2019年10月05日

貧困を見えなくする基準改定

 政府は相次いで生活保護基準の引き下げを行ってきた。このことは、日本で貧困が減少したと見られていることと深い関連をもっている。
 生活保護基準(とくに冬季加算や住宅扶助)の大幅引き下げがおこなわれた2013年と2015年に次いで、2018年の生活保護の見直しでは、大学進学などのための進学準備給付金の創設のほか、生活扶助(母子加算、3歳未満の児童養育加算など)、教育扶助(学習支援費の実費支給化など)、医療扶助などの見直しがあった。
 生活保護基準が引き下げられたということは、日本の貧困の基準が狭められたことを意味する。生活保護基準の引き下げと同時期に、生活保護率(受給率)も低下している。すなわちそれは生活保護を必要とする人々が減少したというよりも、生活保護から「外された」人々が増えた結果だと考える必要がある。
 政府が生活保護基準を引き下げた根拠は、生活保護を受けない低所得層(第1・十分位層)の消費水準と比較して生活保護世帯の消費水準が高いことが確認され、それでは正義にかなわないので引き下げるのが妥当であるという考え方、すなわち「劣等処遇論」(保護をする者の生活水準をできるだけ低位に押しとどめる)が政治理念として導入されたことにある。
 非正規雇用を背景としたワーキングプアが増加しているなかで、いわゆるワーキングプアを含む「低所得層」の消費水準は低下しつづけている。いったん生活保護基準が引き下げられれば、生活保護から締め出された人々が「低所得層」となり、その層の消費水準をいっそう低下させる。こうして生活保護が受けられず生活費を切り詰めざるを得なくなった低所得層の消費水準は極端に下降し、それを根拠に再び「劣等処遇」が求められるという負のスパイラルにおちいることになる。
 低所得層の消費生活水準に照らして生活保護基準を設定することの無意味さは、多くの研究者が指摘する。失業率を改善するためにワーキングプアのような「低所得層」が政策的に生み出されてきた。意図して消費生活水準の低い層を増やし、それを根拠に生活保護基準を引き下げるというのは、まさに茶番劇だ。好景気によって生活保護受給者が減ったかのように見せて、保護を受けられない人々を「低所得層」に追いやったとしても、彼らの「貧困」は何ら解決されていない。貧困は温存され、隠蔽されたといわざるを得ない。
posted by GHQ/HOGO at 06:01| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする