政府は影響が出ないようにするとしているが、就学援助は地方自治体の単独事業で、国に権限はない。5年前の前回に生活保護基準額が引き下げられた際、全国で多くの自治体が就学援助を縮小した。
保育料の減免、医療保険の自己負担の上限額の軽減など多くの生活支援制度は、国の事業で、生活保護の基準額が引き下げられても、国の判断で適用要件を据え置くことができる。
問題は自治体の単独事業で、特に就学援助への影響が懸念される。支給対象世帯として、各自治体が生活保護基準額の「1.1倍」「1.3倍」などの所得と適用対象を独自に定める仕組み。政府は前回の生活保護引き下げの際、各自治体に就学援助に影響させないよう要請したが、全国89市区町村で就学援助の基準が引き下げられ、多くの子供が対象外となり、就学援助費を受け取れなかった。
横浜市の場合、前回の生活保護基準額の引き下げ前は両親と小学生の子供2人の標準世帯で年収約358万円以下を就学援助の対象としていたが、引き下げ後の14年度から約344万円以下に。推計977人の子供が対象から外れた。
東京都中野区も、標準世帯(横浜市とは世帯人数などが異なる)で基準を年収約335万円以下から、14年度に約11万円下げた。就学援助を受ける子供の割合は13年度の24.8%から、17年度は19.8%と大きく減った。
区教育委員会事務局は「判断基準は生活保護に準じているため、厳格に適用した」と話す。
<生活保護> 憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障し、自立を助ける制度。収入が国の定める最低生活費に満たない場合、不足分を支給する。食費や光熱費などに充てる「生活扶助」や家賃に充てる「住宅扶助」、義務教育に必要な学用品を賄うための「教育扶助」などがある。生活扶助は5年に1度見直され、政府は2018年10月から全受給世帯の3分の2で段階的に最大5%引き下げ、3年かけて国費計約160億円を削減すると決めた。