どこまでが普通で、どこからか貧困なのか。線引きは難しい。まず、貧困には「絶対的貧困」と「相対的貧困」の2種類がある。
•絶対的貧困:食や衣類など、生きるための必要最低限のものが満たされていないこと
•相対的貧困:「等価可処分所得(※)」が、全人口の中央値の半分に満たない人たちの割合のこと。国や地域によって「貧困」のボーダーラインが変わる
いま注目されているのは相対的貧困だ。具体的には年間の所得がいくら以下だと貧困に該当するのか。平成24年のデータでは、日本のボーダーラインは「1人当たりの等価可処分所得122万円」とされている。子供の貧困率は16.3%。約6人に1人という割合である。
※等価可処分所得......世帯の手取り収入を世帯人員の平方根で割って調整した所得のこと
近年は、一般的に正規雇用に比べて所得が低いとされる非正規雇用者が増加している。子育て世代も例外ではない。子育て世代全体の低所得化が、貧困率の上昇の一因といえる。また、1人親世帯が増加傾向にあることも要因の1つ。1人親世帯、特に母子世帯は非正規雇用率が高く、平均年間収入も低くなっている。
子供が貧困である場合、生活習慣や基本的な対人関係に影響が出る可能性があることも指摘されている。保護者は家計のために長時間労働を余儀なくされ、子供と接する時間が不足するケースも多い。こういった状態が慢性化すると、子供の食事や生活習慣に目が届きにくくなる。
また、親が多忙だと行政やNPO団体の情報を受け取れず、せっかくの支援が受けられないという悪循環もある。
経済的に恵まれないことで教育格差が生じ、低学力に陥る傾向もある。より深刻なのは、勉強することへの意欲そのものを失ってしまう子供が多いことだ。進学率も低く、就職活動が難航したり、結果的に就労条件が厳しくなったりする。貧困を次世代に引き継いでしまうことも多い。
相対的貧困は見た目では困窮が見えにくく、「努力しないから貧困から抜け出せない」「貧困のフリをしているだけ」などの誤解も受けやすいもの。特別な支援をしなくとも、貧困の事実を理解するだけでも社会的意義があるのではないか。
思った以上に子供の貧困率は高く、貧困の足かせは重い。貧困が増加している理由として、非正規雇用の増加といった社会構造の変化も挙げられる。健康、婚姻、就労などの状況が変われば、誰しも貧困と無縁ではないかもしれない。もしものときは助け合える社会にしたい…。