2018年05月19日

「生活保護費」を搾取する貧困ビジネスが横行、行政も黙認…返還命令判決が一石投じた

「貧困ビジネス」で生活保護費を搾取されたとして、男性2人がかつて入居していた宿泊施設側に対して、保護費の返還などを求めた訴訟の判決がさいたま地裁であった。脇由紀裁判長は「生活保護法の趣旨に反し、違法性が高い」として、施設の経営者に計約1580万円の支払いを命じた。
 路上生活をしていた男性2人は、2005年から2010年にかけて、この経営者が運営する埼玉県内の宿泊施設に入居した。生活保護費を施設側にわたす代わりに食事の提供を受けたが、手元には月2万円ほどの小遣いしか残されなかった。また、6畳程度の部屋を2人で使用し、食事は安価で栄養バランスを欠いたものだったという。
裁判で被告となった埼玉県内にある『株式会社ユニティー』は、有名な悪徳貧困ビジネス業者。
『救済係』と呼ばれる従業員が、東京都の新宿や上野などで、路上生活者らに対し、『埼玉に福祉の寮があるので来ませんか』『1日500円あげるよ』『3度の食事は心配しなくていい』などと声をかけて、勧誘していた。
 それに応じた路上生活者らは、埼玉県内にあるユニティーの寮に連れて来られて、そこから福祉事務所に生活保護を申請し、ユニティーの寮で生活をしていた。
 しかし、生活保護費はすべてユニティーが没収し、入所者には1日500円が渡されるだけ。食事や居住環境も劣悪で、食事の材料のお米はくず米といっていいほど、粗末なものだった。」
判決では、生活保護が憲法25条に基づいて「健康で文化的な最低限度の生活」を保障していることを確認したうえで、「被告は、原告らから生活保護費を全額徴収しながら、原告らに対して、生活保護法に定める健康で文化的な最低限度の生活水準に満たないサービスしか提供せず、その差額をすべて取得していたのであり、かかる被告の行為は、生活保護法の趣旨に反し、その違法性は高い」と断じた。
 さらに、『結局、被告の本件事業は、生活保護費から利益を得ることを目的とし、路上生活者らを多数勧誘して被告寮に入居させ、生活保護費を受給させた上でこれを全額徴収し、入居者らには生活保護基準に満たない劣悪なサービスを提供するのみで、その差額を収受して不当な利益を得ていたと認めた。
 そのような内容の契約は公序良俗に反し無効であり、被告がおこなったことは「原告らの最低限度の生活を営む権利を侵害」しているとして損害賠償の支払を命じたのである。
 また、原告のうち1名は、被告が経営する工場で働かされていた際、指を切断する大ケガをしたことから、この点についても被告に責任があるとして、損害賠償の支払が認められた。
 この判決は、生活保護の利用者を食い物にしている貧困ビジネス業者の行為を「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を侵害する違法なものと断じた点で画期的なものである。
 そして、このような業者が大手を振って存在していることを黙認(場合によっては積極的に利用)している福祉事務所(行政)に対しても、警鐘を鳴らすものといえるのだ。
 公園や駅構内などで、路上生活を余儀なくされている人に対して、いわゆる貧困ビジネス業者が声をかけ、生活保護を受給させたうえで、保護費の大半をピンハネする被害が相次いでいる。
 このような業者は、住まいやお金がなく生活をしていくのが困難な人に対して、あたかも救済してあげるかのようなそぶりをみせながら、実際には劣悪な施設に住まわせ、食事なども粗末なものしか提供しないなど、貧困状態にある人々を食い物にしているのである。
 貧困ビジネス業者からしてみれば、「野宿するよりましじゃないか」「食事も住む場所も提供しているのに文句を言うな」とでも思っているのかもしれないが、法律にしたがって生活保護制度を受給すれば、ピンハネされることなく生活保護を受給でき、アパートに住むことも可能なのだ。
 わざわざ貧困ビジネス業者のお世話になる必要はまったくない。貧困状態にある人を食い物にする貧困ビジネス業者が跋扈することを許さないためにも、生活保護制度をはじめとする制度を周知し、使いやすくすることが重要なのである。
 今回の件は、貧困ビジネスをおこなう民間の悪徳業者の責任が問われた。ただ、忘れてはならないのは、こういった貧困ビジネス業者の存在を許し、場合によっては積極的に利用している行政(福祉事務所)の存在である。
 生活保護制度は、この判決がいうように、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利』(憲法25条)を保障するための制度であり、生活に困窮したら誰でも、貧困になった理由に関係なく、いつでも「権利」として利用することが可能な制度なのである。
 住まいのない人に対しては、個室のアパート等の安心できる住居を保障することが国家の責任として定められている(居宅保護の原則)。にもかかわらず、現状では、ホームレス状態の人が、生活保護を申請してもアパートへの入居を認めずに、劣悪な施設への入所を行政(福祉事務所)が積極的にすすめているという実態がある。今回の判決は、このような施設収容を前提とした生活保護行政のあり方にも一石を投じたという意味でも、非常に画期的だったのではないか。
posted by GHQ/HOGO at 07:20| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする