2019年08月18日

「損得勘定」に異常なほど敏感

 わたしたちがまず確認しておかなければならないのは、わたしたちが置かれている経済的または心理的な状況だ。先進国の多くで国民が「損得勘定」に異常なほど敏感になっており、富裕層や貧困層などの階層をターゲットに怒りを爆発させることが日常茶飯事になっている。
 これは「自分のライフスタイル」と「他人のライフスタイル」を比較することが大きな関心事となり、そのずれに不満や欠乏の感情を抱きやすくなっているからだ。しかも、比較の対象範囲は上下左右を問わず全方位に拡大している。
 社会学者のジョック・ヤングはこのことについて、「報酬のカオス」と「アイデンティティのカオス」が背景にあると説明する。報酬が個人の能力に応じて公正に配分されているという原則が侵害されることが「報酬のカオス」であり、アイデンティティと社会的価値を保持している感覚が他者に尊重されることが危うくなることが「アイデンティティのカオス」である。この2つのカオスにわたしたちは直面しているという。
 勤勉な大多数の市民は、報酬が支離滅裂な方法で配分されている気配を察知している。こうした報酬配分があまりにも広がったために、社会全体の道理がかなっているとの了解するのは困難である。このような報酬のカオスに対する怒りの矛先は、階級構造の最上部の大金持ちか最底辺層に、つまり労働の対価が明らかに多すぎる人と、働かずに報酬を得ている人に向けられる傾向がある。言い換えれば、あからさまに能力主義の原理を攪乱する者たち、すなわち大金持ちとアンダークラスに敵意が集中するのである。【ジョック・ヤング『後期近代の眩暈―排除から過剰包摂へ』(青土社)】
posted by GHQ/HOGO at 06:51| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする