考慮していない。年金のマクロ経済スライドは、2015年度に一度しか発動されていないが、これが継続的に発動されれば、低年金の高齢者が増加する可能性がある。年金のマクロ経済スライドは年金財政の持続可能性を高めるために必要な措置で早急に実施することが望ましいが、将来の年金分布を予測しながら、年金制度・生活保護との役割分担やその財源のあり方を含め、社会保障改革の「哲学」を再検討する必要はないだろうか。
 その上で、財政の再建をしっかり進める必要がある。財政再建の本当の目的は、財政の持続可能性のためにあるのではなく、本当に困った将来の人々を救済できる余力を残すことこそにある。
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2019年11月14日

貧困層の拡大―格差広げる所得再分配

 日本で貧困といえば、1980年代は高齢者の問題だったが、今は子供の貧困が深刻だ。背景の1つに、親世代の雇用環境の悪化がある。15〜24歳の非正規労働者の割合は90年は男女とも2割だったが、2010年は男性の4割、女性の5割に上っている。新卒者がなかなか正社員になれていない。90年代半ばから政府が進めた規制緩和で、非正規労働者が増加したことが原因だ。
 さらに「非正規=低賃金」という日本固有の構図がある。他の先進国は同じ仕事ならば正規、非正規の時間給の差は15%程度だが、日本は30〜40%。しかも、日本の最低賃金は時給798円(2016年度の平均)で、主な先進国19ヵ国で最低レベルだ。
 この原因は「男が外で稼ぎ、女は家を守る」という性別役割分業を基にした制度設計にある。
 女性の労働に「103万円の壁」を作り出した配偶者控除や、「130万円の壁」を設けた年金の第3号被保険者制度や健康保険制度が、「働くのは損」と労働参加をゆがめ、家計補助のパートで良しとし、女性の低賃金労働を許す要因となっている。「1人親の8割が働いているのに、5割が貧困」という理不尽を生む要因となっている。
 もう1つ、本来は高所得層から税や社会保険料を取り、年金や手当、生活保護などの社会保障給付で低所得層に還元する「所得再分配」が、逆に貧困の拡大を招いている現実がある。
 政府による所得再分配の前と後で、貧困率がどれくらい下がったかを示す「貧困削減率」という指標がある。経済協力開発機構(OECD)の09年の分析では、各国は再分配後に貧困率を20〜80%削減しているが、日本だけが唯一、共働き世帯や1人親世帯で、貧困率を8%増加させていた。
 所得再分配が正常に機能していないのは、高所得層に優しく、低所得層に厳しい税制が大きな原因だ。80年代は70%だった所得税の最高税率を40%前後まで下げた。90年代後半から法人税も繰り返し下げ、年間10兆〜20兆円規模の税収を放棄する一方で、消費税や社会保険料の引き上げで低所得者に負担を強いてきた。日本はOECD諸国の中で、税の累進性が最低レベルだ。
 こうして見ると、子供の貧困は政府がつくり出してきたと言える。
 正規、非正規労働者の賃金格差をなくすため、「同一価値労働同一賃金」の原則を徹底し、最低賃金を上げる。配偶者控除のような高所得層を優遇する制度は撤廃する。所得税の最高税率を引き上げる。子供の貧困を解決するため、政府が取るべきはこうした政策だ。
 経済協力開発機構(OECD)の調査では、働いている1人親の相対的貧困率は日本が突出して高く、約60%。子供の貧困率が日本より高い米国でも約35%で、デンマークなどの北欧諸国は3〜5%だ。1人で家計を支える親の賃金の低さや支援の乏しさを物語る。
 所得再分配政策が正常に機能しているかどうかを示す「子供の貧困削減率」は主要18ヵ国中、日本は唯一のマイナス。1980年代から一貫して再分配後に貧困率が上がっている。イタリアなども80年代はマイナスだったが、プラスに改善した。
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2019年11月13日

