2019年07月02日

妊娠中の生活保護受給者に「いつ堕ろすんですか?」――生活保護の現場が荒れるワケ

 生活保護の現場が荒れている。不正受給を糾弾する動きが加速する一方で、福祉事務所が生活保護申請を拒否する“水際作戦”や、本来受給者をサポートするべきケースワーカーのパワハラなど、行政側の不当な対応が相次いでいるのだ。
 小田原市の“ジャンパー事件”は、そんな事例の最たるものと言えるだろう。ご存じのとおり、受給者の生活支援を行う市職員らが「HOGO NAMENNA」と書かれたジャンパーを着ていた問題だ。小田原市生活支援課の課長を直撃した。
 「きっかけは’07年に担当職員が受給者に切りつけられた傷害事件です。もともと生活支援課は精神的な負担が大きく、厳しい職場。命の危険に晒されたことで、モチベーションを保つことが難しくなり、高揚感や連帯感を得るためにジャンパーを製作したようです」
 世間では「不正受給を食い止めようとする姿勢は正しい」という意見も多く溢れたが、この事件で注目すべき点はそこではない。
「小田原市で特に不正受給者が多いということはなく、割合としてはごく一部です。それよりも『自分たちは市民のために頑張っている』という気持ちになれるメッセージとして、手っ取り早かったのだと思います」(前出の課長)
 “ジャンパー事件”の背景には、ケースワーカー不足もある。
 「社会福祉法では一人が担当する世帯数は80世帯となっていますが、実際はもっと多く見ています。小田原市もケースワーカーが4人足りず、本当に困っています」(同)
 現在、全国の生活保護受給者数は約214.4万人で微減傾向にあるが、世帯数では163万7866世帯(昨年10月時点)と過去最高だ。しかも、受給資格があり、実際に利用している人の割合(補捉率)は2割程度。残りの8割、つまり約800万人が生活保護から漏れているのだ。それに対してケースワーカーは職務の厳しさもあって不足する一方であり、問題が起きやすい状況になっている。
 さまざまな要因があるとはいえ、一番しわ寄せを受けるのは受給者だ。労働相談を中心に活動するNPO法人POSSEには、生活保護に関する相談が年間約1000件寄せられるが、半数近くは行政の不当な対応についてだという。
 「窓口で言われることが多いのは、『ハローワークに行って働けないことを証明してください』『家族に頼ってください』というもの。DVや虐待の被害を受けている人にも、家族への連絡を強要するケースがあり、行政の対応によってDV・虐待の二次被害が生じているのです」(POSSE・渡辺寛人氏)
  大阪府在住のユカリさん(仮名・32歳)も、そんな水際作戦に遭った1人だ。
 「兄妹から日常的に暴力を受けていました。特に兄の暴力はエスカレートする一方で、3年前のある日、ついに家を飛び出したんです。最初の数日はネカフェで過ごしましたが、すぐにお金が尽きてシェルターに入りました。その後、生活保護を申請したのですが、最初は『家庭で頼る人がいないのか』と難色を示されましたね」
 申請者に施設に入るよう要求するケースもあるが、渡辺氏はこれも大問題だと語る。
 「3畳一間のベニヤ板で仕切られたような場所で暮らすことを強要し、寮費などの名目で生活保護費の大半をピンハネするような施設が多いんです。いわゆる貧困ビジネスですね。入居を拒否すると、『じゃあ、生活保護は受けられませんね』と追い返す。これは生活保護法30条の居宅保護の原則に反した違法な対応です」
 さらに、こうした水際作戦をくぐり抜け、ようやく受給が始まっても安心はできない。
 「就労指導と称して、『カラダを売って働けばいいじゃないか』と言われた女性もいました。また、受給中に出産する場合、分娩費や入院費を賄うための出産扶助の費用が支給されますが、妊娠をケースワーカーに告げたら『出産扶助出しませんよ』と言われたケースもある。『いつ堕ろすんですか?』と、直接的な言葉をぶつけられた人すらいます」(渡辺氏)
 こういったパワハラは不正受給の防止や、就労指導を盾にしているわけだが、その点についても渡辺氏は逆効果だと語る。
 「受給者の中には、ケースワーカー以外に日常的に交流する相手がいない人もいる。その唯一の相手から差別的な対応をされれば精神的にもダメージを受けて自立は遠ざかりますし、結果として保護が長期化して社会的なコストも増大してしまうんです」
posted by GHQ/HOGO at 06:01| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする