国立社会保障・人口問題研究所の「生活保護」に関する公的統計データ一覧に基づき、生活保護制度の現状を見てみよう。
まず、生活保護世帯数・保護率は1996年ぐらいから増加の一途をたどっている。1996年に613106件だった被保護世帯数(1ヵ月平均)は2012年には1558510件と2.5倍に増加、世帯千対の保護率も14.0‰から32.4‰へと2.3倍に増加している。今後もこのペースで増加することになれば、財政が破綻するのは火を見るより明らかだ。
次に保護費総額を見てみると、2011年時点で3.5兆円となっており、同じく1996年と比べて2倍強の増加だ。一方、1人当たりの支給額(月額)を見ると、1996年当時に比べても抑制されており、2011年で月額141327円、1997年に比べて9千円ほど下がっている。これが必要十分な金額に達しているかという点については議論の余地がある。全体としてみれば、1人当たりは抑制する傾向にあるが、ベースとなる被保護世帯数がそれ以上に増加しているので、総額の増加を止められないという状況だ。
ちなみに地域別保護率(世帯千対)の推移を見てみると、保護率には地位的な偏りが大きいことが分かる。各地域に含まれる都道府県は次のとおりだ。(1)北海道、(2)東北(青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島)、(3)関東T(埼玉・千葉・東京・神奈川)、(4)関東U(茨城・栃木・群馬・山梨・長野)、(5)北陸(新潟・富山・石川・福井)、(6)東海(岐阜・静岡・愛知・三重)、(7)近畿T(京都・大阪・兵庫)、(8)近畿U(滋賀・奈良・和歌山)、(9)山陽(岡山・広島・山口)、(10)山陰(鳥取・島根)、(11)四国(徳島・香川・愛媛・高知)、(12)北九州(福岡・佐賀・長崎・大分)、(13)南九州(熊本・宮崎・鹿児島)、(14)沖縄。
2011年を見てみると、北海道、近畿T、北九州、沖縄の保護率が高く、関東U、北陸などは低い。最も高い北海道と北陸ではおよそ5倍の保護率格差がある。ただし、いずれの地域においても近年は増加傾向にあるのは変わらない。日本全国あらゆる地域において、生活保護を必要とする人々の数は増加しており、結果として生活保護費総額は増加の一途をたどっている。
2015年予算においては生活保護の削減が断行され、ただでさえ苦しい被生活保護世帯の生活を圧迫する状況になった。そんな負担を強いているにも関わらず、生活保護費総額はこの15年で2倍に急増し、このままいけば次の15年でさらに2倍に膨れ上がる。団塊の世代が高齢に差し掛かることを考えればペースはもっと上がるかもしれない。生活保護制度自体が立ちゆかなくなってしまう。
問題はそれを止める手段が今のところ見当たらないという点だ。国も自治体もろくに助けてくれない、そんな時代がもうすぐやってくる。