日本人の貧困化―その背景と政治的意味を考える―

 最近の日本社会の生活実態を表す言葉に、「子供の貧困」と「下流老人」がある。いずれも、日本社会の貧困を象徴する言葉だ。これらの言葉は、日本社会が本当のところ、豊かどころか貧しいのではないか、という状態を示唆している。とりわけ、子供も老人も貧困ということであれば、人生の始めと終わりの部分に貧困が蔓延しているということになる。しかし、貧困は世代を超えて現代日本の深刻な問題の1つなのである。
 マスメディアなどでは、今年の企業は巨額の利益を計上している、あるいは株価が上昇していると囃し立てていますが、それが国民一般の生活実態を反映しているとはとうてい思えない。それが証拠に、下の表から分かるように、生活保護受給者数と生活保護世帯数はピーク時(1990年)が底で、最近ではその2倍以上に達しているのだ。
              生活保護受給者数   生活保護世帯数
1970(昭和45年)          1,344,306      658,277
1990(平成2年)          1,014,842      623,755
2014(平成26年2月)        2,166,381     1,598,818
2015(平成27年7月 推計)     2,168,000     1,625,000
出所
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/051604.pdf (2015.4.10参照)  第17回社会保障審議会生活保護基準部会 平成26年5月16日
 つまり、自力で生活できない貧困層が確実に増えつつあることを示している。「アベノミクス」で経済が好調なはずなのに、なぜなのか。まず、企業業績がいいといっても、それは一部上場の大企業、とりわけ輸出中心の企業のことで、それらの企業でさえ、得た利益を労働者の賃金の上昇に向けるのではなく、内部留保としてため込んでしまっているのだ。
 ところが、企業は増益分をせっせと内部留保し、今ではその額は300兆円をはるかに超える額に達している。 大企業による内部留保資金はしばしば、富裕層の増加を見込む東南アジアの企業買収などに向けられているようだ。しかし、中小企業は、まったく別で、円安政策の影響もあって、原材料費の高騰が経営を圧迫している。 東京商工リサーチの調べでは、赤字率(22.5)も減益企業率(45.5%)も上昇しており、経営の苦しさを表している。
  安倍晋三首相は、「戦後最大の経済と国民生活の豊かさ」を掲げ、「アベノミクス」を導入した。 内閣府の試算によると、政権が掲げる「名目3%、実質2%以上の高成長」を続けると、20年度に名目GDPが594兆円に達するという。ここ20年、日本の名目成長率が3%を超えた年は一度もない。それどころか、せいぜい潜在成長率が1%未満といわれる今の日本では、きわめて高い目標で、多くのエコノミストは、上記の目標はまったく非現実的だ。アベノミクスは企業を強くしたが、その恩恵が家計までは届かず、逆に円安による物価高が家計に負担になっているのだ。
  一時盛んに宣伝された、大企業の業績が向上すれば、やがて広く国民全体に滴り落ちるという「トリクルダウン」は起きていない。この大きな理由は、相対的に賃金が低い非正社員(派遣社員、契約社員、嘱託、パート、アルバイトなど)の増加に歯止めがかからないからだ。 首相は会見で「アベノミクスで雇用は100万人以上増えた」と胸を張ったものの、政権発足前の12年春からの3年間で、正社員は56万人減る一方、 非正社員は178万人も増えたのだ。 収入も減少している。民間の平均給与は、ピーク時の1997年の467万円から、2013年には63万円も減少し、令和1年には100万円近く減少したのだ。しかも、正社員と非正規との賃金格差は非常に大きく、国税庁の調べでは、2014年の実績で、正規社員の平均年収に対して非正規(派遣を含む)社員は3分の1ほどである。
  非正規雇用の場合、退職金はほとんどなく、厚生年金、健康保険、雇用保険などの面でも非常に不利な状況だ。 改正労働者派遣法とならんで、労働者を解雇し、裁判で会社側が敗訴しても解決金によって解雇できる制度や、いわゆる「残業ゼロ法案」を目論む政府と企業は、一般の労働者の地位を不安定化させ、所得水準を下げようとしているとさえ見える。この傾向は、今後もさらに進んでゆくと思われる。というのも、改正労働者派遣法の施行で、企業は働く人を代えれば派遣社員をずっと受け入れられるようになるため、正社員を派遣に置き換える動きが加速すると考えられるからだ。
 こうした、労働者に対する不利な条件が次々と押し付けられる一方で、企業に対する法人税の実効税率は現在、34・62%(標準税率)ですが、段階的に20%台に引き下げる。 税率の引き下げで税収が減る分は、ため込んだ内部留保からではなく、赤字の企業でも事業規模などに応じてかかる「外形標準課税」を強化するなどして、段階的に穴埋めする、としている。この措置で、大きな影響を受けるのは、赤字を抱える多くの中小企業と、そこで働く労働者だ。安倍内閣は、大スポンサーである経団連に加盟する大企業を優遇し、中小企業や一般の労働者には非常に過酷な負担を強いている。その上、政府は貧しい人からも消費税を10%に引き上げたのだ。
 これに対して、いわゆる「軽減税率」の適用範囲を酒や外食を除くすべての食料品に適用する案が浮上していますが、これは実に国民をバカにした話だ。かつて日本人は「一億総中流」と言われたが、近年は、ごく一部の恵まれた人たちを除いて、中流から下方へと転落する人が増えている。生活保護受給者とその世帯の増加は、このことをはっきりと示している。この点について内橋克人氏は、実に鋭い指摘をしている。つまり、彼は安倍政権の本質は貧困層を広げる点にあるのではないか、と疑っている。というのも、国民が日々の生活に困窮すればするほど、深く政治や経済政策について考える余裕がなくなり、政府にとって組みしやすくなるからだ。 実際、格差や貧困を助長すらしている現政権の支持率は、依然として高い水準を保っている。その秘密にたいして内橋氏は次のような鋭い分析を加えています。
 「長きにわたる経済の停滞により、ただでさえ貧困層は増えている。そうした中で、株価などうわべの数字を信じ込む人が多くなっているのではないか。また『不安を持つとお上を頼る』という日本人の国民性も影響している。アベノミクスが、一般の国民を豊かにする可能性が、現実問題として非常に少ないことは、これまでみた通りです。むしろ格差は広がり貧困が浸透していることの方が事実に近いと思われます。しかし、日本人には、貧しくなればなるほど、将来の生活に不安を持てば持つほど、政府に対する批判的な姿勢は薄れ、少しでも経済が良くなるような幻想を与える言葉を信じたがる傾向にある」というのが内橋氏の主張だ。
 アベノミクスの失敗、したがって貧困の浸透は、憲法改正や集団的自衛権の行使などに対する批判を弱める可能性がある。この意味では、アベノミクスの経済的失敗は、政治的には安倍政権の思い通りということになる。 安倍政権が、政治的野心を達成するために、意図的に経済的な失敗を画策したとは思いたくないが、結果的には、そのシナリオに沿って物事が進行し ているのではないか。
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2019年11月11日

