まず所得の中位値と平均値である。厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、近年の平均世帯所得は530万円超であるが、中位の世帯所得(所得を低いものから高いものへと順に並べて2等分する境界値)はほぼ430万円である。中位値より平均の方がかなり高めにでる原因は、高所得世帯の所得が平均を押し上げているからである。そこで中位値の世帯所得の動向に着目すると、世帯人数が減少していることや人口の高齢化が進んだことをも考慮しないといけないものの、1995年は550万円、2000年は500万円、2005年は458万円、近年はほぼ430万円というように、約20年間で中位値は120万円以上低下している。
次に所得分布は、全世帯の下位から約2割は世帯収入「0から200万円」にある。中位の世帯所得の半分は210万円あまりであり、これは相対貧困ラインにも相当するが、それ以下の世帯が20%程度存在することになる。他方、上位から5% が世帯所得「1300万円以上」、同じく上位10%が世帯所得「1000万円以上」の高所得世帯層となっている。したがって、大ざっぱにいうと日本の世帯所得分布は1000万円以上で上位10%、201万円から999万円で中間層70%、200万円以下の低所得者層20%から構成されている。
次に高所得層への集中を明確にするためには、高所得層への占有率に注目する必要がある。OECDのデータベースでは、各国の所得上位層が全所得(課税前)の何パーセントを占有しているか公表している。上位5%の所得層の占有率を見ると、日本は90年代に入って急速に上昇しており、米国の約35%、英国の約30%には及ばないものの、25%に接近している。なお、フランスは21%、スウェーデンは17%であり、決して日本が格差や所得の集中度が低い国ではないことがわかる。