2018年07月04日

「私たちは恥ずかしい存在なのでしょうか?」

 お笑い芸人の不正受給問題は、誰にとっても脅威以外の何ものでもなかった。
 報道合戦が連日繰り広げられ、国会議員までもがそれに参戦し、国会質問のなかでまで取り上げられるようになった。あるワイドショーでは生活保護についての街角インタビューなども行われたし、お笑い芸人の事例を超えて、生活保護という制度自体についての報道も増えていった。
 ○○市で不正受給があった、××区で生活保護受給者がタクシーで通院していたなど、実際にそれが適法なのかどうかといった検討をおこなうこともなく、「生活保護」や「不正受給」といった言葉がひたすら消費されていった。
 それにともなってか、「不正受給が増えている」「悪質な事例が増えている」「生活保護受給者は怠けている」などの言説が、ネット上にもあふれかえるようになっていた。
 認定NPO法人もやいでおこなっている居場所づくりの活動「サロン・ド・カフェこもれび」には元路上生活者や生活保護の利用者の人たちが多く訪れてくる。彼ら・彼女らは、みんな不安な声をあげていた。
 「テレビをつけるのが怖くなりました。出かけるときも、周りの人に後ろ指をさされていないかが気になって。最近は引きこもりがちになりましたね...」
 「大家さんに家賃を納めに行ったら、あんたたちは社会の恥だ って、怒鳴られちゃって」
 「この前、テレビのクルーがD区のフクシに来ていて、支給日に並ぶ人たちを撮っていたんです。もちろん、モザイクは入るんでしょうけど、それ以来、テレビを見るのが恐ろしくなりましたよ」
 もちろん、なかには深刻に受け止めすぎていたり、なかば妄想じゃないかと思うようなものも含まれていたりしたのだが、でも、現実に彼ら・彼女らの多くが生活保護バッシングに本気で怯え、不安を覚え、日常生活に支障をきたしていた。
 「担当のフクシのケースワーカーから、扶養照会について厳しくすると言われました。でも、私はDVで逃げてきたんですよ。旦那に連絡されるんじゃないかと心配で」
 「私たちは、恥ずかしい存在なのでしょうか。迷惑な存在なのでしょうか。苦しいです」
 電話、ネット問わず、全国からも多くの声が寄せられた。なかには、「死にたい」と言ったきり電話越しで泣き崩れてしまう人もいた。統計で見ると、生活保護利用者の多くは高齢者や傷病・障がいをかかえた人たちだ。精神的な不調に悩まされている人も少なくない。過熱する報道や世間の眼差しによって、健康をより一層害してしまった人もいた。
 そして、もやいにも、「不正受給をほう助している」「生活保護の受給者を増やして税金を無駄使いしている」といった中傷が届くようになった。
 「あなたたちは、なんでも生活保護、生活保護って。言ってて恥ずかしくないんですか」
 「税金を使って生きているやつらを囲って金を巻き上げてるんだろう。偽善者め」
 こういった誹謗中傷は、相談窓口の電話にまで紛れ込んできた。電話対応をしているスタッフやボランティアたちも、どんどん疲弊していった。
posted by GHQ/HOGO at 06:39| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする