ただ一方で、困った問題が起きる可能性もある。その1つが「貧困シングル」の増加だ。
とはいえ、単身女性の貧困問題は何も今に始まったことではない。昔から、未婚女性や離婚した女性の中には、パート・アルバイトなどで働く人もいた。少ない稼ぎで子供を育てる女性もいた。それなのに、貧困問題としてあまり取り上げられてこなかったのは、「パート・アルバイトで働くのは夫の稼ぎで食べていける主婦」という見方が強かったせいだろう。
女性の貧困問題は古くて新しい問題だ。それに比べ「シングル男性の貧困」は、これから見つめなくてはならない新しい問題といえる。
2007年の政府統計から、65歳以上の男性未婚者の貧困率を調べるとなんと40%にものぼる。妻のいる高齢者の割合(16.6%)を大きく上回る数字だ。
今のところ、65歳以上の男性高齢者に占める未婚者の割合は2.4%にすぎない。でも、2030年になると、この割合は10.8%になると予測されている。また、国立社会保障・人口問題研究所によれば、2030年の50〜60代男性の4人に1人が1人暮らしになる見込みだ。2030年の50〜60代というのは、ちょうど今の30〜40代に当たる世代だ。今後、高齢の未婚男性が増えれば、それだけ男性の貧困問題も深刻化する可能性がある。
もちろん、「男性未婚者と貧困率」をめぐる数字には、複雑な事情がひそんでいる。日本はまだまだ男性を一家の稼ぎ手としている社会。このため、女性の場合は「未婚だから貧困に陥りやすい」という側面があるけれど、男性の場合は、「貧困だから未婚」というケースもあるのかもしれない。
ただ、1人暮らしの人は病気したり、失業したりしても、同居人のサポートを得られない。その結果、貧困に陥る人が少なくないのは、見落とせないポイントだ。
いずれにせよ、非正規労働に従事してきた人々が高齢期を迎えたときには、高齢男性の貧困問題は、さらに深刻化している可能性がある。