一人親世帯の貧困率は50%で世界トップクラス

全世帯の格差・貧困率の動向を見てきたが、ここでは世代別の貧困の課題を見てみよう。まず子供の格差・貧困であるが、これは大人の貧困率の上昇とともに上昇傾向にある。日本の子どもの貧困率は16%であり、先進国でも上位にある。また特に一人親世帯の貧困率は50%であり、先進国でもトップクラスになっている。こうした貧困が子供に与える影響については、教育水準、健康面で明らかにされている。
教育面については、親の所得階層によって基礎科目の成績で差がでていることや、大学などのへ進学率に差がでていることにより、所得格差と学力、進学機会の格差の関係が明らかになっている。またさまざまなデータが子供の貧困と貧困の世代間連鎖を明らかにしている。たとえば、少年院における貧困世帯の出身者の率の高さ、生活保護受給世帯出身の子どもが成人後、自らも生活保護受給になる確率が高いこと、養護施設出身の子供が成人後に生活保護を受ける割合も高いことなどが明らかにされている。
次に若年者・現役世代の格差・貧困を見てみよう。90年代半ばから非正規雇用が拡大し、特に不本意ながら非正規労働者にならざるを得ないという若い世代の増加は、格差・貧困率の上昇、未婚率の上昇の重要な原因になっている。また学校、進学、就職・転職の失敗などをきっかけとする若い世代の引きこもりの増加が大きな問題になっている。
高齢者の格差・貧困の主要因は、低い年金や無年金である。被用者は厚生年金、非被用者(自営業、無職、非正規労働者)は国民年金と加入する年金が分立している日本では、国民年金(基礎年金)のみの高齢者は850万人程度おり、その平均年金額 (月額) は5.5万円であり、生活扶助基準を大きく下回る。また2015年度から初めてスタートしたマクロ経済スライドによって、基礎年金の実質水準は今後30年間にわたり約30%程度低下するとされている。今後の高齢者数の増大も考慮すると、膨大な貧困高齢者が発生する可能性もある。
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2019年11月10日

相対貧困率と生活扶助基準ライン

所得分布が格差の大きさを示すのとは別に、貧困の程度を示すものとしては相対貧困率がある。正確には相対貧困水準とは「世帯人数を調整したうえでの中位の所得の半分の所得を相対貧困ライン」と設定し、その相対貧困ライン以下の人の割合と定義される。もう1つの貧困ラインとしては、生活保護制度の定める最低所得水準(以下、生活扶助基準の貧困ラインとする)によるものがある。生活扶助基準からみた貧困ラインは、世帯を構成する家族の年齢や居住地によって異なるので、単に人数調整した相対貧困ラインとは単純比較できない。
しかし、相対貧困ラインからみて貧困世帯とみなされる低所得世帯と生活扶助基準ラインからみて貧困世帯とみなされる世帯は86%重なっていることが確認できている。したがって、相対貧困率の動向は、生活扶助基準以下の貧困率と類似した動きを示すことになる。全体として貧困率は上昇傾向にあり、特に若年世代の貧困率が大きく上昇していることがわかる。一般に、貧困率の上昇は、収入が少ない高齢者数が増加したためであるという指摘もあるが、決して人口要因だけではないことがわかる。
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2019年11月07日

成長か分配か―揺れ動く国民の評価

 生活保護受給者数は約220万人前後となっており、戦後最多の状況が続いている。生活保護を受給している世帯の約4割が高齢者世帯であるが、増加率に着目すると若い世代の生活保護受給者も増加している。このように貧困問題はより深刻になっているものの、所得再分配か経済成長のいずれを優先すべきなのかという問題は、常に経済政策で大きな論争になり、国民の評価もそのときの社会経済状況で大きく揺れ動いてきた。
 2007年から08年のように生活保護を打ち切られて餓死した高齢者の事件や、リーマンショック後の解雇で仕事と住居を同時に失った人々が日比谷公園に集まり、派遣村が開設されたことなどが報道されると貧困・格差に関心が集まり、再分配政策を支持するようになった。しかし、最近のように生活保護受給者が増加し、不正受給などが報道されるようになると、再分配政策への支持は縮小傾向になる。再分配を重視するか、経済成長を重視するか―どのような政策を取るにせよ国民を泣かせるだけの政治はいらない。
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2019年11月06日

「現代の貧困]が強まる固定化傾向!貧困の連鎖を断ち切れるのか?

 赤ちゃんの取り違えで、病院に対し裕福な家庭で育つはずだった60歳代の男性が訴訟を起こした。取り違え後に育てられた家庭では、男性が2歳の時に育ての父が亡くなり、母子世帯となった。男性は働きながら定時制高校を卒業するなど苦労を重ねたという。一方、実の両親は、経済的に恵まれ、教育にも熱心だった。判決では「高等教育を受ける機会を失わせて精神的な苦痛を与えた」として、病院に慰謝料などの支払を命じる判決が出された。
 家庭の成育環境が、子供の人生にいかに大きな影響を与えるものかもしれない。取り違えは許されないが、人生のスタートラインに大きな格差があることは、社会の課題として認識すべきだ。
 もちろん、家庭の成育環境がすべてを決めるわけではない。戦後、町工場を起こし、世界的企業に育てあげたある経営者は、「親が遺してくれた最大の財産は貧乏だった」と語った。この言葉の通り、自らの境遇を努力によって克服した人は少なくないのもまた事実である。また、程度の差こそあれ、誰もが何ら家の問題を抱えながら生きているのである。だから、人生のスタートラインが完全に平等ということもありえないことかもしれない。
 しかし「現代の貧困」は、昔に比べて個人の努力で克服できる余地が狭くなってきているのではないか。実際、スタートラインの格差は以前よりも大きく、貧困が固定化する傾向も出てきていることも確かだ。例えば、関西地方のある自治体では、生活保護受給世帯主の25%は、育った家庭も生活保護を受けていた。つまり、親から子へと貧困が連鎖していることになる。一方で、親子間の階層移動の研究によれば、親が上層のホワイトカラーであれば子供も同じ階層となる傾向が、1990年代後半以降、強まっているのだ。
 では、貧困世帯に属する子供はどの程度いるのだろか。厚生労働省の調査によれば、18歳未満人口のうち貧困世帯に属する人の割合(子供の貧困率)は16%を超えている。実に、子供の6人に1人以上が貧困世帯に属しているのである。
 また、世帯類型別に貧困率をみると、1人親世帯の貧困率が5割を超える高い水準で、先進国といわれる国の中でも断トツの1位なのである。シングルマザーの81%は働いているのに貧困率が高いのは、就労中のシングルマザーの5割強は非正規労働に従事しているからなのだ。
 では、この「貧困の連鎖」を断ち切るには、どうすべきなのか。少なくても親と子供それぞれへの支援が不可欠なのである。子供への支援としては、まずは公教育の充実が重要だ。公教育には、家庭の経済状況に関係なく、子供が潜在的能力を発揮できるように、いわばスタートラインをそろえる機能がある。この点、教育への公的支出割合を対GDP(国内総生産)比で国際比較すると、日本は比較可能なOECD(経済協力開発機構)30ヵ国中最下位なのだ。このため、日本では教育費に占める家計負担の割合が大きく、貧困層にとって酷な状況になっている。
 親への支援としては、経済的支援のみならず、総合相談や職業訓練、さらに保育所整備なども求められる。特に相談支援体制の整備は、シングルマザーの孤立を防ぐためにも重要である。だが、今の政府・官僚組織では、かなり難しいことかもしれない。
 さて、あまり知られていないことだが、すでに「子どもの貧困対策推進法」なるものが成立している。だが、形は整ったかに見えるものの、肝心の魂が抜け落ちている。これにより貧困の連鎖を断ち切って「未来への投資」にできるかははなはだ疑問である。
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2019年11月05日

貧困の責任は「個人」と「政治」どちらにあるのか?

 アメリカは日本と並んで、先進国の中では突出して貧困率が高い国として知られている。アメリカでも貧困は個人の問題なのか、政治の問題なのかという論争があるが、困ったことに、「日本ではまじめに働いている多くの人が貧困生活を強いられている」と日本を引き合いに出し「貧困は個人の責任ではない」と主張する記事がだされた。
 アメリカでは保守派の一部が、貧困は個人の責任であるという主張をしている。アメリカの相対的貧困率は17.8%、日本は15.7%となっており、フランス(8.3%)やドイツ(10.4%)など欧州各国と比較すると、日米の貧困率は突出して高い状況なのだ。
アメリカは社会保障制度が充実していないというイメージがあるが、実はそうでもない。アメリカには低所得者向けの医療保険であるメディケイド、食料配給券制度(フードスタンプ)、子育て世帯向けの粉ミルク・食品支援策(WIC)、賃貸住宅補助、給食の無料券など、数多くの低所得者向け支援制度があり、比較方法にもよるが、人口1人当たりの予算規模も日本を大きく上回る。
 しかしながら米国の場合、自ら制度を積極的に活用しないと支援は受けられないので、制度を探す能力がないと、貧困が放置されるケースがある。こうした状況に対して、リベラル系や穏健な保守派の論者は、貧困者にもっと機会を与えるべきだと主張し、これに対して一部の保守派が自己責任論を主張しているという図式だ。
 そうした中、アメリカの大手メディアであるブルームバーグが、日本を引き合いに「貧困は個人の責任ではない」とする記事を配信した。それによると、日本の貧困者の多くは、犯罪者でも、麻薬に手を染めているわけでもなく、まじめに働いていると分析。それでも貧困に陥っているのは社会制度の問題であり、アメリカも同様であると論じた上で、アメリカでもヨーロッパのような手厚い社会保障制度を導入する必要があると主張している。
 ネットでは「とうとう日本もこうしたケースで取り上げられる国になってしまったか」という嘆きの声が飛び交っている。確かに、勤勉に働いていても貧困に陥るケースとして日本が取り上げられるようになるなど、20年前には想像もできないことだった。しかしながら、日本の貧困問題が悪化しているのは事実であり、特にシングルマザーの貧困は極めて深刻な状況となっている。責任の所在以前の問題として、これでは先進国と呼べる状況ではない。早急な対策が必要なのだが…。
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2019年11月02日

「簡易個室」を最低基準として公認?

 検討会の開催は規制強化の流れの中に位置づけられるが、業界関係者の間では「厚労省は『簡易個室』を最低基準として公認するのではないか」との懸念が広がっている。
 それは厚労省が初会合で示した資料に、「多人数居室1つの個室をベニヤ板等で区切ったいわゆる『簡易個室』も一定数存在する」と、その存在を前提としているかのような記載がされているためだ。
 現行ガイドラインでは「個室が原則」とされているが、仮にこの「簡易個室」が無低の最低基準として認められれば、これまで相部屋を中心に大規模展開してきた無低運営事業者でも、ベニヤ板で簡単に1部屋を間仕切りさえすれば、そのまま生き残れることになる。まさに抜け道だ。政府による切捨てではないか。
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2019年11月01日

生活保護費はほとんど手元に残らない!

 無低事業者は、保護受給者が受け取る住宅扶助や生活扶助の中から、さまざまな「利用料」と称し毎月徴収する金銭を運営財源としている。中にはそのほとんどを徴収する悪質な大規模施設運営事業者も存在し、「貧困ビジネス」と批判されている。
 ある大規模無低から逃げ出してきた元利用者は、「施設では家賃のほか、高い食費や水道光熱費や共益費も払わされ、生活保護費はほとんど手元に残らず生活再建につながらなかった」と話す。
 厚生労働省が実施した実態調査では、本来は一時的な居住場所であるはずの無低が、入所期間4年以上に及ぶ入所者が全体の3分の1を占めていることが明らかとなった。これはつまり、一度無低に入ったら出ることが難しい実態がある、ということになる。
 大規模無低の運営実態はどうなのだろうか。金銭管理と称し生活保護費を丸ごと取り上げたり、「施設内就労」の名の下で福祉の専門資格を有しない保護受給者を施設職員に据えて働かせたりするケースがある。1つの居室をベニヤ板で間仕切っただけで天井部分が完全につながっている居室を、「簡易個室」と称し50〜200人を1つの施設に「収容」するような大規模無低も関東各地に存在している。
 こうした大規模無低の運営事業者などによる悪質な貧困ビジネスの実態を厚生労働省も問題視。厚労省が定めた現行のガイドラインでは、個室を原則とし、居室面積は7.43平方メートル=4畳半相当以上とされている。狭い床面積の場合は、住宅扶助(家賃)を減額する仕組みも導入された。
 だが、こうした最低限の規制すら骨抜きにしかねない議論が浮上している。厚労省の貧困ビジネスへの規制強化などに関する検討会では、無低の最低基準や保護受給者の日常生活支援のあり方などについての検討を踏まえ、厚生労働省令や条例を策定するスケジュールを示しているが、正常化には程遠い。
posted by GHQ/HOGO at 05:59| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする