「10歳の壁」という言葉が、教育関係者の間で以前からささやかれている。小学4年の10歳ごろは、学習内容に応用力を問う課題が増え、子供たちがつまずきやすくなることを意味する。箕面市のデータでは、「壁」はとりわけ貧困世帯の子供たちの前に立ちはだかっていた。実は、それよりも早い段階で差が付いているとする海外の先行研究もあり、分析で顕在化したのは「10歳の壁」だった。
貧困世帯の子どもたちの学習を阻む「壁」とは何か、考えてみた。ヒントは、子供たちの生活習慣にあった。
箕面市の調査では、「スポーツや趣味などで頑張っていることがあるか」「毎日朝食を食べているか(生活習慣として身についているか)」といった問いに対し、「はい」と答えた子供の比率は、生活保護受給世帯と、そうでない世帯の間に、小学1〜2年の時点で約20ポイントもの開きがあった。
また、「つらいこと、こまったことを先生に相談できるか」「1日の勉強時間の目安を決めているか」といった質問に「はい」と答えた子どもの比率は、小学3〜4年生を境に開き始め、学年が上がるにつれて大きくなっていた。
これらのデータから、次のような貧困世帯の子供たちの姿が浮かんできた。小学校低学年のうちに家庭で養われるはずの生活習慣が身につかず、夢中になれるものも見つからない。やがて、高学年になると勉強の内容が理解できなくなり、悩みを先生に打ち明けることもできぬまま取り残されてしまう――そんな姿だ。