その結果、この間の米国では、上位1%だけが成長の成果を享受する一方で、残りの99%の中下層の人々の生活水準は向上するどころか悪化してきた。こうした現実は、住宅価格バブルによって一時的には覆い隠されてきたが、金融危機後は白日の下にさらされるに至っている。いまや米国は機会均等の地どころか欧州以上に階級格差が拡大し、民主主義も機能不全に陥った不平等社会になってしまった。
海外に仕事をアウトソーシングできる機会が広がったことは、労働者の交渉力を弱めることになる。このことをうまく利用して、上位1%の人々は自らの利益にかなった政治・経済ルールを作り上げ、そうしたルールが正当なものだという信念を社会に広めることにも成功してきた。
すなわち、現在の米国における不平等は、真空の中での市場の力によって作り出されたものではなく、政治の力によって形成されたものである。それゆえ逆にいうと、政治改革を行い、大胆に経済政策を変更すれば、現状を是正し、格差を縮小することは可能ではないだろうか。
日本の格差水準は米国との比較では相対的に穏やかなものであるとされるが、このことは日本の上位1%が米国ほどうまく立ち回ってこなかったからなのか、政府の対応が結果的に良かったからなのか。よく考えてみる必要がある。