2019年10月07日

給付抑制をめざす社会保障改革のリスク

 生活保護基準の削減などによる給付抑制と併せて実施された生活困窮者自立支援制度は、自治体ごとに事業の導入実績が異なり、また事業の民間委託化にともなう必要充足(当事者の「声」に応えているか)などの課題が今後明らかになっていくだろう。福祉事務所の機能がアウトソーシング(外部委託化)されたということでもあり、民間事業者に貧困対策をゆだねていくことは、公的サービスの縮小あるいは公的責任の回避と見ることもできる。憲法の生存権規定との関連性が明白な生活保護法に対して、生活困窮者自立支援法は生存権保障を約束しておらず、最低生活保障を受ける権利を体現しているとはいえない。
 イアン・ファーガスンは、1990年代以降のグローバル市場経済の拡大を背景にして、ネオリベラルな社会保障改革が進められていることを危惧している。各国政府は社会保障の給付抑制を図り、サービスに経営論的な転回をもたらしている。その特徴は、@費用対効果の考え方で利用者を合理的に管理する「マネジメント主義」、A福祉の民営化や「根拠に基づく(evidence-based)実践」を強調することによる「規制」、そしてB個人に主体的にリスクを管理させ、それぞれの必要や負担能力に応じて「セルフケア」でサービスを契約(購入)させる「消費者主義」だという。
 日本の社会保障改革もまさに財源調達と給付抑制、資源分配の効率性を重視する議論が主軸となっている。これらを強調してきたのは経済財政諮問会議と「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」が掲げる政策理念だといえる。骨太の方針にもとづき、生活保護および生活困窮者自立支援制度でも「KPI(Key Performance Indicators)」を活用した「費用対効果」の分析が重視され、生存権保障という観点からではなく、経営論的な観点による「自立支援」が導入されてきた。
 生活困窮者自立支援によって、住民が生活困窮者の支援に直接関わる機会が増え、そのことによる地域活性化や「共生」のコミュニティーづくりといった新たな効果が生まれていることは確かだ。そのことを評価しつつ、政府には貧困・生活困窮者の生存権および幸福追求権を保障する義務があることをあらためて確認しなければならない。そして、生活保護基準の引き下げなどによる生活保護の給付抑制、および生活困窮者自立支援制度による過剰な「マネジメント主義」や「消費者主義」が貧困対策として何ら有益ではないことを確認していくことが求められる。今後も最低生活保障の確立に向けて住民および生活に困窮する当事者の「声」を言葉にし、政治に反映させていく必要がある。
posted by GHQ/HOGO at 06:10| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする