日本での貧困問題は、衣食住に不自由した戦後の混乱期を経て、その後の経済成長とともに改善した。1970年代以降、国民の多くが「一億総中流」と意識するまでに至った。しかし、バブル経済崩壊後の1990年代には、経済の長期低迷の中でリストラや非正規社員の増加などにより所得格差が拡大。世の中には“勝ち組、負け組“なる言葉も生まれた。
日本の貧困率は、国際比較で見ても高い。OECDの統計によれば、2000年代半ばの時点でOECD加盟国30か国のうち、相対的貧困率が最も高かったのはメキシコ(約18.5%)、次いで2番目がトルコ(約17.5%)、3番目が米国(約17%)で、4番目に日本(約15%)が続いた。貧困率が最も低かったのはデンマーク(約5%)だった。日本の相対的貧困率は、2000年代中ごろから一貫して上昇傾向にあり、OECD平均を上回っている。
日本の「公正」に関する指標は、「所得分配と機会の平等および個人の社会的自立の程度を反映して、全般的に低いパフォーマンスを示している」(厚労省白書)。所得格差を含めた経済格差の解決には、雇用の在り方とともに生活保護、公的年金、最低賃金などを含めた総合的な検討が求められる。格差社会の進行を食い止める対策は、今や日本にとって喫緊の課題の1つだが、一向に先が見えない。