2018年11月06日

日本のシングルマザーの貧困率が突出して高い理由

 日本は、GDP(国内総生産)で米国、中国に次ぐ世界3位の「経済大国」だ。しかし、その陰では、「シングルマザー」世帯の貧困が先進国でも突出して深刻なのはご存じだろうか。
「経済大国」なのに…日本は豊かな国だろうか。GDPで中国に抜かれたとはいえ、まだ世界3位。れっきとした「経済大国」である。データを見ずとも、日本は先進国に数えられると考える人も多いはずだ。むろん、G7(先進7ヵ国)の中にも日本は含まれており、世界各国からもそのように認識されているだろう。しかし、データを「深読み」していくと、意外な事実が浮き彫りになる。
 厚生労働省の発表した2016年度の「全国ひとり親世帯等調査」によると、日本には約142万の「1人親世帯」がある。内訳は、父子世帯の約18万7000世帯に対し、母子世帯はその6倍以上、約123万2000世帯に上る。ひとり親世帯の9割近くが母子世帯だ。
 注目すべきは、その経済的困窮ぶりだ。OECD(経済協力開発機構)の調査では、ひとり親世帯で、なおかつ親が就業している場合の相対的貧困率(全国民の所得の中央値の半分を下回っている割合)は、日本が54.6%と先進国では頭1つ抜けている。世界でも有数の経済大国にもかかわらず、なぜここまでひとり親世帯の子供の貧困率が高いのだろうか。
 前述の厚労省の調査では、約123万2000の母子世帯のうち、81.8%の母親が就業しているという。しかし、そのうち「正規の職員・従業員」は44.2%に過ぎない。43.8%が「パート・アルバイト等」。「派遣社員」も含め、ほぼ半数の48.4%が非正規雇用だ。母子世帯全体の平均年間収入も348万円にとどまっている。
 同省が発表した16年の国民生活基礎調査によれば、全世帯でみると世帯の平均所得は545万4000円だ。児童のいる世帯に限れば707万6000円に上る。ちなみに、収入から生命保険料や確定拠出年金の掛け金など所得控除される分を差し引いた額が所得金額だ。そう考えると、いかに母子世帯の収入が低いかが分かるだろう。
さらに、15年の国勢調査を見ると、母子世帯のうち、母親の親(子供から見ると祖父母)などがいない「母子のみにより構成される母子世帯」の数は約75万世帯、世帯平均年間収入は厚労省の調査結果よりさらに低い243万円だ。
 父子世帯より母子世帯のほうが経済的に苦しいのは、むろん、就業によって得られる収入に差があるからだ。  父子世帯の場合、父親の85.4%が就業している。この数字は、母子世帯の母親の就業率(81.8%)と大きな差はないが、その中身はまるで異なる。父親の場合、就業している人のうち、18.2%が「自営業者」で、68.2%が「正規の職員・従業員」である。非正規雇用の割合は圧倒的に低く、男性と女性で稼ぐ条件に大きな差があると言わざるを得ないのだ。
 前出の1人親世帯等調査によると、1人親世帯となった時点の末子の年齢は、父子世帯の6.5歳に対し、母子世帯は4.4歳。子供が幼いので、フルタイムでの勤務が難しいという事情もありそうだ。
 「女性は離別した夫から養育費をもらうではないか」と思う人もいるかもしれない。しかし、同調査によると、離婚した父親からの養育費の受給状況で「現在も受けている」と回答したのはたった24.3%だけだ。しかも養育費の平均月額(※養育費の額が決まっている世帯)は4万3707円。収入の男女差を埋めるには明らかに少ない。
 さらに、シングルマザーの2割以上が「未婚(の母)」か「死別」だ。こうしたケースでは基本的に彼女らは養育費を受け取ることはない。この点は注意しなければいけない。
 ここまで、政府の統計データを基に、日本でシングルマザーの生活が厳しい理由を見てきた。しかし筆者は、ほかにも要因は複数あると考えている。まず、指摘したいのは日本にはベビーシッターの文化が浸透していないことがある。理由は複数あると考えられるが、何より大きいのは、ベビーシッターのサービスを受けるための価格が高いことだろう。ベビーシッターの1時間当たりの利用料は、一般的に1000〜4000円程度は相場だ。さらに、交通費などの料金が加算される。
 仮に、1時間2000円程度としよう。1日8時間、週5日間利用するとなると、交通費などを除いても1ヵ月でなんと35万円ほどかかってしまう。年間だと420万円。ほかにも家賃や食費、光熱費などの生活費がかかるだから、これでは母子世帯だけでなく、夫婦共稼ぎの世帯でも支払うのは難しい。さらに、「利用したい日の1週間前に要予約」といったケースも多く、「使いたいときにすぐ使える」サービスは少ないのが実情だ。
 行政も、これを社会問題ととらえ、東京都が待機児童となっている子供のいる家庭を対象に、ベビーシッターの利用料の大半を補助する制度をスタートしたり、企業が社員向けの補助制度を整備したりするなど、利用促進に向けた支援が拡充されつつある。
 しかしながら、筆者が実際に複数のシングルマザーにベビーシッターを活用するかどうかについて聞いてみたところ、否定的な答えが多かった。費用の面より、気持の面で活用をためらうケースも多いようなのだ。
 自分が自宅にいないとき、ベビーシッターという「他人」に子供と一緒にいてもらうことや、保育園に迎えに行ってもらうことに対し、「抵抗感がある」というのだ。
 また、日本の企業の旧態依然とした働き方も、シングルマザーの生活を苦しくしている要因といえそうだ。私が話を聞いたシングルマザーたちの中でも、若い母親たちは特にこの点を強く指摘していた。
 日本の企業では、定時の就労時間を午前9時から午後5時に設定しているケースが多い。そして、基本的には社員全員がオフィスへ出勤し、机を並べて仕事する。仕事が終わった後にも、度々職場の食事会や飲み会が開かれ、そこでのコミュニケーションが社内の人脈づくりや評価につながり、「将来の出世や昇給に響く」と感じる人は少なくない。1人親世帯の子供は、一般的に認可保育園に入りやすいケースが多いため、待機児童の問題で悩むことは少ないはずだ。しかし、シングルマザーが前述のような働き方をするのは極めて難しい。
 午前9時にオフィスに到着しなければならない。すると、午前6時には起きて子供を保育園や幼稚園に送る準備や、食事の支度をし、子どもたちを送り届けてから満員電車に乗ってオフィスへ行く。
 保育園への「お迎え」があるので、「時間短縮(時短)勤務」の制度を活用したり、夕方は定時に退社したりしなくてはならず、遅い時間に緊急の会議が開かれたとしても、出席は極めて難しい。まして仕事の後の「付き合い」などできるはずがない。
 フルタイムでの勤務自体が難しいため、なかなか昇給も昇格もせず、「ボーナスをもらえないこともある」という。収入が少ないのは、ある意味必然と言える。
 ただ、最近は「働き方改革」が進み、企業なども少しずつ変わってきている。
 フレックスタイム制を導入する企業も増えてきており、リモートワーク(在宅などによる勤務)をできる企業もある。様々な「チャットツール」や、ウェブ会議のための通信用アプリケーションも開発されており、全員がオフィスに集まる必要もなくなってきた。
 また、「副業」や「パラレルキャリア」という言葉を耳にすることが多くなってきたように、技能さえ持っていれば、フリーランスで収入源を複数確保することも可能になってきた。実力が収入につながれば、仕事のあとの宴席などを気にする必要もなくなるはずだ。
 シングルマザーの貧困が子供の貧困を招き、そして最終的に日本の国力の低下にもつながりかねない。一部の家庭の話だと切り捨てるのではなく、国を挙げて対策を検討し、早急に改善されていくことを期待したい。
posted by GHQ/HOGO at 05:48| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする