2018年05月07日

貧困は「人格の欠如」ではなく「金銭の欠乏」である 1

 まずはシンプルな問いかけをする。どうしてお金のない人は 思慮のない選択ばかりするのか。酷な問いかもしれない。しかし、データに表れているのだ。 貧乏な人ほど 借金が多く、貯金は少なく、喫煙者が多く、運動する人は少なく、酒飲みは多く、食習慣も不健康なのだ。それはなぜなのか。世間一般が考える答えを、サッチャー元イギリス首相が 端的に表現した。「貧困は性格上の欠陥だ」と言ったのである。つまり、人格の欠如であるのだと…。
 皆さんならばまず、ここまで あからさまな物言いはしないだろう。しかし 貧困者には何か おかしいところがあると考えるのは サッチャーだけではない。貧乏なのは自業自得だという意見を持つ人もいるはずだ。自ら招いた結果だと、他には選択を間違えないように、助けてやるべきだと言う人もいるだろう。どっちの考え方も 根底にある仮説は同じだ。「本人に何か 、おかしいところがあるのだ」、「変えてやることさえできれば」、「生き方を教えてさえやれたら」、「本人に聞く耳さえあれば」… 正直に言うと、だれもがそう考えがちだ。私がそれは違うと気づいたのは ほの数年前なのだ。
 たまたまアメリカの心理学者数人による 論文を発見したのだ。約1万3千キロも旅し、インドで実施した 非常に興味深い調査についてのものだ。調査対象は サトウキビ農家。何と実はサトウキビ農家では、1年の収入の60%を1回で1度に回収する。収穫の直後に。つまり 1年の中で比較的 貧乏な時期と裕福な時期とがあるのである。研究チームは農家の人々に知能テストを、収穫の前と後に受けてもらった。そうして明らかになった事実は、収穫前の成績は収穫後よりもずっと低かったのだ。貧困生活の影響は、知能指数が14下がるのと同じことであると判明し多のである。分かりやすく言えば 一晩徹夜した後の状態やアルコール依存のようなものである
 数ヵ月後、エルダー・シャフィアという、この研究者の1人であるプリンストン大学の教授が、貧困について提唱する革新的な説を知った。一言で言えば 貧困とは 「欠乏の心理」なのだと・・・。人は不足を認識したとき行動が変わるのだという。何が不足しているかは関係ない。時間 ・お金・食べ物など どれでも同じ。
 やることが多すぎるとか、昼休みを遅らせたせいで、血糖値がガクッと落ちたときとか、目の前の不足以外のものは見えなくなってしまう。例えば、今すぐ食べたいサンドイッチ、5分後に迫る会議、明日払わなければいけない請求書など。こうなると 先を見て考える力が 麻痺してしまう。新しいパソコンで重いプログラムを同時に10個作動させるようなもの。動作がどんどん遅くなり、エラーを連発し、最後には固まる。パソコン自体がダメなのではなく、同時にやることが多すぎるのだ。貧乏な人は同じ問題を抱えている。その人が愚かだから、愚かな選択をしているのではなく、どんな人であっても 愚かな選択をしてしまうような状況に置かれているからだ。
 貧困対策プログラムが うまくいかない理由はこれだった。例えば 教育に資金を投入してまったく効果がないというケースはザラだ。貧困とは 知識の欠如ではないのだ。金銭管理講座の有効性を調べた近年の研究201件を検討したところ、有効性はほぼゼロであるという結論が出た。ただし 誤解しないで欲しい。貧乏な人は何も学ばないという意味ではない。苦労することで賢くなるのは間違いないことだ。しかし それでは不十分なの。シャフィア教授はこう言っている。
「誰かに水泳を教えようとして 最初から荒海に放り込むようなものだ」
 そんなことは、何十年にも前に出せていた結論じゃないか。農家の研究をした心理学者たちは 複雑な脳スキャンなんか必要とせず、労働者の知能指数を測っただけだ。知能テストが発明されたのは、百年以上も前の話である。実は、世界最高の作家の1人であるジョージ・オーウェルは、1920年代に自ら貧困を経験した。オーウェルは「貧困の本質とは 未来を握りつぶすものである」と書いた。自身の驚きから、このようにも書いている。
「収入が一定水準以下の人を見るやいなや 説教だの祈りだのを当然の権利のように始める人がいかに多いことか」
 現代にも非常に よく当てはまる言葉だ。もちろん 誰もが同じことを思うはず。
「何をすればいいのか」
現代の経済学者たちは いくつか対策を提唱している。事務処理を支援したり、公共料金を払い忘れないよ携帯にメールしたりなど…。現代の政治家が 非常に好む解決策だ。たいていの理由は 非常に安上がりだからなのだ。 このような解決策は まさに 現代を象徴しているのではないか。対症療法ばかりで 根本の原因には目を向けていないのである。


posted by GHQ/HOGO at 09:17| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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