2018年02月17日

食の砂漠―フードデザート問題とは?

 フードデザートとは,社会・経済環境の急速な変化の中で生じた生鮮食料品供給体制の崩壊と、それに伴う社会的弱者層の健康被害を意味する。
 近年欧米諸国では,フードデザート(food deserts)が問題視されている。スーパーストアの郊外進出が顕在化したイギリスでは、1970-90年代半ばに,inner-city / suburban estateに立地する中小食料品店やショッピングセンターの倒産が相次いだ。その結果、郊外のスーパーストアに通えないダウンタウンの貧困層は、都心に残存する、値段が高く、かつ野菜やフルーツなどの生鮮品の品揃えが極端に悪い雑貨店での買い物を強いられている。イギリスでは,彼らの貧しい食糧事情が,ガンなどの疾患の発生率増加の主要因であると指摘する研究報告が多数見られる。
 一方、アメリカではフードデザートエリアにジャンクフード店が入り込み,肥満問題が発生している。フードデザートは、単なる買い物不便にとどまる問題ではなくなった。その背景には、社会格差の拡大や社会構造の変容、都市構造の変化、食育問題など、さまざまな問題が介在している。 欧米では、フードデザートは、社会的排除(Social exclusion)問題の一種として,政府レベルでの対策が進められているのだが、解決までは程遠いのだ。
 フードデザートは、1) 「生鮮食料品供給システムの崩壊」、および 2) 「社会的弱者の集住」,という2つの要素が重なったときに発生する社会問題なのだ。「生鮮食料品供給システムの崩壊」に、,自宅から店までの物理的距離の拡大(商店街の空洞化など)以外にも、経済的・心理的距離の拡大(貧困や差別,社会からの孤立など)も含まれる。「社会的弱者」は,高齢者や外国人労働者など.国・地域によって異なる。この問題には,社会的排除問題(Social exclusion issues)が強く影響している。
 そもそも,街の構造は時代とともに絶えず変化する。都市構造が変わるとき、必ず「ひずみ」が生じる。現在日本で深刻化している、モータリゼーションの進展による中心商店街の空洞化や、大都市圏の縮小の中で取り残され老朽化・高齢化する郊外の住宅団地なども、こうした「ひずみ」の1つなのだ。
 「ひずみ」に落ち込み苦しむのは,いつの時代も社会的弱者と呼ばれる人たちである。 独居世帯の急増(核家族化の進展)や貧困の拡大、社会からの引きこもる高齢者の増加(コミュニティの衰退)、不採算地域における生鮮食料品店や公共交通機関(医療、社会福祉施設)の撤退、各種の社会保障制度の見直しなども、フードデザートを拡大させる要因である。
 日本では、地方都市や郊外の住宅団地、中山間集落に住むご高齢者を中心に,フードデザート問題が深刻化している。所得の格差が広がるなか、子供世帯やご近所、友人たちからの支援も得られず、わずかな基礎年金だけで暮らざるをえない一人暮らしのご年配者が,急速に増えているのである。社会から引きこもり孤立する年寄りたちの増加も深刻である。
 フードデザート地域に住んでいるこうした人々の間では、 買い物の困難さから食事の栄養バランスが偏り、高齢者の居住環境の悪化は喫緊の問題である。しかし,多くの自治体ではフードデザートを十分認識してはいないのである。問題であるということすら認識していないのである。
 フードデザート問題の発生には、貧困や高齢者の社会からの孤立などさまざまな要因が深くかかわっている。地理的な意味で生鮮食料品店への近接性を高めても、他の要因が改善されない限り、高齢者の栄養状態は改善されにくいのが現状である。
 また,現在は空洞化する地方都市中心部や過疎地域が注目されているが、今後急速に高齢化が進みフードデザートが深刻化するのは、大都市郊外(住宅団地など)なのだ。
 国や地域によって、社会・文化的な背景や都市構造等は大きく異なる。必然的に,フードデザート問題の性質も多様化する。高齢者を中心に問題が深刻化する日本では、欧米とは異なる独自の解決策が必要になってくる。


posted by GHQ/HOGO at 07:56| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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