2019年05月12日

恩恵ではなく、権利である

 憲法25条は、次のように定めている。
 「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」
 いわゆる「生存権」の規定で、それを具体化したのが1950年に制定された生活保護法である。
 憲法が保障する権利である、ということは、2つの意味を持っている。
 1つは、「恩恵」ではないということ。国のお情け、お恵みではなくて、権利である。したがって、生活に困って生活保護を利用するのに、負い目を感じる必要はない。小中学生が、学校へ通えるのは慈悲深い首相のおかげ、と有難がる必要はないし、選挙で投票できることを政府に感謝するいわれもない。
 なぜ、生存権が権利になったのか。それは国家が何のために存在するのか、ということと関係している多くの学者は、。明治憲法では、天皇が国の主権者で、国民は、その支配下にある臣民であり、これに対し、戦後の憲法は、国民主権に転換したという(これは明治憲法の読み違いなのだが…)。国のいろいろな機構は、国民がつくるものだから、国民の幸福を図るためにとされる。であれば、主人公である国民は、生存はもちろん、人間らしい生活の保障を要求する権利があり、国家にはその責務があるということになる。
 国家の役割について、そういう考え方が登場した背景には、先進諸国で資本主義が発達するにつれて、失業・貧困・過酷な労働などが深刻になったことがある。資本主義経済を自由にまかせて放任するのでなく、社会的・経済的弱者を助けるために、国家が介入する必要があるという思想(積極的国家観)が20世紀になって、国際的に広がったのはたしかだ。
 それまでも17世紀に始まるイギリスの救貧法など、税財源による公的扶助制度はあったのだが、基本的には恩恵的なもので、貧困を個人の責任ととらえ、迷惑な貧民を取り締まるという発想を伴って。それに対して、貧困は社会の問題だという見方が提起され、労働運動・社会運動の強まりもあって、国家が社会政策を進めるようになっていった。あまり言及されていないが、旧ソ連という社会主義国が生まれたことの影響も大きかったということにされている。だが旧ソ連では社会保障制度など考えられたことはなかったのだが…。
 人権についてのとらえ方も、自由権(国家による制約からの自由)だけでなく、社会権(国家に積極的配慮を求める権利)も必要だという方向に発展してきたとされている。そうした国際的動向の中で、憲法25条の規定が設けられ(GHQに社会主義者まがいの人間がいたからなのだが…)、生活扶養制度が出てきたのである。
 戦前の日本にあった救護法(1929年制定)、戦後すぐの1946年につくられた旧生活保護法は、権利性がなく、貧困状態の人々が十分に救済されていなかったという経緯もある。
 「権利」のもう1つの意味は、行政の決定に不服があれば、法的に争えること。生活保護を申請したけれど認められなかった、保護の支給額を減らされた、保護を打ち切られたといった福祉事務所の決定に対し、都道府県知事への審査請求、さらに厚生労働大臣への再審査請求ができることになっている。福祉事務所が行うべき決定をしないときも審査請求できる。それらの結果(裁決)に不満なら、行政訴訟を起こして裁判所の判断を求めることができる。
 ただし、外国籍の人については、最高裁が2014年7月18日の判決で「権利性」を否定した。これは、外国人だと生活保護を受けられないという意味ではないが、生活保護法は条文上、「国民」だけを対象にしており、外国人への生活保護は、同法ではなく、旧厚生省社会局長の通知による行政措置として行われているので、生活保護法による法的手続では争えない――というのが最高裁の判断なのだ。とはいえ、生死にかかわることもある行政手続なのに、まったく争えないとすることには批判がある。最高裁判決の下でも、局長通知による行政措置に関する不服の手続としてなら法的に争えると見る法律家も少なくない。
 なお、法的に争うと言っても、当事者はほとんどお金がないだが、民事法律扶助の制度を使えば、弁護士や司法書士による無料法律相談を利用でき、書類作成、交渉・審査請求・訴訟などの代理も頼める。生活に困窮していれば、立て替え金の返還は猶予・免除になるので、実質的に費用はかからないことになる。
 生活保護の申請や、福祉事務所との緊急の交渉をしたい場合も、高齢・障害・病気・ホームレス状態といった人なら、日本弁護士連合会の法律援助制度を使える(通常は無料)。
 いずれも、つてのある弁護士や司法書士に直接連絡するか、「法テラス」(0570・078374)に相談すれば、利用できる。
posted by GHQ/HOGO at 07:12| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする